「桜の元で」

「剣心?剣しーん。」
道場に薫の声が響き渡る。剣心に買い物に行ってもらおうと、さっきから探しているのに返事がない。
「剣し・・・」
薫の動きが止まった。その視線の先には、先ほどから探していた人物の姿があった。
歩みより、顔を覗きこむと、剣心は静かに寝息を立てて眠っていた。
季節はもう春。桜の舞う縁側で、暖かい陽気についうとうとしているうちに眠ってしまったのだろう。
「可愛い寝顔・・・。」
どこかあどけなさのある寝顔に、自分の顔もほころんでいるコトに気づく薫。隣に座り、少し髪に触れると、それまで柱にもたれかかっていた剣心の体が薫の方に倒れてきた。薫は、さっきよりも近づいた顔にわずかばかり頬を染め、その緋色の髪を撫でた。
薫が少し振り向くと、剣心の懐に何か紙が見えた。
――何かしら・・・――
それが気になって、つい、手を伸ばしてそれを広げていった。
――錦絵?――
さらに広げる。
――え・・・?これって・・・――
そこには、まぎれもない自分の姿があった。
――なんで剣心が私の絵を・・・?――
薫にはどういうコトなのか分からなかった。
しばらくそれを見つめていると、剣心が目を覚ました。
「あっ、け、剣心・・・!」
「ああ、拙者眠ってしまっていたでござるか。」
剣心は、周りをきょろきょろ見まわし、ふと薫の手の中の物に目を止めた。
「それ・・・。」「あっご、ごめんなさいっ。ちょっと見えたものだからつい・・・」
沈黙。そして剣心が、
「それは、拙者が津南殿に描いてもらった物でござる。」
と言った。
「わざわざ・・・?なんで・・・・・・?」
薫が小さな声で言った。剣心は、絵を手に取って答えた。
「これは、拙者がお守りとして持っている。これを持っていると、どんな時でも、薫殿の所へ帰って来れるような、そんな気がして・・・。それに、何 だか薫殿といつも一緒にいるような気持ちになれるでござるよ・・・。」
その言葉に、薫は顔を真っ赤に染めながら剣心を見つめた。
剣心も、少し照れながらもまっすぐに見つめる。
「私・・・いつも剣心と一緒にいてあげる・・・一緒にいたいわ・・・。」
「薫殿・・・。」
ゆっくりと・・・二人の影が重なった・・・。
―――ずっと・・・いつも一緒に・・・・・・―――


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