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「ダイオキシン類問題について」

 

  近年、ごみ焼却炉などで発生するダイオキシン類が大きな問題となっています。産業廃棄物焼却炉の密集による汚染が問題となった所沢市三富地区の例、都市ごみ焼却炉による高濃度汚染が問題となった大阪府能勢町や茨城県新利根町の例など、全国各地でダイオキシン類による汚染が明らになっています。また、私たちの身体からも高濃度のダイオキシン類が検出されています。今まで、我が国の対策は先進諸国に比べ大きく遅れていました。
  このような状況の中、国や自治体は、各種基準を定め、対策に乗り出しました。1999年7月、「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定され、2000年1月15日より施行されています。そして、この法律に基づいて、新たな対策がとられています。

  そこで、ダイオキシン類とは何か、何が問題となっているのか、なぜ汚染が進むのか、どのような対策がとられているのか等について、私なりにまとめてみました。


− 目次 −

ダイオキシン類とは何か
ダイオキシン類の毒性評価方法
ダイオキシン類問題の経緯
ダイオキシン類汚染の実態
ダイオキシン類のリスク評価
ごみ焼却炉におけるダイオキシン類の発生機構
我が国における法規制の動き
今後の対策
ダイオキシン類問題に関する資料及びリンク
<参考資料>

ダイオキシン類とは何か

  ダイオキシンは、もともとポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン(PCDD)のことをさしていました。ジオキシンの「ジ」(di)を「ダイ」と呼び、ダイオキシンと略称されてきたのです。化学構造的には、図−1に示すように2つのベンゼン核が2つの酸素によって並列に結ばれ、ベンゼン核に結合している水素の一部が塩素に置換しています。
このダイキシンと似たような性質を示すものに、2つのベンゼン核を一つの酸素にて結んだポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)があります。どちらもくっついている塩素の数と場所により多くの仲間があり、PCDDには75種類の、PCDFには135種類の異性体が存在します。現在、毒性評価の対象となっているのは、PCDDで7種類、PCDFで10種類であり、これらのうち最強の毒性と評価されているのは2,3,7,8-四塩化ジベンゾ−p−ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)と1,2,3,7,8-五塩化ジベンゾ−p−ジオキシン(1,2,3,7,8−PeCDD)です。
また、PCDDやPCDFと類似の構造・毒性をもつものに、ポリ塩化ビフェニール(PCB)特に共平面性(Coplanarity)を持つコプラナーPCB(Co−PCB)があります。
                                            
  従来、先進諸国では、PCDDとPCDFを合わせ「ダイオキシン類」として評価してきましたが、最近、Co−PCBもダイオキシン類に含むべきだとの意見が強くなり、WHO(世界保健機構)や我が国ではダイオキシン類とは、PCDD、PCDF及びコプラナーPCBの総称である。としています。

 図−1 PCDD、PCDFおよびPCBの構造式

 

ダイオキシン類の毒性評価方法

  毒性評価の対象になっているダイオキシン類には、いずれも2,3,7,8-TCDDの毒性を1としたときの相対毒性、即ち2,3,7,8-TCDD毒性等価係数(TEF)が定められています。そして、各化合物の実測濃度にTEFを掛けた値の総和を2,3,7,8-TCDD毒性等価量(TEQ)とし、このTEQを用いてダイオキシン類の毒性評価が行なわれています。
PCDD及びPCDFのTEFとしては、従来、国際毒性等価係数(I−TEF)が用いられてきましたが、1997年、WHO(世界保健機構)より12種類のコプラナーPCBについての値も含む新しいTEFの値が提案されました。我が国では、ダイオキシン類対策特別措置法の制定によりこの新しいWHO−TEFを採用しています。
(TEFの値については、こちらを参照して下さい。)

 

ダイオキシン類問題の経緯

  ダイオキシン類が問題となったのは、ベトナム戦争での枯葉剤の影響が問題となった1970年代です。我が国では、1983年都市ごみ焼却炉の飛灰の中にダイオキシン類が検出されてから問題になり、1990年都市ごみ焼却炉に対する「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」が制定されました。その後、ダイオキシン類の毒性評価が進み、1996年後半から都市ごみ焼却炉の実態調査が行なわれるとともに、1997年1月上記ガイドラインの改訂が行なわれました。
そして、政府においてダイオキシン類排出抑制のための法規制の検討が行われ、1997年8月、大気汚染防止法施行令及び廃棄物処理法施行令・施行規則の改正が行われました。
  その後、世論が高まる中で、政府は更なる対策を求められ、1999年3月、4年以内に全国のダイオキシン類の排出量を1997年比で約9割削減することを掲げた「ダイオキシン対策推進基本指針」を策定しました。そして、今まで複数の法律にまたがっていたダイオキシン対策を一本化し、対策を更に推進するため、与野党共同にて、国会に「ダイオキシン類対策特別措置法案」が提出されました。この法律は、1999年7月12日、全党の賛成により可決・成立し、2000年1月15日より施行されています。
(詳しい経緯については、こちらを参照して下さい。)

