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Part 1 手軽に薫製を楽しむ |

東京西部に位置する多摩地区は、都庁がある新宿に近くも緑が豊かで、市街地から多摩川そして多摩丘陵へと眺むと、イギリス中部の地方都市を連想してしまいます。そして、その東部の府中には、南に多摩川と多摩丘陵がただ一ヶ所だけ接したところがあり、河川敷から丘陵に広がるゴルフ場は「都会の田舎ぐらし」に格好の背景となってくれています。 自宅の東隣には、鎌倉時代に建立されたという禅寺があります。鎌倉幕府の北辺の守りとして戦時には出城として機能したとのことで、木立の中には土塁と空堀の跡も残り、広大な敷地には保育園や関連施設が点在していても、樹齢数百年のケヤキが鬱蒼とした杜を つくり陽光がとどかないところもあります。
近くの住民が東西南北縦横に通り抜けて出来た小道が幾本も走り、人通りは決して少なくありませんが、その小道からほんの少し入っただけで深山幽谷の趣があります。火を焚いて煙を上げても誰も気付かないので、「燻製づくり」には最適です。朝にセットして、夕方には美味しい温燻(おんくん)ができます。 南はわずかに河岸段丘の下り坂となり、600mほど先には多摩川が流れ、右上にぽっかりと富士山が頭を出しています。もともとは遊水池と河川敷で、かつては新田義貞軍と鎌倉幕府が戦った古戦場ですが、現在は公園にとそれを繋ぐ遊歩道があり、それから郷土の森と称する古民家園とレクリィエーション施設があり、そして健康センターと称する体育施設群と多目的緑地などが点在しています。造園業者の植木畑と芝畑が、そして農業高校と大学農学部の実習農地がその間をうめて豊かな緑を感じさせてくれています。
近くの乗馬クラブは、馬場の騎乗ばかりでなく、道産子などで多摩川の河川敷をキャンプしながら数十Kmも遡る外乗をしているので、自動車が徐行して通るわきを野営道具や食料を山積みにしてキャラバン隊のように数頭が行き来して、のどかな光景を見せてくれています。

お寺の杜で燻製づくりといっても、著者の仕事部屋から直線距離で50mぐらいで、ぐるっと回っても80mぐらいです。土塁と空堀の中間で崖の中腹といったふうで、お寺の保育園と車の通る道から共に20mのところにある秘密のアジトで作ります。 朝起きて仕事が始まるまでの間にワンちゃんたちの部屋を掃除して、食餌を与え、散歩に出るときに、前の晩に準備しておいた燻財を持って行きます。
食用油の缶で手作りの燻製器の上缶をはずし、下缶に新聞紙一枚分を丸めて入れ、その上に枯れ葉を乗せ、小枝を乗せ、両手で折れる程度の太さの木枝を入れ、マッチで火をつけます。そして勢いよく燃え始めたら、付近に落ちていた太い枯れ枝を集め1m
ぐらいに鋸で切っておいたものを5〜6本入れます。それも燃え落ちて下缶に収まったら上缶を乗せます。上缶が乗ると炎は消えて煙ばかりとなります。
お寺の杜は小径からわずかに入ると深山のよう。
誰も知らないシークレット・ガーデンは多目的広場
で、愛犬とノーリードで遊ぶのに最適の場です。土
塁と空堀の間で平地はここだけ、林の中は上り坂と
下り坂ばかりで愛犬の脚は遊びながら鍛えられます。
上缶に煙が充満したところに、塩漬けにして程よく塩抜きし半陰干しした肉か魚を吊り下げます。上蓋を乗せて煙がほどよく出ているのを確認して、出来上がりを待ちます。
その間のワンちゃんたちは作業が済むのをじっと待ちますが、ときに気になってか鼻をめいっぱい空に突き上げて臭いを嗅ぎ、おもむろに燻製機の周りをうろうろします。好物のご馳走が詰まった缶は気になっても、熱気が邪魔して近寄れません。
枯れ枝を勢いよく燃やした時よりは緩やかになっても、燻製作りが始まってから数時間というものは煙は立ち昇り続けます。揺らめく煙は木立の間をぬけて、遥かな梢まではっきり目立って立ち昇りますが、わずか数m離れただけで誰も気付くことはないようです。
夕方になって燻製の出来上がりを見に行きますと、森の香りが漂い、黄金色に輝く燻製がひっそり待っていてくれます。
燻製といっても低い温度で長時間燻さなければならない冷燻(れいくん)だったら、こんなわけには行きませんが、手軽に作れて、むしろ味の良い「温燻」こそ素人の手作り向きだろうと思います。

昔の人たちの知恵で、獲れすぎた魚や獣肉を保存するために工夫された方法の一つが、この燻製です。しかし、ただ塩蔵したものや乾燥させたものに比べ、旨味が出ることから保存ということよりも、嗜好のためという意味合いが強くなっているように思います。それは国や地域によって考え方に違いがありますが、長期の保存に適さなくても、旨味が増す「温燻法」は明らかに嗜好のためと言えましょう。
最も原始的な燻製法は、焚き火の上に吊して、煙で燻し、ほどよく乾燥させるものですから、バーベキューの網の上に塩コショウした豚のバラ肉を乗せ、その上から穴をあけたダンボール箱か食用油缶を縦半分に切断したものを被せて、数時間したら出来上がるという簡便法はたいへん手軽な方法と言えましょう。
休日に川原などへ日帰りキャンプに行って、一日遊んで過ごした帰りには、味も香りも本物の「手作りベーコン」をお土産に持ち帰ったら喜ばれるに違いありません。
空缶利用法
焚き火による方法は、煙のコントロールが難しいので、写真に示すような食用油などの18L缶を二つ重ねる方法をお勧めします。石油缶でもオイル缶でも一度空焼きをして臭いを無くせば使用できます。下缶用の缶は上蓋を缶きりで切り取り、下部に五寸釘などで穴をあけ、空気流入口を作ります。上缶は上蓋と底を同様に缶切りで切り取り、上部に太めの針金を二本等間隔に渡し、固定します。そして先端を10cm長めにとり、中程から内側に曲げて把手にすると作業が容易になります。塩漬け肉をS字の針金に引っかけ、上缶の上部に渡してある二本の針金にくっつかないように交互にぶら下げ燻します。

