牛を食べ尽くす

 

 こちらでは、牛の各部分について簡単な説明をさせていただきます。一口に牛肉といっても様々な部位があり、肉質や脂肪の入り具合、柔らかさ、調理法などが違ってきます。また、捨てるところが無いと言われるくらい、内臓を含め、様々な部分が食されています。大型の精肉店で入手しやすい材料を紹介してみましたので、今後の牛肉の購入・料理にお役立て下されば幸いです。
 また部位の呼称については、日本の場合、統一されていないことが多く、精肉店で商品名として陳列されている呼び方を基本にしています。



 サーロイン

 一般的にステーキで多く使用されています。サシ(脂肪や霜降りの入り具合)が多く、1センチ以上の厚さに切り、焼いて食べるのが向いているようです。
 “サーロイン”と聞くと、とかく高価な肉というイメージが強いですが、輸入牛でしたら比較的安価で、味も満足できる美味しさです。
 薄くスライスした場合は、すき焼きやしゃぶしゃぶ、またハヤシライス、ビーフストロガノフなども美味しく頂けます。ちょっともったいない気がするかもしれませんが、牛丼にしても美味しく、牛丼屋さんのものとはひと味違った牛丼が楽しめます。


 ヒレ(テンダーロイン)

 牛一頭からほんの数パーセントしかとれない肉で、サシが少なく、非常に柔らかい部位です。また筋もほとんどなく、繊維も細かく滑らかで、脂肪分を気にしている方にはお薦めです。
 どちらかというと煮込み料理には向いていないと思います。こちらもやはりステーキが一般的ですが、サシが少なく、物足りなさを感じる方も多いようです。
 2センチ以上で厚く切り、回りにベーコンを巻いたり、チーズなどと組み合わせると風味が増して美味しく頂けます。またサイコロステーキにしても絶品です。
 余談ですが、わたしが一番美味しいと思う部位です。


 バ ラ(カルビ)

 牛のあばら骨周辺の肉で、呼吸をするために常に伸縮している筋肉です。肉と脂肪が何層も重なっており、層の部分によって堅さや肉質が変わってきます。
 焼肉店ではサシの入り具合や柔らかさで特上・上・並・・・など、2〜4種類に分けて提供しています。筋が多くやや堅い部分もあるのですが、もちろん焼肉店ではきれいに筋を取り除き、包丁などを入れ柔らかくしています。
 バラ(カルビ)は、焼肉店の生命線と言える肉でしょう。わたしも焼肉店経営者ですから、美味しい食べ方は焼肉が一番であると考えています。
 ステーキには合いませんが、煮てよし、焼いてよし、様々な調理の方法が考えられます。


 肩ロース

 運動するときに使われる筋肉で、適度な脂肪が入り肉質はやや堅め。旨味成分が豊富で、カレー、シチュー、ポトフなどの煮込み料理に最適です。また、薄くスライスすれば、肉じゃがや炒め物に向いています。挽肉にも向いており、肉汁たっぷりのハンバーグやメンチカツにしても絶品。
 安価で店頭に並んでいますので、一番馴染みのある肉かもしれません。


 もも(ランプ)

 腰に当たる部分でサシが少なく、ヒレ肉に似た肉質です。味もヒレ肉と間違えるほど美味しく、値段も比較的安価に購入できます。焼肉店でのロースやユッケは、通常この部分を使用します。火を通しすぎるとパサパサした感じで、堅くなってしまいます。
 牛刺、タタキ、タルタルステーキといった生食にも向いており、ニンニク醤油、ショウガ醤油、ポン酢、和風ドレッシングなど、様々なソースとの相性も抜群です。他の部分の肉と比べ、タンパク質、鉄分が多いのも特長です。


 テール

 焼肉店ではコムタンとしてお馴染みの尻尾の部分で、肉質は非常に堅いのですが、長時間煮込むことによって、柔らかくなります。最近では薄くスライスし、焼肉として提供しているお店も多くなってきました。
 尾の中心の軟骨には、タンパク質コラーゲンが多く含まれており、加熱することによってゼラチン質になります。中火で6時間ほど煮込めば、箸で簡単にほぐれるほど柔らかくなり、シチュー、カレー、スープに最適です。また煮込んだスープも、さっぱりしていながら濃厚な味で、塩味だけで充分美味しくいただけます。


