夢の中でも…

目が覚めた。まだ起きるには早い時間である。
(ふふ、剣心の夢見ちゃった。またみたいなぁ…)
また布団の中に頭を入れたが頭と身体が眠ろうとしてくれない。
薫は仕方がなく布団から出て、立ち上がった。
その時、薫の手から何かが落ちた。
それは手の平サイズの剣心人形だった。いつもなら同じサイズの薫人形と一緒においてあるのに、今日はなぜか薫の手の中にあった。
(あれ?私この人形といっしょに寝たっけ?ま、いっか…元の位置にもどそう…)
そう思い薫人形の隣に置こうとしたら、薫人形が見つからない。
(あ…あれ?どこいったんだろう?)
部屋中探してみても見つからず、仕方がなく薫は諦めた。
「どこいったのかしら。いつも私の部屋に置いてあったから誰かが勝手に動かすことなんてないだろうし、私も全然触ってないし…」
不思議に思いながら枕元にあるいつもの着物に着替え、髪をとき、そして顔を洗いに部屋を出る。
(今日は私が一番に起きたみたいね…そうだ!今日は久しぶりに朝ご飯剣心に作ってあげようっと!)
洗面所へむかう途中剣心の部屋の前を通るのだが、明かりがついている。
(剣心、起きていたのかしら…)
剣心の部屋で立ち止まる。
「剣心…?…起きてるの…?」
返事も物音一つも聞こえない。
「…?剣心?入るわよ…?」
ゆっくりと障子を開ける。
中では、剣心が布団の上で横になって眠っている。
(ふふ、なんか幼く見える。十才以上も年上にはみえないわね…)
薫は剣心の寝顔をみて、思わずくすっと笑ってしまった。
剣心の手には読み掛けの本、もう片方の手にはいくら薫が探しても見つからなかった薫人形があった。
(あら?な…なんでここに…)
びっくりする薫。
(剣心が私の部屋に勝手に入ってくるなんて事はないし…私自身も剣心に渡した覚えわないわよねぇ)
薫は腕を組んで考え出した。
(そうよ、昨日の夕方にはあったんだからなくなったといえば昨日の夜の間。でも私は剣心と喋っていて、その後ほんの少〜しだけお酒を飲んだだけだし、弥彦は夜ご飯を食べてすぐに寝ちゃったし、左之助はただ飯食べに来て帰ったし…)
う〜む、と目を閉じる。
「…ん…」
薫の気配がしたからか、剣心が目を覚ましてしまった。
「!!け…剣心、ごめんね、起こしちゃった…」
「…いや…」
そう言って起き上がる。
「でも…なんか剣心の寝顔、すごくかわいかった」
くすくすと笑う薫。
「そ…そうでござるか?自分の寝顔なんて見れないからわからないでござる…」
すこし恥ずかしそうに言う剣心。
「そうね、なんなら詳しく話しましょうか?」
「い…いや、遠慮するでござるっ」
「いやぁねえ剣心ったら。冗談よ、冗談」
薫は剣心のリアクションを笑う。
「……そうだ、剣心!貴方がなんで私の人形を持っているのか教えてくれる?」
「おろ?」
「今手に持っている人形よ!」
剣心は自分の手にある薫ちゃん人形を見た。
「ああ、これでござるか」
「そう!それ!なんで剣心が持ってるの!」
「これは昨晩、薫殿が渡してくれた人形でござるよ」
剣心はにっこり微笑んだ。
「へ…?」



―昨晩―
「薫殿、そんなに飲んだら明日に響くでござるよ!」
「な〜に言ってるのよ、剣心。まだまだこれからよ〜!」
「薫殿!」
薫は大丈夫といっているが、実はかなりよっている。
「ほら薫殿。拙者も手をかすからもう寝るでござるよ」
薫は不思議そうに剣心が差し延べた手を見てたが、剣心の手につかまって立ち上がった。
薫を部屋まで運ぶのは大変だった。
途中で薫の足がへたりと働かなくなったりしたからだ。
かなり時間はかかったが、薫の部屋にたどり着いた剣心は布団をしいてその上に薫を横にさせた。
剣心が立ち上がろうとした時、薫が剣心の裾をつかんだ。
「薫殿?」
「この…私の人形、今夜一緒に持ってて…」
枕の上の方にあった、ちょこんと剣心人形と一緒にすわっていた薫人形を剣心に渡す。
「…?…」
「今夜、私もこの人形を持ってるから…夢の中でも会えるように……」
剣心人形を剣心に見せると、薫は目を閉じて眠ってしまった。
そんな薫を見て剣心は微笑んだ。
「わかったでござるよ薫殿…」
剣心は薫を起こさないように立ち上がり、部屋から出ていった。



「ごめん…覚えてない…」
「そりゃぁあれだけ飲んでいれば…」
「ごめん」
「謝ることはないでござるよ、それにそのおかげで薫殿の夢を見ることができたでござるよ」
「え…、そうなの?私も剣心の夢を見たわ…」
「…そうでござるか、きっとこの人形が拙者達を夢の中でも会わせてくれたのでござるな…」
「ええ…そうね」
二人は微笑み会う。
「なぁ、もう邪魔していいかぁ?」
「剣心、お前ちゃんと嬢ちゃんと進展してたんじゃぁねえか」
「や…弥彦!」
「左之!!」
そう、なぜか剣心の部屋の前にはいつのまにか弥彦と左之助がいた。
「い…いつからそこに…」
「いつからって…そうだな、剣心が語りに入ってからだよな、弥彦」
「俺に聞くな!俺が来た時にはもうお前がいたんだから!…とにかく、俺はちゃんと剣心のこと呼んだんだぜ。けれどそれをまるきり無視して二人の世界に入っててよお…」
「けどまぁ、お前ら二人がちゃんと進展しててよかったぜ。んで、いつ結婚すんだ?」
「おい左之助、まだ接吻まで進んでいないんだからそれは…あと二年くらいはかかるな」
「さ…左之!弥彦!」
「な…なんて事を言うのよあなた達は!!!!」
「照れるな照れるな」
「ち…違うわよ!!」
もちろん薫と剣心には言い訳でいっぱいで、彼らを追い出す余裕は全く無かった事をここに記す…


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