食用油の缶は錆びて腐食しやすい反面、
入手が容易で細工が簡単だから、長所と
短所を承知していると燻製器には最適で
す。スーパーや飲食店に頼めば無料でく
れ、缶切りかブリキ鋏で簡単に工作でき
使い捨てのつもりで使用できます。
クッキング・ホイル利用法
空缶利用の燻製法は、ちょっとした空き地でもベランダでも簡単にできますが、それも難しい場合には、台所で調理器具を利用します。支那鍋の底にホイルを敷き、ザラメ砂糖と緑茶を混ぜておき、その上に餅焼き網を置き、塩漬け肉を置いて燻します。
支那鍋をガスコンロに乗せ、ほどよい煙となるまで強火で熱します。ほどよい煙が出るようになったら、煙量が減少しないように様子を見ながらめいっぱい弱火にします。
そして全体をクッキングホイルで包み、上部に排煙口となる間隙を開けておき、ほどよい流れを確保します。
この方法で燻製を作れば、サンマを焼いたときのような煙は出ず、クサヤを焼いたときのような臭いは出ません。最も周囲に迷惑を出さない燻製法です。
最も一般的な簡易燻製法
一般的な燻製法と言っても、幾つもの方法があります。そして、ほとんどの場合は市販の「燻製器」使用を薦めていますが、前述の空缶を利用してもなんら不都合はありません。しかし、両者の鉄板の厚みに若干の差はあっても、いずれにしても錆と腐食で半永久というわけには行きません。使い勝手と耐久性の両方から木製のものを薦めます。 厚手のベニヤ板かヌキ板で手作りすれば安価にでき、そのままでもペンキを塗っても質感の高い燻製器となります。トタン屋根をつけてウッディハウス風に作れば、風雨に曝されるベランダや庭の隅に作りつけにできます。それを眺める楽しみもでき、使用前後の設置と片付けが不要で便利です。
燻製は塩漬けの肉や魚の生乾きをオガクズで燻したものという燻製の原理を踏まえれば、手順も見当つくと思いますが、使いながら工夫して使い勝手をよくして行くのも楽しみのうちです。燻製用のオガクズも、市販されているチェリーやヒッコリーがよいと言われていますが、製材所や木工所からもらった鋸クズでも十分使用できます。よい香りも異臭も煙になると強くなりますから、鋸クズを嗅いでも区別はつきませんが、新建材は勿論のこと、マツやヒノキなど針葉樹は避けなければなりません。
燻製の香りは焚き火の香りでもありますから、燻製に焚き火の香りを感じるだけで、うま味は倍増します。焚き火の香りだけで十分と感じられないようでしたら、月桂樹の葉を混ぜることもよいし、またハーブを試してみてもよいでしょう。ブレンドして、好みの香りを創ってもよいでしょう。
燻製材料と作り方の例
燻製材料は、入手しやすい豚リブ、鳥手羽、羊チョップ、虹マスなど、手当たり次第に
何でも試してみるとよいでしょう。大きな塊では塩加減や燻す温度と時間など難しく、いきなり成功というわけには行きません。肉は切り身から魚も切り身や小ぶりなものを使用すれば、まずは大きな失敗もなく徐々に腕を上げられます。
豚のバラ肉でベーコンを作る"基本的なプロセス"を説明しますと、
(1)バラ肉のブロックは1cm程度にスライスして、塩コショウして約2時間おきます。
(2)肉の幅の狭いほうにS字形の針金を引っかける。
(3)オガクズと、細かく砕いた月桂樹の葉をよく混ぜてバットか平皿に拡げる。中心に火のついた豆炭を置き、時間を長く燻したい時は香取線香様の工夫をする。上部の間隙から安定した煙が出ているのを確認して完成を待つ。
燻す時間は30分から1時間程度で、好みによって加減します。塩加減や燻煙時間は一応の目安とし、少なめから徐々に増やし、いきなり多くしないのが肝腎です。
市販のものでは味わえない本物を味わえる魅力は病みつきになる程ですが、小鳥の声や流れの水音を聴きながら、立ち上る煙を眺めながら燻製が出来上がるのをぼんやりと待つのはさらに至福千年のいっときです。
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Part 2 週末に農夫を楽しむ |

日当りの良い庭付きの一戸建て住宅でないと、土に親しむ生活はできないと思うのが常識となっています。都会に澄んでいたら、ベランダのプランターで草花か ハーブの類を楽しむしかないと思われています。しかし縛られない発想で工夫し、底を抜いた牛乳パックをプランターの上に重ねたり、使用できなくなった黒いビニールのゴミ袋で根もの野菜を作っている人はいます。
ビルの屋上に畑土をダンプ・トラック数台分も入れて、そこを農園にしてしまっているような例もあるようですが、畳二枚縦並べ程度のベランダに植木鉢やプランターで用土を置き、壁に支柱とネットで這わせ、天井から吊せば、立派な家庭菜園となります。家族で食べきれず、ご近所におすそ分けするほどの収穫が期待できます。

荒れ地を開墾して農園主に
ちょっとした工夫で、土に親しむ趣味とゆとりを楽しむ人たちの健闘は祝福に値しますが、痛快な都会の田舎暮し人の痛快たる所以は、ちゃっかりと広大な農地の農園主となることです。 お寺の社の中に秘密燻製製造基地を勝手に設けてしまうように、多摩川の河川敷にこっそりと畑を開墾してしまうのです。そして、土手の上に立ち、遥かわが農園を望んで悦に入り、してやったりと痛快な気分に浸るところにあります。
河川敷から丘陵地に移る途中の灌木雑草地帯は秘密の農園に最適と言えます。特に斜面に立ち入る人はいないので、耕地にしても踏み荒らされることはありません。そのまま土手カボチャを作ったり、枝豆を作ったりするのに好適です。 また、多摩川の河川敷の葦原は多摩動物公園の動物たちに新鮮な青餌を供給するために管理されています。春から秋まで定期的に刈り取って、冬になると春に向けて枯れた葦を焼き払います。
これは原始的焼畑農業を彷彿とさせてくれますし、刈り取る機械が入れないニセアカシヤなどの林の周囲は秘密の農園になりうる格好の場所です。 こういったところはトウモロコシなど背の高い作物が目立ちにくいので、高く伸びる作物に向いています。 また、同じ河川敷の続きに警視庁の警察犬訓練用グラウンドがあります。ハードルなど訓練用具が常設されていて簡単な柵で囲われているだけですが、土手側に向け警視総監名で立ち入り禁止が公示されているので、まったく近寄る気が起こらないいかめしい雰囲気となっています。
おかげで川側の柵にそってトウモロコシを二畝植えておいても、滅多に引き抜いたり、実をもがれてしまう被害はありません。公然と二畝植えると受粉率が高まり実付きがよくなるので、葦原に隠して植えたトウモロコシ畑よりも格段の収穫量となります。

週末農夫の勘どころと心得
痛快な都会の田舎ぐらし人の週末農業は、文字どおり週末の休日農業でなければならず、その間を家族にまかせる"三ちゃん農業"にしてしまったら、痛快などという看板は下ろしてしまわなければなりません。そのためにも週一回の作業で、ある程度の収穫が見込める作付け計画が必要です。 農作業をとおして土に親しみたいのと、買って食べていたのでは味わえない本物の味と香りを欲するだけなのですから、無理をしないことが肝心です。 そして、毎早朝の愛犬との散歩で多摩川の河川敷を走るときに、秘密の農園を見回って生育状態を見ればよいのです。日照り続きのとき、長雨のとき、そして台風一過のときなどは、倒れていないか流されていないか異常を確かめればよいのです。
毎朝の見回りも習慣にしたら、面倒ではありません。 また、河川敷に広大な農園を所有したと思っていても、なんといっても勝手に拝借しているわけですから、一瞬にして今までの努力が水泡に帰することも時にあることを承知しておかねばなりません。誰も立ち入ることはなく、台風で増水しても冠水の心配はない一級の農地と思っていても、橋の懸け替え工事や河川敷にある運動施設の改修工事でダンプ・トラックが出入りするための道路を作るために、ブルドーザーがあっというまにすべてを微塵にしてしまうことが時にあります。 これは勝手を戒める神のご意志と解釈して、感謝すればこそへこたれてはいけません。

週末農夫の修行と精進
秘密の農園は突然に消失する可能性が常に存在しますので、確実で安心できる農園も確保しておく必要があります。農家から土地を借りて"一坪農園"を耕している知人に頼んでもらい、それに位置や広さなどに自分の好みを加味した"一坪農園"を貸してもらいます。 この方法は良質な"一坪農園"を借りるに最善であるばかりでなく、同じ土地で営農しているプロのお手並みを拝見することができて、さらにそこで素人百姓が汗を流してどの程度のものが収穫できているのかを確かめることもできるよい方法です。
家庭菜園の手引き書を数冊読んでも、あくまで参考です。自分が作りたいものをプロがどう作っているか、そしていつ頃どんな作業をしたらよいか、どこに注意すべきかをプロに教えてもらいます。ところが親切丁寧に教えてもらっても、いざ自分でやってみるとわからないことが出てきます。しかし、あまり幾度もたずねると迷惑になってしまうので、知人の一坪農園主に詳しく聞き直します。 プロに質問をするときには質問できるよう、ある程度上達してからでないと、破門されてしまいます。しかも、一坪農園の貸主でもあるわけですから、機嫌を害して貸してもらえなくなってしまったら泣きっ面に蜂です。
この地のお百姓の言葉に「秋の一日は春の七日」という言い方があります。立秋を過ぎると日照時間は一日ごとに短くなりますから、秋の作業の一日の遅れは春の七日の遅れと同じであるという戒めの言葉です。週末農夫はいちばん大切なことに対応できない弱点をもっているので、つね日頃に極力休みをとらないようにして、ここ一番というときには休みをとれるようにしておきましょう。