表−1 ダイオキシン問題の経緯

1962-1971年 米国がベトナム戦争において散布した枯葉剤の中に副生成物としてダイオキシン類が含まれており、癌、流産等が多発するとともに奇形児誕生が大きな問題に。
1976年 イタリア・セベソの農薬工場で爆発事故が発生。ダイオキシン類が飛散し、鶏・猫等が死亡。
1983年  日本で都市ごみ焼却炉の飛灰の中よりダイオキシン類を検出。
1990年 厚生省が都市ごみ焼却炉に対する「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を作成し、通知。
1996年 6月 厚生省がダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)として10pg-TEQ/kg体重/日を提案。
10月 厚生省がごみ処理のダイオキシン類削減対策中間報告を発表し、80ng-TEQ/Nm3を超える炉に対して緊急対策を指示。
12月 環境庁がダイオキシンリスク評価検討を発表、健康リスク評価指針値として5pg-TEQ/kg体重/日を設定。
1997年 1月 厚生省が上記ガイドラインを改訂し、新ガイドラインを設定。
8月 環境庁が、大気汚染防止法の指定物質にダイオキシン類を指定し、抑制基準を制定。
厚生省が、廃棄物処理法施行令及び施行規則を改正し、廃棄物焼却施設の構造・維持管理基準を強化。
1998年 4月 環境庁が、大気汚染防止法施行規則等を改正し、廃棄物焼却炉のばいじんの排出規制を強化。

5月

WHO(世界保健機構)がダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)を、従来の10pg-TEQ/kg体重/日よりコプラナーPCBを含んで1〜4pg-TEQ/kg体重/日に変更。
1999年 3月 政府が、4年以内に全国のダイオキシン類の排出量を1997年比で約9割削減することを掲げた「ダイオキシン対策推進基本指針」を策定。

6月

ダイオキシン対策閣僚会議が、耐容一日摂取量(TDI)をコプラナーPCBを含んで4pg-TEQ/kg体重/日とすることを決定。

7月

与野党共同提出の「ダイオキシン類対策特別措置法案」が国会にて可決・成立。
2000年 1月 「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行。
大気・水質・土壌についての環境基準が設定され、大気及び水質の排出基準を強化・設定。

 

ダイオキシン類汚染の実態

1.ダイオキシン類の毒性及び有害性

(1)急性毒性:

  最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDを用いて動物実験が行われており、強い急性毒性があることが分かっています。ダイオキシンは、地上最強の猛毒と言われることがありますが、天然の毒物には、ボツリヌス菌や破傷風菌の毒素などダイオキシンよりも強い毒性を持ったものがあります。しかし、人工物質としては、最も強い毒性を持つ物質と言えます。
(2,3,7,8-四塩化ジベンゾ−p−ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)及び2,3,7,8-四塩化ジベンゾフラン(2,3,7,8-TCDF)と他の毒性物質との毒性比較を、こちらに紹介します。)

(2)慢性毒性:

主に肝臓と脂肪組織に蓄積し、慢性的に様々な障害を起こします。
あらわれる症状は、体重減少(消耗性症候群)、胸線萎縮、肝臓代謝障害、心筋障害、性ホルモンや甲状腺ホルモン代謝並びにコレステロール等脂質代謝への影響、皮膚障害(クロロアクネ)、水腫等であり、遅延致死性があります。
また、最近は生殖障害(妊娠率の低下、未熟児出生、子宮内膜症等)が大きな問題になっており、環境ホルモン様物質としてクローズアップされています。
発癌性についても認められており、軟組織肉腫の原因になるといわれています。
2,3,7,8-TCDDの無毒性量(NOAEL)は、現時点では1ng/kg体重/日と判断されていますが、猿の生殖障害の実験結果を考慮すると更に低い値となるともいわれています。…ng(ナノグラム)とは10億分の1グラムのことです。

 

2.ダイオキシン類の排出状況

  従来、我が国におけるダイオキシン類の排出量に関する調査は、都市ごみ焼却施設を除いて殆ど行なわれていませんでした。しかしながら、1999年3月にまとめられた「ダイオキシン対策推進基本指針」にてダイオキシン類の排出状況を整備することが決定され、1999年6月、環境庁は我が国の排出量を発表しました。そして、ダイオキシン類対策特別措置法の施行により毎年排出状況が整備されることとなりました。表−2に2005年11月に発表された排出状況(コプラナーPCBを含めたWHO-TEF(1998)を用いた集計)を示します。
 2005年6月に削減計画が変更され、「2010年の排出総量を2003年比で約15%削減する」との新たな目標が設定されていますが、2004年の排出総量は2003年比で約10%削減されています。
                                                                                       

表−2 我が国におけるダイオキシン類排出量(g-TEQ/年)

