すべてが君よりも
冬の日差しも、夏の暑さも
全てが輝いて見えたけど
君を見ていると
俺の感覚はおかしくなる
「剣心?どうしたの、ボーっとして」
ふと、薫の声が耳に響いた。
「・・・ああ、薫殿。何か?」
「いえ・・・何か用があるって訳じゃないけど・・・剣心、ボーっとしていたから気になって」
「いや、拙者は何も・・・」
そう言ってすっと立ちあがる。
「さて、そろそろ買い物に行かねば」
「あ、まって、今日は私も一緒に・・・」
「いや、拙者一人で大丈夫でござる」
「剣心」
「それでは薫殿、いってくるでござる」
そう言って剣心は・・・一人、買い物へと繰り出した。
薫だってそんなに鈍感なわけじゃない。
剣心の態度が何処か変な事ぐらい気付いている。
どこか薫の事を避けているような・・・そんな態度。
「なによ・・・迷惑だって言うの?」
道場へ弥彦の稽古のために向いながら薫はぽつぽつと独り言を言い始めた。
「迷惑なら言えばいいじゃない。こっちが更に傷付くだけなのに」
でもそれはわかったことだった。
剣心は優しい。
だからこそ迷惑な事も余り言い返せない。
そんな事知っているはずなのにその事で薫が更に傷付いていく事も剣心は知っているだろうか?
薫の心はだんだんと怒りに変わっていった。
「あーもう!!こうなったら今日は弥彦、ちょっと厳しくしちゃえっ!」
今日の犠牲者は・・・弥彦に決定したらしい。
―――合掌。
夕暮れの町はどこか騒がしい。
ただ単に夕飯時の買い物をしている客がいるだけなのだが・・・。
ふと、大根を選んでいる剣心の目に夕日がとまった。
紅い紅い夕日・・・見ていると何処か退きこまれて帰ってこれなくなりそうなくらい―――美しい夕日・・・。
ふと、彼女の笑顔を思い出して・・・、持っていた大根を握り潰してしまった。
もちろんその大根を買う羽目になったのは言うまでも無い。
「おう、剣心じゃねえか!買い物かい?」
「おお、左之」
帰り道、いつものように現れたのは左之助だった。
剣心に足並みを合わせて神谷道場へ進んでいく。
「剣心、どうしたんでい?嬢ちゃんが悩んでるみたいだったぜ?」
「薫殿が?」
やばい・・・と剣心は心から思った。
日頃からある事を態度に表さないように心がけてみても自分では普通に振舞っているように見えても
他人から見ればその態度が不自然に見えることは多い。
それはまさしく今の剣心のようなのだ。
やはりその変化に薫も気付いたらしい。
「剣心、隠し事はやっぱり嬢ちゃんにはしないほうがいいぜ?」
「左之・・・やっぱり分かるでござるか?」
「おう、バレバレじゃねえか」
うーんと悩んでみても答えが出てくるはずも無い。
「本当の事はいつかばれるんだからよぉ、自分で言ったほうがいいんじゃねえのか?」
「そうで・・・ござるな」
「ってえな、薫!ちっとは手加減しろよ!」
「はいはいはい。文句言う暇があったら強くなりなさいな」
「ちくしょー!」
道場のほうではやはり薫と弥彦が激しい乱闘を繰り広げていた。
「おーおー。威勢がいいなお前ら」
「左之助ッ!?」
「お前、いったいいつからそこにいたッ!?」
「ついさっきだよ」
左之助と一緒にいるのは―――剣心。
その姿を見ると薫は急に辛くなって自分の部屋に走った。
「!?薫殿っ!」
慌てて剣心も薫の後を追いかける。
「!?なんだなんだ?いったい何がどうしたって言うんだ!?」
「お子様は黙ってろよ」
「お子様じゃねー!!」
そして後に取り残される左之助と弥彦。
「薫殿!薫殿!」
「ついて来ないで!」
剣心にとってあの事を話さないのは失敗だった。
なにせここまで薫を追い詰めてしまっていたのだから。
(こんな事になるなら正直に言っておけばよかったー!)
後悔も今となってしまってはもう役には立たない。
やっとのことで薫の腕を掴みー・・・
「薫殿!話を聞いて欲しいでござる!」
「いや!聞きたくないっ!」
すっかり興奮してしまっていて剣心の言葉も今では圧力でしかない。
剣心は薫を自分の方へ抱き寄せた。
「薫殿・・・話を聞いて欲しいでござる」
急に剣心の胸の中に入ってしまって驚く薫。
こうして抱かれたのは・・・あの時以来だろうか?
「拙者・・・拙者はただ、薫殿が・・・」
ゆっくりと・・・剣心は言葉を紡ぎ出す。
「薫殿の笑顔が忘れられなくて・・・それで何処か恥ずかしくて・・・」
笑顔が忘れられない?
恥ずかしい?
そんな剣心の言葉の一つ一つをゆっくりとかみ締めながら薫は剣心にもたれか
かった。
「つい・・・自然にしようと試みてはいたものの・・・かえって不自然になってしまって・・・薫殿を・・・」
剣心の言葉の一つ一つが薫の中に染み込んでいって・・・薫の冷たく、固くなった心を溶かしていく。
「拙者は・・・決して薫殿が嫌いなのではなく・・・むしろ薫殿の事が・・・」
最後の言葉は今まで言えなかった言葉。
いままで言えなかった分のきもちが溢れ出す。
「薫殿の事が・・・好きでござる」
薫にとってこの言葉がどんな言葉よりも大切な宝石になる。
「剣心・・・大好きっ・・・」
薫はまた剣心を強く抱きしめた。
―――ねえ剣心
―――なんでござる?
―――剣心の目に私はどう映っていたの?
―――・・・冬の日差しよりも・・・夏の暑さよりも・・・
どんなものよりも・・・
―――どんなものよりも?
―――すべてが君よりも・・・劣って見えた・・・
どんなものよりも
どんなに綺麗な宝石でも
きっと君の笑顔には
かなうわけがない
END
あとがき?
こんにちはorこんばんわ。
万年青 剣です。
居候登録して頂いてすぐなのに小説・・・。
何てことでしょう(汗)
しかも話の内用がこんなの・・・。
もしもどなたかの小説と似ていたら済みません。
自腹気ってお詫びいたします。
万年青 剣
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