週末農夫の年間作業心得
週末農夫の収穫野菜は、よくも悪くもスーパ−の野菜と比較されてしまいます。プロが作るものに負けないようなものを作りたい気持ちはわかりますが、最初から立派な外観の野菜をたくさん収穫しようと思わないことです。失敗の積み重ねが腕を上げるのは、野菜作りの場合でも同じです。どこがまずかったかと反省して、来年に向けて思索する気持ちを大切にしたいものです。 また、週末農夫は無農薬有機栽培にあえて挑戦したいものですが、農薬を使わないと虫がついたり病気にかかるのは事実です。しかし、どんな害虫も病気も最初はほんのわずかです。 毎朝の見回りに微妙な変化を見逃さず、変化が表れたら直ちにその葉や虫を捨て去ることが基本です。
春に備える 二月に近づくにつれ寒さの本番を覚悟しますが、暗いはずの朝が明るくなっていて、春の忍び寄りを感じさせてくれます。まだ朝は寒く、夕暮れは早いので、週末農夫はこの時期にまとまった作業時間はとりにくいものです。ゆとりをもって、早めに計画を立てるよう心がけます。播種の時期をずらせば、季節はずれの収穫や夏の端境期の葉菜も期待できますが、無理をすると病気に罹りやすいなどの欠点も出てきます。
土作と種子の準備 冬季は寒気にさらし、休耕していた土を掘り起こし、天地返しをします。そして、そのときに元肥として十分な堆肥をすきこみます。一坪農園の貸主は貸地の地味を肥やすことには賛成で、堆肥をいくらでも提供してくれます。自分で堆肥を作ることを考えたら、感謝感激です。 種子はプロが購入している種苗会社を利用し、店頭で購入するときには採取年月日を確かめましょう。また最近の品種の多くは一代雑種ですから、二代目からは品質が劣化します。そのために、自家採取の種子は利用できません。

春に播く野菜 種子を春に播く野菜は、晩春に収穫するもの(シュンギクなど)と、夏どり(トマトなど)、秋どり(サトイモなど)があります。霜柱が残るうちは、戸外での直播きはできません。多くの野菜は20度Cほど必要です。ニンジンなどは光がないと発芽しない好光性種子で、反対にダイコンなどは暗くしないと発芽しない好暗性種子です。 好光性種子は、厚く覆土すると発芽が阻害されます。直播きは4月以降に可能となりますが、果菜類は温度不足で発芽しにくいので苗を購入したほうが得策です。 苗を選ぶポイントとして、太くがっしりしたもので葉は縮れていないもの、そして芽も傷んでいないもの、根はしっかり張ってついている土が多いものが良苗です。
夏の手入れと種子播き 梅雨から初夏にかけては野菜の伸び期です。見るごとに大きく伸びてますので、本格的な支柱を準備する時期となります。腋芽も伸びますので早めに摘み取りましょう。ナスは一番花の主茎とすぐ下の二本の側枝を残して、そこから下はすべて摘み取ります(三本仕立て)。トマトは一番花が房になってつきますから、それ以下はすべて摘み取ります(一本仕立て)。 夏季はキュウリなどの野菜の収穫期ですが、葉菜は不足します。コマツナなどを播くと、間引き菜から長期に楽しめます。ナスなどの果菜類は水が切れると収穫が落ちるので、夕方にたっぷり灌水します。ジョウロで表面を濡らすだけではかえって表土を固めてしまい、水をしみ込みにくくしてしまいます。
秋の種播きと収穫の後始末 九月に播いて冬穫りするものに、ホウレンソウなどの葉菜類、ダイコンなどの根菜類があります。収穫の終わった畑土は、たっぷりの有機肥料を混ぜて再生させます。ナス科、マメ科、ウリ科などは連作すると、イヤ地現象を起こし収穫が落ちます。 病原菌、有害ホルモンの蓄積と微量要素の欠乏などが原因と言われています。土中に根が残るとひどい悪影響が現れるので、できるだけ根を取り去ります。違った科の作物を組み合わせた輪作が、イヤ地を防ぐ、最も効果的な栽培法です。

冬の作業と防寒の工夫 冬と言っても関東以南では、日中から氷点下になることは希です。夜間の防寒さえ十分心がければ冬の栽培も難しくありません。防風、霜除け、太陽熱の有効利用が基本的ですが、北面の畝を高くしササの枝を野菜の上に斜めに刺せばほぼ目的を達します。
冬の太陽の入射角度は低いので、野菜がササの葉を破っていても日照を妨げることにはなりません。黒いポリエチレンで土の表面を覆うと、昼間の熱吸収は高くなり、夜間に地熱の放射を少なくします。敷藁より簡単で効果的です。
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Part 3 果実酒を楽しむ |

南に流れる多摩川の下流方向は開け、そのすぐ先に東京湾が拡がっているかのような錯覚を起こしてしまいそうです。視界の左端には神社の社と競馬場の社が盛り上がり、右端は遊園地の大観覧車がそびえるこんもりとした多摩丘陵がはじまって、ずーっと西の山梨県方向まで連なりを見せています。多摩丘陵は東京西部から川崎と横浜にまたがる小高い丘陵地です。老年期の山肌が風雨に削り取られて浅い谷のようになった谷戸(やと)の連続に、雑木林、川、湧水のある池地、水田と休耕田から成り立っています。
この丘陵が生き残ったのは、小高い丘陵地であることから、ブルドーザーとチェーンソーが入り込みにくかったためと言われています。多摩ニュータウンなど住宅団地が数多く造成されたために林道やハイキング・コースは分断されたものの、豊かな緑を残して都市近郊の憩いの場所となっています。明治の元勲三条実美が隅田河畔にあった別邸対鴎荘を多摩丘陵が多摩川に張り出した桜の丘に移し、そこに明治天皇がしばしば訪れてアユ釣りやウサギ狩りを楽しんだということから、「聖蹟桜ヶ丘」という地名が京王線の駅名などに残っています。
いまは都立公園の一部となっている聖蹟記念館を起点にして、八王子の野猿峠までのハイキング・コースは数カ所を宅地造成で分断されたものの、百草苑、多摩動物公園、平山城址公園と、その周囲は多摩丘陵の豊かな自然を残していてくれます。

野原と山道は垂涎の宝庫
多摩川の河川敷にある林は、ほとんど「ハリエンジュ」です。120年ほど前に北アメリカからやってきてアカシアの名前で知れわたりましたが、本物ではないことから、「ニセアカシア」となりました。共生している根粒バクテリアのおかげで、痩地でもよく育ち、海辺の砂浜から高冷地の低山帯まで、日本各地に帰化して野生林として繁殖しています。ハリエンジュは高さ15mぐらいにもなる落葉高木で、初夏のころ葉の付け根から長さ15cmの花穂を垂れ下げます。甘い香りのある白色の蝶形花がたくさん咲き、ミツバチが群れ飛びます。
三分咲きぐらいのつぼみの多い花穂を摘み、そのままの姿で天ぷらに揚げるとおいしい初夏の香りを楽しめます。花穂をよく洗い、つぼみと花をしごき取り、熱湯に潜らせて冷水でさまし、酢の物、辛子あえなどで食べるのもオツなものです。半開の花を集めて洗って水気をきり、4〜5時間は乾かします。ガーゼなどで包んで、3〜4倍量のホワイト・リカーなどに浸け、花は1〜2週間で引き上げると、3〜5ヵ月で香りの強い辛口のネープルス・イエローのリキュールが楽しめます。スイカズラやフジも同じように食べたり、リキュールにして楽しめます(マメ科ハリエンジュ属)。