 レバー

 牛の肝臓部分で、繊維はなく柔らかい肉です。焼肉店では焼くよりも刺身のほうが人気があります。また非常にビタミンが多く、女性の方などは肌がきれいになるという理由から好んで食べる方が多いです。
 新鮮なものほどきれいなあずき色をしており、歯触りも柔らかさの中にコリコリ感があります。生臭くて苦手な方が多いのも事実で、そのような場合は、2〜3時間ほど薄い塩水や牛乳に漬けておけば、さほど気になりません。
 ただ食中毒が多いのも否めません。焼肉店も最近では、夏場は提供しないところが増えています。もちろんご家庭での生食はお薦めいたしません。
 ちなみにわたしの場合、刺身で食べる際のタレですが、ゴマ塩(ゴマ油+塩+いりゴマ)で注文する場合が多いのですが、わがままの言える店ではニンニク醤油にゴマ油を入れたもので食します。風味が増して、レバ刺ファンの方には一度試して頂きたいと思います。


 タン

 牛の舌のことで、根本に近いほど旨味が多く柔らかいのが特徴です。焼肉店の上タンの場合、根本から1/2または1/3の部分を提供しています。
 上タンの場合はやはり、塩焼きにするのが一番で、3〜5ミリほどにスライスし(店頭ではスライスしてあることが多いですが)、塩・コショウを振り、ニンニク風味でレモンをかけて食べます。
 先端から半分くらいの部分は堅く、焼くのには向いていないのですが、やや薄目にスライスし味噌風味のタレで食すと、これはこれで美味しいです。一般的には長時間じっくり煮込み、シチューや煮込みにすることが多いです。また薫製で強めに燻せばスモークタンとして美味しく頂けます。


 胃 袋

 牛には4つの胃があり、第一胃をミノ、第二胃をセンマイ、第三胃をハチノス、第四胃をギアラと呼びます。
 ミノは焼肉店でも定番の肉で、内臓では一番人気のある部分です。
 センマイは刺身として馴染みがありますが、味噌タレでさっと焼いても大変美味しくいただけます。細かくさばく前のセンマイは、一見グロテスクな灰色をしており、また牛が噛み砕いた草が付着していることがありますので、丸のまま入手した場合はよく流水で洗って下さい。
 ハチノスはその名の通り、表面が蜂の巣に似ていることからこう呼ばれています。非常に堅く、生食には向きませんが、圧力鍋で柔らかくし、冷やしてから酢味噌などで頂きます。焼肉店のものは通常このスタイルです。
 ギアラは初めて耳にする方も多いと思います。ちょっと取っ付きにくい名前ですが、焼いて食べるとなかなかの美味です。“赤センマイ”の名前でメニューに載せている店も最近では増えてきました。


 ホルモン

 実はホルモンという名前自体があやふやな存在で、焼肉店では大腸の部分を指します。なかなかかみ切れないのが特長です。日本の焼肉店のルーツは、ホルモン焼店であり、以降、カルビを中心とした焼肉店へと変貌していきました。
 ホルモンはもともと“ほおる(捨てる)もん(物)”というのが語源になっている説があり、この場合は内臓全体を指しているものだと思われます。一昔前に東京で流行った、“ホルモン鍋”も忘れることができません。店によって具がホルモンのみであったり、様々な内臓が入っていたりと、店によって特長を出していました。
 シマチョウという言葉がありますが、表面に縞模様が入っており、肉厚のあるもののほうが美味です。ニンニクをたっぷり効かせた味噌タレとよくマッチします。また味噌風味の煮込みにしても絶品です。


 ハツ

 心臓の部分で、肉質は堅いのですが、繊維が非常に細かいため、歯触りが良く、臭みがあまりありません。またビタミンB1、B2を多く含み、脂肪分の少ないのが特長です。
 煮てよし、焼いてよし、炒めてよしと、内臓のわりには、様々な料理に工夫できます。


 その他

 牛は捨てるところがないくらい様々な部位が食されています。焼肉店でよく見かけるものとして、カシラ(ホホ肉)、ウルテ(軟骨)、ハラミ(横隔膜)、ハツモト(大動脈)などがあります。

  



 Last Update / 1999.6.17