ゴールデンウィーク
 

 ……ドタドタッ。
 町中にある土井半助の借家の土間。決して広いとは言えないその空間に、倒れ込むようにして二人の体が転がった。
 一人はこの家の借り主である土井半助。もう一人は、今回のゴールデンウィークのように忍術学園が休みの間、土井の家に居候をしているきり丸である。
「はぁはぁ……、あー、疲れた……」
「はぁ、はぁ……、せ、せんせー、猪の散歩のバイトは、も少し減らした方がよさそうっスね〜」
「あ……あ……、当たり前だ〜! 1日に20頭もの猪、面倒見れるわけないだろうが!」
「いや〜、土井先生も一緒なら出来るかと思って、つい引き受けちゃったんですよね〜、えへへへ」
「だ・か・らぁ、最初から私をあてにするなっつーの! ……ったく」
 ようやく起き上がり、土井は草鞋を脱いで部屋に上がった。
 きり丸はまだ、土間に座り込んでいる。さすがに、体力の回復は土井ほど早くないようだ。

 せっかくのゴールデンウィークも、こんな調子で、土井はきり丸のバイトに振り回されていた。そうでなければ、ゆっくりのんびりと本でも読みたいところだったのだが……。
 しかし、きり丸は自分の生活費や学園の授業料のためにバイトをしているのである。それを知っている以上、バイトをやめろとはとても言えない。逆に、やめさせるどころか、ついつい手伝ってしまっている土井なのであった。
 そんな土井の瞳にふと、疲れた様子のきり丸が映る。
「……なぁ、きり丸」
「?」
「毎日こんなふうに働いてばかりで、ゴールデンウィーク、楽しいか?」
「……え、そりゃあ……いっぱいバイトができて、俺は嬉しいっスよ」
 いきなり妙なことを聞かれて、きり丸は戸惑った。土間からじーっと顔色をうかがうようにして土井を見上げる。
「……。えーっと、先生は、ゴールデンウィーク、楽しくない?」
 これでも一応、バイトに巻き込んでることを気にしていたようで、やや不安気に聞き返すきり丸。首を少し傾けた拍子に、髪の毛が軽く揺れている。
 このきり丸と居ると、バイトを手伝わされたり、やたらトラブルに巻き込まれたりで、確かにのんびりできないのだけど。
 ……だけど。
「いや……、楽しいよ」
 少し苦笑しつつも土井がそう答えると、安心したのか、きり丸の表情がぱあっと明るくなった。そんなきり丸を見ていると、土井も何故か暖かい気持ちになってゆく。
 と、その時、土井の家に誰かが慌ただしく飛び込んで来た。
「ど、土井先生〜〜! きり丸ぅ! 大変ですぅ〜〜〜!!」
 息を弾ませてそう叫んだのは、実家に帰っているはずの乱太郎だった。かなり急いで走って来たのだろう、額に汗で濡れた柔らかそうな髪が貼り付いている。つまり、それだけの事件が彼の身辺で起きたということなのだ。  
「よお、乱太郎じゃねーか! どしたん?」
「乱太郎!? 一体どうしたんだ? 何かあったのか?」
 ほら、たいくつする暇もない。
 ……だけど、それが、楽しい。
 『自分一人だけだったら、きっと虚しく暇を持て余してたろうな……』
 は組の担任になり、きり丸を預かるようになってから、たいくつとは縁遠くなった土井は、今度は乱太郎の話に耳を傾け始めた……。
 



 

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