愛犬の散歩はリードをつけて街中を歩くよりも、ノーリードで広々したところを自由に飛び回らせてあげたいものです。複数頭を散歩させるときにはリードさばきの煩わしさからなおさらのこと、郊外で伸び伸びとさせてあげたいと思ってしまいます。多摩川から多摩丘陵にかけての野原と山道は格好の散歩コースで、いたる所に「キイチゴ」を見かけます。木になるイチゴはすべてキイチゴと呼ばれていますが、そのうちで「モミジイチゴ」だけをキイチゴまたはキイロイチゴと呼ぶのが正しいようです。モミジイチゴは山地のやぶ、林縁、沢ぞいなどに自生する、高さ1〜2mのトゲの多い落葉低木です。
葉は3〜5裂で、4〜5月ごろ前年枝の葉の付け根から花枝が伸びて、先に一個の白色五弁花が下向きに開いて人目を引きます。果実は径2mmほどの核果が果托に房のように集まったもので、光沢のある橙黄色で径15mmぐらいの球形です。6〜7月ごろに黄熟した果実を見つけます。 がくや果托は残し、中空の帽子状にポロリと取れてくる核果のあつまりキャップだけを摘み集め、くずれないようにさっと洗って水気を切ります。2〜3倍のホワイト・リカーなどに漬けますと、30〜40日でオレンジ・イエローになり、2ヵ月ぐらいから飲めるようになります。軽い香りと甘味にわずかな酸味が楽しめますが、果実はくずれやすいので2〜3ヵ月で引き上げます(バラ科キイチゴ属)。

日当たり良好な林間や河川敷の草原に自生する「ナワシロイチゴ」は落葉小低木で、花弁は淡紫紅色。小葉は3個で鈍頭か円頭、下面は綿毛で白い。6〜7月ごろ、汚れていない果実を取ります。 酸味がやや強く、2〜3倍のホワイト・リカーなどに漬けますと、軽い香りでさっぱりした味の、ロージィ・レッドからブライト・レッドに仕上がります。果実は特にくずれやすいので、2〜3ヵ月で引き上げます(バラ科キイチゴ属)。 多摩地区も昔は養蚕が盛んで桑畑が多かったせいか、いまも生け垣などに「クワ」の大木を多く見かけます。淡緑色から橙紅色、そして紫黒色に熟するクワの実は生食すると美味ですが、舌と指を紫色に染めて落ちにくいのが難点です。 ジャムにしてもジュースにしても楽しめます。3〜4倍量のホワイト・リカーに漬けますと、まもなく溶液は紅紫色に染まります。漬けて2〜3ヵ月のころは香りにクセがありますが、6〜8ヵ月で軽い香りとちょっぴり酸味のある、まろやかな甘さのクリムソン・パープルに仕上がります。果実はくずれやすいので15〜30日ぐらいで引き上げます。

またワインに漬けるときは2〜3倍量で、果実は10〜20日で引き上げるほうがよいでしょう(クワ科クワ属)。 お花見名所の土手の桜、公園の桜、校庭の桜、桜並木通りの桜と、「サクラ」はいたる所にあり、花が終わった後に小さなサクランボをつけます。野鳥たちは喜んでついばみますが、ヒトは食べられないと思っているようです。 ヤマザクラの実は、核果で径7mm、黒熟すると甘くて美味ですが、リキュールには紅熟のほうが色も味もソフトで万人むきです。 6〜7月ごろ摘み集めて、3倍量のホワイト・リカーかウオツカに漬けますと、3〜4ヵ月でオレンジ・イエローに仕上がります。辛味、苦味、わずかな渋味、そして甘味もあります。黒熟果で作ると色も味も濃く、喉を軽く刺激する味です(バラ科サクラ属)。

「スグリ」の実を噛むと酸っぱい。3〜4倍量のホワイト・リカーかジンに3〜4ヵ月ほど漬けますと、軽い香りと酸味を楽しむ味に仕上がります。淡黄緑色の未熟果では淡いクリーム・イエローになり、紅褐色の完熟果では濃色になり、ややサーモン・ピンクに色づきます。糖類を加えますと、飲みやすい美味しさとなります(ユキノシタ科スグリ属)。 「クサボケ」は秋に熟して黄色くなり、地梨とも言います。9〜10月ごろもぎ取り、黄熟したものは4つ割りにし、まだ青い果実は丸のまま、3倍量のホワイト・リカーになどに漬けます。3〜10ヵ月で酸味がつよく香りよく、レモン・イエローに仕上がります。 果実は5〜6ヵ月で引き上げるほうがよいでしょう(バラ科ボケ属)。 「ガマズミ」の柔らかく完熟した果実は甘くて、そのまま食べたり、酸味のきいたジャムにできます。

輝赤色の果実を2〜2.5倍量のホワイト・リカーかジンに漬けますと3ヵ月ぐらいで飲めるようになり、5〜10ヵ月で澄みきったチェリー・レッドに仕上がります。 さわやかな酸味にわずかな渋みと甘味がまじり、やや甘口。果実は5〜8ヵ月で引き上げます。黄熟する「キミノガマズミ」もあります(スイカズラ科ガマズミ属)。 「アケビ」の果実は、ぶ厚い果皮に包まれた黒い種子のまわりの甘い白い果肉を食べます。ぶ厚い果皮を食用にするなら、果皮の紫色が濃いものよりは白いほうが苦味は少ないようです。 9〜10月ごろに熟した果実をとり、スプーンですくい出した果肉を種子ごと2〜3倍量のホワイト・リカーからウオツカに漬けます。20日ぐらいすると溶液はクリーム・イエローに染まりますので、果肉は引き上げます。3〜4ヵ月で強い甘さとわずかな渋さのとろりとした味に仕上がります。

まだ裂けていない未熟果にナイフで切れ目を入れて、丸ごと3倍量のホワイト・リカーなどに漬けますと3〜4ヵ月でオレンジからレッド・ブラウンに仕上がり、甘くて苦さと渋さもある味になります(アケビ科アケビ属)。
「ムラサキシキブ」は10〜11月ごろに熟して濃い紅紫色になった果実を摘みとり、3〜4倍量のホワイト・リカーなどに漬けます。まもなく果実は白っぽく色あせ、溶液は赤褐色に染まり始めます。
5〜10ヵ月でやや薬っぽい刺激がさわやかで香りが強い辛口のオレンジ・スカーレットに仕上がります。
長く漬けておくと辛味が出てくるので、2〜6ヵ月で果実がくずれないうちに引き上げます(クマツヅラ科ムラサキシノブ属)。
選びたいアルコールとフレーバード・ワイン
果実を漬けこむアルコールは、ニオイにクセのない無色のものがよいでしょう。その意味で無色の蒸留酒から選ぶなら、まず第一にホワイト・リカーと呼ばれている「焼酎甲類」です。酒というよりは、日本薬局方のアルコールみたいなものです。イモ焼酎やムギ焼酎など「焼酎乙類」に比べて、まったくと言ってよいほど風味や香りはありません。 ホワイト・リカーのアルコール含有量は20%のものもありますが、濃度の高い35%のものが果実の成分をよく浸出させます。 また、「ドライジン」は、その爽やかな香りと辛さがリキュールに好適ですが、仕上がりの遅いのが難点です。そして、「ウオツカ」にはソフトなまろやかさがあり、「ラム」はライトなものに適しています。 そしてウイスキーやブランデーなど、いろいろな種類の蒸留酒を試してみるのも楽しいと思いますが、あまりにも風味(フレーバー)の強いものは避けたほうがよいでしょう。 ワインなど蒸留酒もリキュールにできます。
日本酒でも当然リキュールはつくれますが、それは邪道でしょう。日本酒の繊細な風味はストレートで味わうものですし、それを苦労して造ってくれている人たちに失礼な気がします。
ヨーロッパで「白ワイン」はリキュールづくりに適しているとされています。赤やロゼに比べ、白ワインの味にはクセを感じませんが、無色の蒸留酒に比べると個性を強く感じます。おなじ果実を漬けても、ホワイト・リカーほどに質の変化は目立ちません。
ワインで作ったものでアルコール含有量13〜25%ぐらいのものは、リキュールから区別して「フレーバー・ワイン」と呼ばれているようです。アルコール度が低く、軽くて、フレッシュな色のものであればアペリティフ・ワイン(食前酒)として重宝しますし、品のよい香りづけができたものはテーブル・ワイン(食中酒)で楽しめます。
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Part 4 蜂を飼って蜜を味わう |

パリのオペラ座は、その地を訪れる日本人の、いわばランドマークのような存在となっています。ほとんどのヨーロッパ・ツアーはパリを経由し、たいていの格安ツアーは飛行機の都合で、往路か帰路に一泊することになっていることが多いためでしょう。そして、その一泊一日のうち半日はバスで市内観光をして、残る半日はフリータイムとなっています。 空港へ戻るまでの数時間を各自が自由に過ごしてよいわけですが、ほとんど申し合わせたように、オペラ座の前でうろうろと過ごします。地下鉄の駅から地上に出ると、見間違えられないほど特徴的なオペラ座がそびえ、ルーブル美術館までのオペラ大通りの見渡せる範囲には、行きたくなるお店が目白押しに並んでいるからでしょう。
生ガキやムール貝などの海の幸が安価でお腹が冷えるほどたくさん食べられるお店、お寿司や和食からラーメンとうどんが食べられる店々、パリッ子に人気のあるセルフサービスのレストラン、そしてオ・プランタン・デパート、手際よく土産まで揃う日本のデパートのパリ支店が数店、衣料が豊富なスーパー・マーケットも数店あり、ドラッグ・ストアから日本書籍の書店まであってコンビニエンス・ストアのように便利です。
限られた時間内に手際よく食べられ、買い揃えられ、すばやく目的が達せられるポイントがオペラ座ということなのです。どのツアー客も考えることが一緒なために、行動が一緒になってしまうのでしょう。

パリ・オペラ座のオリジナルメイドの蜂蜜
このようなことからオペラ座の周辺を詳しく知る日本人の数はかなりのものと思いますが、パリのオペラ座の中に入ったことのある日本人となると、観劇でない人を含めてもあまり多くはないでしょう。 しかもオペラ座の中に入った日本人でも、場内のカフェで「オペラ座特性ハチミツ」が販売されていることを知る人はほとんどないと思います。 広口の小ビンには瀟洒なオペラ座が描かれたラベルが貼られ、たぶんオペラ座特製のハチミツと、フランス語で印刷されているのでしょう。すっきりして洒落た感じのものです。 説明によると、オペラ座の屋根にはミツバチの巣箱が幾つも置かれていて、ミツバチたちは東はサンマルタン運河の北ホテル、西は凱旋門エトワール広場、そして南はリュクサンブール宮殿からサンジェルマン・デ・プレ、北はモンマルトルのサクレクール寺院あたりの花々からミツや花粉を運んできてくれているのだそうです。

ハチミツは自然からの恵みそのものという感じがして、滋養強壮という言葉がハチミツのためにあるのではないかと思えるほど栄養豊富な健康食品といえましょう。 しかし、共に科学的に実証されたという言い方で、評価が両極端に分かれています。 従来の漢方薬のような意味での万病薬効果に加えて、治療法が確立していない難病にも効果が確認されたとするものと、ただ単純に砂糖などと同じように“甘味”でしかないというものです。 まったく薬物効果のないクスリ風の粉末や液体を特効薬と信じて飲用しますと、その信じる効果が70%も生起するという事実をプラセボ(偽薬)効果といいます。科学的に実証されていて精神科で依存症の治療に利用されているプラセボ効果から考えますと、ハチミツに万能の効果があると信じている人たちには効果があり、ハチミツは甘味料でしかないと思っている人たちには砂糖などとなんら変わらない効果でしかないのでしょう。

純粋ハチミツは独特の味と香り
ハチミツはロマンを感じます。巣箱から取り出したばかりのような巣板の口がカットしてあり、中に琥珀色のハチミツがとろりと見えているものがパックされ、空港の売店や町のスーパーで売られているのをニュージーランドで見かけたことがあります。それをどのように食べるのかうっかり聞き漏らしましたが、これこそ自然の恵みの象徴と神妙な感激をしました。 しかし、身近ではハチミツだといって売られているものが、ハチミツよりも砂糖液のほうが多いのではないかと思ってしまうほど、味も香りも薄くて気分がしらけます。 野菜がハウス栽培で作られるようになってから味と香りを失ったように、その頃から日々の食卓に乗るものすべてとハチミツまでが味と香りを失って水っぽくなってしまったようです。 味と香りがしっかりある本物の野菜を食べたければ家庭菜園を耕さなければならないように、ガラス瓶に入った砂糖水のようなハチミツを食べたくなければ巣箱において養蜂をしなければならないと考えるにいたりました。
「近代養蜂」という名著を熟読し、「ミツバチ科学」という研究同人誌を購読し、近くの大学の農学部へ養蜂の実際を見学に幾度も足を運びました。
嬉しいことに、養蜂は絶えず人手を必要とするもではなく、技術的にもさほど困難というものでなく、その気になれば誰にでもできるものであることがわかりました。
しかし、春や夏にはミツバチが増殖して女王を含む一群が、古い巣から離れて新巣に移る「分封」が起こると、無数のハチが飛び交い、その後に庭木の枝などに大きな塊となるわけですから、養蜂に理解を示してくれているご近所でもビックリ仰天してしまうでしょう。
養蜂そのものは難しいものではないことがわかっても、住宅密集地での養蜂が不可能であることが判って、しばらくミツバチを飼いたい気持ちはお預けのままとなりました。
自宅の庭でビー・ウォチッング
住宅密集地での養蜂は無謀であるとする考えは正論で常識です。ところが自宅から数分のところに養蜂を趣味にしている人がいたのです。農林省の試験場で技官をしていた方だそうで、ミツバチの実用交配種の改良研究に携わったことがあったそうです。 ミツバチの分封はむやみやたらに移動して起こるのではなく、古巣と同じ高さのところに新しい巣をつくるなど一定の法則性をもっているので、分封を不必要に恐れることはないと教えてくださいました。 とんでもなく身近に養蜂の神様みたいな人がいて、非現実的な夢として諦めるしかないとも考えていた住宅地での養蜂が突然可能となりました。けっしてオーバーな表現ではなく、念願が叶った思いです。懇切丁寧にご指導いただき勇気百倍で、養蜂家の道を歩み始めました。
最初の一年目は、実用交配種を一群購入し、継箱二段構成で無理をせず上段の箱のみから採取する手法をとりました。 約10リットル強のハチミツが採れたのは初心者として上々の成果と思いましたが、万全のつもりでいた越冬に失敗してしまいました。 2年目からの養蜂はミツはハチたちのおこぼれを頂戴する程度として、主に群勢強化と、できたら群数増加を目標にしました。実用交配種を二群に勧められた黄金種の一群を加え、さらに勧められた別々の業者から購入してみますと、業者によってハチの大きさや色などが異なり、集蜜行動にも差があることがわかりました。
しゃにむに小蜂群の集約合理化と蜂群の強勢化を図るよりも、まず優秀な蜂群を購入することが大切であることを身をもって知りました。
ダニが寄生している蜂群をうっかり購入して駆除に苦労したばかりでなく、それが原因の奇形蜂児が多量に発生して群を強勢に育て上げるのに大変な努力を強いられた例もあるようです。蜂群増加には人口女王蜂を得る方法が最善といわれていますが、かなり熟練を要するのでしばらくは蜂群を強制分割して自然女王の育成手法で手堅くゆきたいと思っています。
自宅の庭にミツバチ団地を設置して、家賃としてハチミツを頂戴する不動産管理業で共存するのがよいと思っています。

ハチミツの種類は花の数プラス1
ハチミツを花の種類によって分類するのは世界共通の習慣です。そこで同じ花のハチミツであれば万国共通の風味かと思いますと、必ずしもそのようにはなっていないようです。もちろん、気候風土の影響もあるかと思いますが、いちばんの原因は採蜜法の違いにあるようです。 日本の養蜂家は、一つの花が咲いている間にこまめに何回も採蜜するので、他の花のミツはほとんど混じらずに目的の花のミツを採ることができます。 ところが日本以外の国々ではそこらに頓着しないで大まかな採取をしていますから、どうしても他の花の風味が混じってしまいます。厳密な単一蜜源にと執着していないためでしょう。 春になりますと、多くの種類の花々がいっせいに開花して、その美を競うかのように咲き誇ります。それは昆虫たちをその美しさで誘い、ミツを提供して受粉を確実にするための努力なのでしょう。
そのような状況下でのミツバチたちは、同時に数種の花のミツを集めてしまうのではないかと思いますが、好都合なことに一つの花に通いはじめると、他の花には目もくれない性質をもっています。
ミツバチのこのような性質を「訪花の一定性(flower
con-stancy)」と言います。
そしてミツバチはダンスで仲間に情報を伝えますが、蜜源が貧弱な場合は簡単に終わってしまいます。蜜源が豊富な場合には激しく活発になり、ダンスで知らせを受けた仲間のハチは次々にミツを求めて飛び立ち、巣箱に戻るとまた新しい仲間にダンスで伝えます。
こうして同じ巣箱のハチは最も豊富な蜜源の花に集中しますので、ほぼ単一の花のミツが出来上がるのです。
レンゲ蜜 日本の代表的なハチミツです。紅の可憐な花が微かな風に揺れ、田んぼ一杯に拡がるさまは美しい日本の光景ですが、この花と同様に優しい香りと上品な味を持ち、最高級品と評されています。味にクセはなく、どんな飲み物、デザート、料理にも向いています。
アカシア蜜 レンゲ蜜を王様とすれば、ハチミツの女王といえましょう。アカシアは正しくはニセアカシアで、和名は針槐(はりえんじゅ)です。
蝶に似た小さな花が藤の花のように垂れ下がって咲き、あたり一面にロマンティックな芳香が漂います。上品な味はレンゲにも似て美味しく、結晶しにくいのも特徴です。
ミカン蜜 蜜柑の産地で採れるもので、色は黄色味を帯びて蜜柑の果肉と果皮に似た独特の風味があります。紅茶によく合いますし、デザートやサラダに最適です。
トチ蜜 山地に自生する橡の木の花から採れるもので、淡白な味と華麗でファンタティックな香りをもっています。
パリのマロニエと同類で、赤色でまわりが白色の小さな花が房状に上を向いて咲きます。菓子、パン、ソース類に向きます。
クローバー蜜 ホワイトクローバーとレッドクローバーから採れますが、主力となる蜜源はホワイトからです。同じ時期の咲くシナの木の花のミツが混じったものは欧米人には好まれています。レンゲに似た味でより繊細な風味です。
ナタネ蜜 菜の花から採れるもので、味も香りも強くて通人好みと言われています。
一般的には、さっぱりした味の料理には不向きで、スパイスの強い料理に向きます。夏でもクリーム状に結晶しますので、パンにつけると美味しいです。
シナ蜜 日本特産の強い芳香のシナの木から採れるもので、その香りの強さから日本人には好まれません。しかし、同類である中国の菩提樹とヨーロッパのリンデンバウムのミツは、そこの国の人たちには好まれています。ソバ蜜と同様にほとんど市販されず、脱色、脱臭されて食品加工用にまわされているようです。
日本で販売されているハチミツは「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」によって採蜜源の花名を表示する場合には国産名を記入しなければならないと決められています。そして国産を標示する場合にはすべて国内で採蜜されたものでなければならないとも決められています。そこで花名が標示されていないハチミツは数種類の花のミツがブレンドされれたものということになります。
日本以外の国々では、花名を標示してあるのは主にその花が採蜜源であるというもののようです。他の花のミツが混入していても、ミックスされて厚みが増した味と香りとしてむしろ好むのでしょう。さっぱりした風味料理を好むのと、こってりした洋風料理を好むのとの違いなのでしょう。
そこで日本以外の国々にはアバウトに花の数だけハチミツがあり、わが国には花の数だけ純粋なハチミツとプラス・ワンとしてミックスド・ハチミツがあります。
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Part 5 野外料理を楽しむ |

ユーミンが歌う“中央フリーウエィ”は、府中南部を東西に走る中央高速自動車道です。
ユーミンは竹村さんのことと思い込んでいる人でも、ユーミンが超人気の女性歌手であることは知っているのではないでしょうか。
“右に競馬場、左にビール工場、夜空に続く滑走路”と歌われていますが、そのビール工場と多摩川の間に魚市場、青果市場、その他を擁した巨大な「卸売市場」があります。この卸売市場には必要な食材がすべてそろっていますので、都会の田舎暮らし人に居ながらにして田舎料理の材料を与えてくれます。
川端の市場は食材宝庫
痛快な都会の田舎ぐらし人は、都会に暮らしていても田舎暮らしは可能であると考えています。しかし、視覚的には緑豊かに見える自然でも工場排水や産業廃棄物からの科学的有害物質で汚染されているのではないかと思ってしまいますと、それを採取して食べてしまう気にはなれません。 多摩川にはフナやアユばかりでなく、70〜80cm以上もある大ゴイがたくさんいることでも知られていますが、おおぜいの釣り人たちのほとんどは釣ることが目的で、釣ったものを食べることが目的ではないと思います。 毎日のように多摩川で釣りをしている知人は、いつもバケツに一杯もの雑魚を釣り上げていますが、家猫と野良猫たちに食べさせているのだと言います。「食べたくならないか」と尋ねますと、「うまそうだけど、食べたら大変だもんねぇ」と言います。誰も食べてはいけないことを承知しているようですし、近年、食べたという人に合ったこともありません。
わずかな野草を採取して食べたとしてもなんら問題はないでしょうが、採取して食べるなら人家から離れ、人が滅多に立ち入らないところに自生する山野草を採取したいと思います。川魚も川の水がきれいで飲めそうなところに棲むものを釣って食べたいと思います。 そう考えて日帰り半日ドライブ旅行をするのも楽しいことですが、必ずそうしなければ美味しいものを安心して食べられないというのも面倒なことです。 ところが、都合よく多摩川べりに前述の何でも揃っている卸売センターがあってくれるものですから、こんなにありがたいことはありません。センターの市場にあるタラノメであるとか山ウドなどは、早めに山取りしてビニールハウスで促成栽培しているので、味と香りが弱く、姿はヒョロリと徒長気味です。しかし、贅沢は言っていられません。

簡単に手に入って安心して食べられるのは魅力です。ちょっぴり我慢すれば満足が得られます。 山菜は春の味と香り 春になると真っ先にフキノトウ(蕗のとう)を探したくなります。春を確かめたくて探すのかも知れません。フキノトウが顔を出すところは大概あまりキレイなところではありませんが、泥沼から清楚なハスの花が咲くことを考えて、薬味程度で大量に食べるわけでもないのだからと、毎年同じ台詞をつぶやきながら摘み取ります。 散歩の途中で数個ポケットに入れて戻ると、いろいろな楽しみ方ができます。 そのままミジン切りにして味噌汁にぱっと散らす食べ方、細かく刻んで油で炒めて味噌と砂糖をからめる食べ方、裏面に衣をつけてテンプラに揚げる食べ方などがあります。 しかし、なんと言ってもフキノトウの味と香りを十二分に生かして食べる方法は「フキノトウのスパゲッティ」です。
フキノトウのスパゲッティ アウトドワ・クッキングの調理用具は簡単が一番ですから、深めのフライパンか鍋があればなんとかなりますが、出来上がったスパゲッティを皿に移してから食べる優雅さは欲しいものです。できればクーラー・ボックスにワインを持参して、グラスを傾けながらフキノトウスパゲッティを食べたいものです。 材料 スパゲッティ(入出できればデュラムセモリナ10割粉のもの)、バター、塩、コショウそしてフキノトウ、現地に自生していて食べごろであるか事前に確認しておかないと、ただのバター味のスパゲッティを食べることになってしまいます。 作り方 (1) たっぷりのお湯でスパゲッティを茹でます。 (2) フキノトウをみじんに刻みます。まな板と包丁を持参するのが面倒な場合は、ナイフか鋏で刻んでもよいのです。 (3) 茹であがったスパゲッティを鍋に残してお湯を流し棄て、そこにバターを投げ込んでもよいのですが、できれば木製の器に盛り、熱いうちにバターを乗せたほうが上品かもしれません。 そこにみじん切りのフキノトウを混ぜ、塩、コショウで味を整えます。 美味しく作るコツは、薪をたくさん集めて十分な火力で茹であげることです。 バターの香りとフキノトウの苦味が独特の調和をみせる逸品となります。

蕗はセキ、タン、健胃、便秘、食欲増進の妙薬 蕗には昔からセキをしずめ、タンを切る作用があることが知られています。ぜんそくにも効きめがあり、消化液の分泌をうながして胃弱にも効果があります。これらの作用はテルペンという精油と苦み成分によるもので、よい香りとほろ苦みが食欲を増進させてくれます。 また毒消しの効果もあり、青魚の煮物につけ合わせるのはそのためです。 セキが出てタンが切れないときには、10〜15gを1カップの水で半量になるまで煎じ、カスを漉して食後2〜3回に分けて飲むか嗽をします。 フキに玉子、蜂蜜、牛乳を加えてミキサーにかけますと、食物繊維を多く含んで胃腸によく便秘の予防にもなる、咳止めミルクセーキとなり、美味しく治せます。
筍の極めつけ料理 タケノコは掘り起こしてから時が経つにつれてアクが強くなり、エグ味を増します。頂き物をおすそ分けするときに、誰もが異口同音に“朝掘りもの”だからと強調するのもそのためでしょう。 日本の伝統料理に「奉書焼き」があり、いまは家庭料理のアルミホイル焼きに、それを残しています。“包み焼き”という優れた調理方法で、焦がさずに焼きあがり同時に蒸し、包むことでうま味を閉じ込めます。封を開けたときに立ちのぼる湯気は鼻孔から脳天に突き刺さる香気です。タケノコは皮がその身を幾重にも包んでいるので、そのまま火にかけたり、オキ火に埋め込むだけで、“包み焼き”になってくれます。 竹薮をめざして行き、その所有者らしき農家を訪ねますと、タケノコ掘り専用のクワを貸してくれて、必要なだけ掘りますと、目方を量り、農協へ出荷する料金で譲ってくれます。すぐに川原へ行って石を積んで炉をつくり、流木や枯れ枝をたくさん集めてオキ火が大量に残るよう、勢いよく燃やします。そして、その間にタケノコの“包み焼き”すなわちタケノコの丸焼きの下ごしらえをします。 タケノコのオキ火焼き 調理用具は、包丁かナイフのみで結構です。
材料 掘りたてのタケノコ、醤油、酒、好みによっては隠し味の砂糖少々か一味唐辛子を少々。 作り方 (1) シノ竹か木の枝の先をエンピツのように削って、タケノコの底を2〜3mmの厚みで切り落としてから、そこに穴をあけて目いっぱい奥まで差し込んで通りをよくしておきます。切り落としたところは棄てないで、あとで蓋として利用する。 (2) 穴に酒と醤油を注ぎ込みます(隠し味の砂糖を少々か一味唐辛子を少々入れてもよい)。先ほどの切り落としで蓋をして、小石を重しに置いてもよい。 (3) オキ火の中に、酒と醤油がこぼれないよう穂先を下にして立てるように差し込む。約40分間は置いて丸焼きにする。 (4) 焼き上がったら取り出して、皮を剥いてアツアツををかじる。輪切りにすると食べやすい。 (5) まったく同じ調理法ですが、さらに穴を大きくあけて赤飯を詰めて「おこわ詰め」もうまい。

筍は便秘、大腸がん予防、肥満、動脈硬化予防の妙薬 タケノコは中国が原産と言われ、昔から腸を滑らかにするとされてきました。豊富な食物繊維が便秘を防ぐほか大腸ガンの予防に役立ち、コレステロールの吸収を防いで動脈硬化にもよいとされてされています。 低エネルギーでカリウムが多いため、太っていて血圧の高い人には好適な食べ物です。便秘がちでニキビの多い人にもお勧めです。 ただし、この食物繊維は消化しにくいので、胃腸の弱い人や下痢しやすい人は食べすぎないことが大切です。 タケノコのように早く成長するものには、チロシンというアミノ酸などを多く含むために、特有のうまみがあります。エグ味のもとであるシュウ酸はカルシウムの吸収を防げますが、ワカメのカルシウムはこれをカバーできる以上に豊富で、しかも吸収率は牛乳以上によいので、吸い物やあえ物として一緒の料理にすることを勧めます。

野外料理は創意と工夫
休日の家族ドライブは行楽地の川原でバーベキュー、夏休みの家族キャンプではカレーというのが定番となっています。考えたり迷ったりする必要がないほど手軽です。しかも簡単なわりには美味しいのですから、そう決めておいてもよいでしょう。しかし創意と工夫で野外料理のレパートリーを広げますと、とんでもない美味に出会って幸せをかみしめることができます。
市場で材料を買い込み、川原の焚き火で料理するわけですが、野外料理ならではのものというコンセプトで考えますと、おのずから調理法がみえてきます。
マグロの頭を一斗缶で煮て、兜煮をつくる。中落ちのテッカをそぎ取って食べた後に、骨を焚き火にくべてよく焼き骨ズイを食べる。小麦粉を溶いてフライパンで焼く、タネなしパン。レトルト・パックのご飯をそのまま焼いて、味噌か醤油で味付けした四角で平たい焼きおにぎりがよく合います。
ハイエナのように、競って食べると、より美味しく食べられます。
アウト・ドア & クッキング
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Part 6 道産子でトレールを楽しむ |

乗馬というスポーツは、近年いくどかのブームに助けられて、広く普及してきてきていると言われています。“普及している”と言い切った言い方をしてもらえないのは、現実と願望に若干の開きがあって、その差がいつまでたっても縮まらないためのように思います。 さらに、乗馬はゴルフほどの費用がかからないとしても、若い女性を主にしたブームの担い手たちにとっては、その費用を持続して負担するのが苦手なのかもしれません。 またテニスであれば、うっかり転倒してもヒザかヒジを擦りむく程度ですが、うっかり振り落とされたら擦り傷ではすみません。もっとも、やたらとヘルメット着用を義務づけたり、傷害保険に入らせたりするものだから、不必要な恐れと煩わしい緊張を与えてしまっているようです。 たしかに乗馬に興味をもって乗馬クラブに入会しますと、馬場馬術競技の練習のようなことばかりをやらされるのですから、乗馬の楽しみを知らないうちに興味を失ってしまうのは残念なことですが、仕方ないことのように思います。
乗馬は百鞍(回)乗れば、一人前に乗りこなせるようになると言われています。畳の上の水練と同様に、いくら理屈をこねていても上達するものではありません。身体が覚えるのですから乗り続けるしかないのです。 乗馬クラブによっては、初心者を指導するときに鞍に跨がらせてもアブミに足先をかけさせないようにしています。足をぶらぶらさせて乗っていると、自然にバランスがとれるようになり、股と脚が馬の背と腹に馴染みやすくなるのです。 効率よく上達したいときには、西部劇に出てくるインディアンのように裸馬に跨がるのが一番なのです。 じかに乗ると馬の汗と綿毛がこびりついてしまいますので、四つ折の毛布を乗せただけの馬の背に跨がり、たてがみをにぎって乗っているのが最も効率のよい訓練方法なのです。
鞍に頼ると、その分だけ上達が停滞し、手綱に頼ると馬が首を下げたとき前方に振り落とされることになります。裸馬に乗る方法はいきなり無茶をする気にもならないので、安全な訓練法でもあるのです。しかし二年か三年で、百鞍を乗り切ってしまえば修行は終わりです。 身体が覚えるということは不思議なもので、そのようにと努力するつもりはなくても腰と脚が馬の背と腹に吸いついたようになってしまうのです。そうなりますと、常歩(なみあし)でも速歩(はやあし)でも尻を突き上げられる不快から解放され、駆歩(かけあし)も襲歩(しゅうほ)も夢ではなく、快適な乗馬が約束されます。身体が覚えると気持ちに余裕が出て、乗馬の楽しみがわかるようになります。
乗馬クラブを自動車教習所と考えてみますと、運転免許を取得したのちも教習所の車で所内のコースを走り満足している人はいないように、百鞍以降も馬場で騎乗訓練を続けたのでは物足りなさを感じて足が遠のいても仕方ないでしょう。運転免許を取ったらマイカーを所持するように、自馬を所持することを勧めます。乗馬クラブの自馬会員となって飼育管理をお願いしてしまうのが一般的ですが、飼育経験のある農家に預けるのも一つの方法です。この方法をとりますと、満足できる管理がしてもらえます。
乗馬クラブで使用されている馬のほとんどは、競走馬で知られるサラブレッドです。農耕などに馬が使用されなくなり、競走馬ばかりが繁殖されているためです。 ご存じのように、サラブレッドは流麗な美しさで高級スポーツカーのような機能美を誇っていますが、神経質で繊細で、馬場のように整備されたところ以外では怪我などトラブルを起こしやすいのが難点です。 それに対して道産子や木曽馬はサラブレッドとすべてが正反対で、頑健さと耐久力には定評があり、手がかからず粗食で、よく野生馬のように放牧したままでも成育し、勝手に繁殖もします。 北海道の原野に年の半分は放牧したままで飼育されていますから、多摩川の河川敷の葦原のようなところでもぐんぐん分け入り、葦やオギの茎や葉をバリバリと食べてしまいます。

サラブレッドで河川敷を散歩したならば、擦過傷で治療が必要となるばかりでなく、飛び出したキジに驚いて暴走しかねません。高級スポーツカーに乗ってオフロード走行するのと同じですから、そんな愚かなマネをする人はいないでしょう。 道産子こそオフロード・トレールのためにある馬と言ってよいでしょう。そして道産子によるオフロード・トレールを趣味とする人口に増加がみられるようになりますと、木曽馬の繁殖に弾みがついて絶滅の危惧は回避されることになるでしょう。
百鞍を目標にして、ひたすら騎乗訓練に励んでいるときは、ブリティッシュ・スタイルということになります。騎乗訓練はブリティッシュ鞍が効果的ですし、ウェアもブリティッシュ・スタイルが機能的であるということでは最良です。 しかし、ブーツを脱ぐにもブーツ脱ぎなしではすんなり脱げない面倒臭さと縁を切りたくなります。ヘルメットと同様に、脱いだときの爽快感から二度と縁を持ちたくないと思ってしまいます。初心者のころは気を入れないと怪我をしますが、腕が上がったら気軽に乗りたいものです。 河川敷トレール専用馬に跨るのですから、バッチリきめたりハデ派手しくならないほうがよいでしょう。
さりげなくキメられるのはアーリ−・アメリカンです。下はジーンズにチャップスがベストですが、伸縮性のあるジーンズをはくと着座が楽で、膝がまげやすく、乗り降りが楽です。上はTシャツで、必要に応じてトレーナー、冬季でもダウンのベストで十分です。 馬の上にいると、常に上下の全身運動をしていて、“自家発熱”が全身くまなく暖房をしてくれているからです。 アメリカン・カウボーイのようなテン・ガロン・ハットをかぶりたくなる気持ちはわかりますが、あまりお勧めできません。ビーバーの毛皮でできた本物だったらよいのですが、もどき品ですと使い勝手が悪くてもてあましてしまいます。
野球帽のようなハットをお勧めしますが、どうしてもとこだわる人にはオーストラリアン・シープボーイのハットをお勧めします。軽くて風圧を受けにくい工夫を感じます。乗馬用の雨合羽はクルブシぐらいまでロングで、後ろは深く割れていて、跨って不都合のないデザインとなっています。しかし、チャップスを防水加工しておけばゴルフや魚釣り用の雨衣でも十分です。 なんといっても“さりげなさ”が肝要です。

府中市内を流れる多摩川は、史跡と名刹に縁取られています。鎌倉時代から江戸時代、そして近代の歴史を創った人たちの足跡を見ることができます。 俵藤太秀郷の居宅跡、足利尊氏が中興した高安禅寺、新田義貞の鎌倉攻めの攻防で知られる分倍河原の古戦場跡と、武蔵坊弁慶などの名を残した井戸や橋や坂があちこちにあります。 対岸多摩丘陵の向ノ岡には、桜樹林の中にカヤ葺き屋根の対鴎荘が見えます。三条実美の別荘でお忍びの明治天皇がしばしば訪れ、ノウサギ狩りやアユ漁を楽しんだ所です。隣接した都立桜ヶ丘公園に聖跡記念館があり、京王線の駅名にもその名を残しています。
陣場高原・高尾山系から流れて日野郊外で多摩川に注ぐ浅川は、合流点が洲崎のように突き出して「日野津」と呼ばれていました。江戸湾から海産物などが船で運ばれ、海外へ輸出される生糸や絹布、そして蚕の種紙などが運ばれた、水運の要衝だったのでしょう。いまは馬の膝下ほどの水量しかありませんが、その地形から当時を偲ぶことができます。 近くには生家も墓も残っている、土方歳三の生まれ育ったところです。新選組きっての剣使いで冷徹な粛清者と恐れられた副長が、鼻たれ時代に仲間を引きつれて剣術ごっこをし、地バチの巣を探したり、魚獲りにうち興じたところです。 この先から川底が砂利や石から岩底と変わり、多摩川が下流域から中流域となったことを知らせてくれます。 甲州街道日野橋とJR中央線の鉄橋をくぐり抜けると、慶応2年(1866年)に蜂起した武州世直し一揆の一隊が江川太郎左ヱ門英武の配下の農兵隊にゲーベル銃という近代兵器で殲滅されたところです。

伊豆韮山に日本初の反射炉を造ったことで知られていますが、驚いたことに大村益次郎など薩長の倒幕派よりも先に、幕府の代官である江川が近代兵制を実戦に用いて驚異の戦果を得ていたのです。 秋川の合流点の一帯は、都立滝山自然公園となっていて、多摩川の河川敷であることを忘れてしまいそうなほど、見渡すかぎりに山と林と原野が広がっています。 日の出村を過ぎて福生に入りますと、地酒の蔵元が右岸に並んでいます。大衆地酒の「多摩自慢」と幻の銘酒「嘉泉」の酒造場ですが、片方は近代化された工場で大量生産され、もう一方は昔ながらの製法で、少量限定生産しているという対照的な蔵元です。 嘉泉の田村酒造は、玉川上水開削に多大な財政支援をして歴代玉川上水を個人的に利用する権利を保証され、今も屋敷内に上水を引き込んで大吟醸酒に必要な山田錦を五割以上精米するため水車を回しています。

邸内には寺の本堂のような母屋と見事な庭園が向かい合っていますが、その間に水流が配してあって、時季になるとホタルが飛び交い、河鹿カエルの鳴き声が聞こえます。 当主の半十郎氏は立川の中学へ人力車で通うのに、他人の土地をまったく通らず往復できたと笑顔で語り、出羽酒田の本間家と越後の目黒家、渡辺家と並ぶ多摩屈指の名門の余裕を見せます。 無類の動物好きで、馬で訪ねるといつも着流し姿で出迎えてくれます。もちろん、犬を連れて訪ねても出迎えてくれます。馬の係留場所も十分で長逗留も可能です。 馬は庶民に手のとどかないようなものではありません。クルーザーやヨットの個人所有は負担が大き過ぎますが、車でドライブするように、馬でトレールして欲しいと思います。
E、メール:oak-wood@ba2.so-net.ne.jp
H、アドレス:http://www02.so-net.ne.jp/~oak-wood/
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