発生源 排出量
1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年

廃棄物処理分野

一般廃棄物焼却施設 5,000 1,550 1,350 1,019 812 370 71 64
産業廃棄物焼却施設 1,505 1,105 695 558 535 266 75 70
小型廃棄物焼却炉等 700〜1,153 700〜1,153 517〜848 544〜675 342〜454 112〜135 73〜98 78〜97

産業分野

製鋼用電気炉 229 140 142 131 95.3 94.8 80.3 64.0
鉄鋼業焼結施設 135 114 101 69.8 65.0 51.1 35.7 30.4
亜鉛回収施設 47.4 25.4 21.8 26.5 9.2 14.7 5.5 8.1
アルミニウム合金製造施設 31.0 28.8 23.1 22.2 19.7 16.3 17.4 13.0
銅回収施設 0.053 0.053 0.048 0.038 0.013 0.088 - -
パルプ製造施設(漂白工程) 0.74 0.71 0.74 0.73 0.90 0.65 0.46 0.62
その他の施設 26.5 25.6 17.8 17.9 15.3 11.0 9.9 8.7

その他

火葬場 2.1〜4.6 2.2〜4.8 2.2〜4.9 2.2〜4.8 2.2〜4.9 2.3〜5.1 2.3〜5.1 2.3〜5.1
たばこの煙 0.1〜0.2 0.1〜0.2 0.1〜0.2 0.1〜0.2 0.1〜0.2 0.1〜0.2 0.1〜0.2 0.1〜0.2
自動車排出ガス 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.3
下水道週末処理施設 1.1 1.1 1.1 1.1 0.99 0.51 0.54 0.36
最終処分場 0.093 0.093 0.093 0.056 0.027 0.021 0.020 0.018

合 計
(うち、水への排出)

7,680〜8,135
(12.8)
3,695〜4,151
(12.3)
2,874〜3,208
(12.4)
2,394〜2,527
(8.7)
1,899〜2,013
(4.4)
941〜967
(2.6)
372〜400
(2.1)
341〜363
(2.0)

環境省発表(2005年11月25日)より

表−3 各国の大気へのダイオキシン類排出量(g-TEQ/年)

発生源 アメリカ ドイツ オランダ イギリス スウェーデン EU
1995年 1994年 1991年 1994年 1993年 1993-5年
廃棄物焼却 648.5〜3,998.2 34.6 402.0 482.9〜719.4 3.4〜3.7 2,510.9
冶金プロセス 177.1〜1,767.5 272.6 30.0 39〜132 6.4〜24.1 1,232.3
発電・エネルギー生成 68.3〜455 18.6 16.1 32.6〜134.3 4.3〜20.7 996.4
その他の高温生成 55.3〜547.8 2.4 3.0 1.9〜14.9 2.9〜6 20.4
管理不十分な燃焼 64.5〜645 0.3 0.1 2.0〜17.5 2.8〜30 379.8
化学物質使用製造業   0.1 0.5 0.1〜0.3 1  
交通 12.6〜126 4.8 7.6 1〜45 0.9〜2.9 111.1
木材防腐剤(揮発分)     25 0.8   381.4
その他   0.5        
合 計 1,026〜7,541 334 484 560〜1,064 22〜88 5,749
「ダイオキシン排出抑制対策検討会第二次報告」(1999年6月)より

 

(参考) 「ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)について」(環境省報道発表資料、05.11.25)

 

3.ダイオキシン類の環境汚染

 ダイオキシン類の汚染状況は、ダイオキシン類特別措置法に基づき常時監視・報告されることとなっています。2005年11月に環境省から発表された2004年度及び年度別(1997〜2004年度)のダイオキシン類環境調査結果は、表−4(1)(2)のとおりでした。
    …pg(ピコグラム)とは1兆分の1グラムのことです。
 過去における環境媒体ごとの調査結果については、こちらを参照してください。

表−4(1) 我が国の2004年度ダイオキシン類環境調査結果

単位:大気 pg-TEQ/m3、水質 pg-TEQ/l、底質 pg-TEQ/g、土壌 pg-TEQ/g

環境媒体 調査種類/地域区分 地点数 検体数 環境基準
超過地点数

調査結果

平均値 最小値 最大値
大気 一般環境 694 2,654 0 0.058 0.0083 0.34
発生源周辺 161 572 0 0.063 0.0091 0.55
沿道 37 138 0 0.055 0.014 0.13
全体 892 3,364 0 0.059 0.0083 0.55
公共用水域 水質 河川 1,591 2,104 40 0.25 0.011 4.6
湖沼 100 118 3 0.17 0.011 2.4
海域 366 405 0 0.095 0.0069 0.88
全体 2,057 2,627 43 0.22 0.0069 4.6
底質 河川 1,336 1,462 5 7.1 0.050 1,300
湖沼 90 92 0 9.4 0.24 47
海域 314 316 0 9.0 0.065 150
全体 1,740 1,870 5 7.5 0.050 1,300
地下水質   1,101 1,104 1 0.063 0.0079 3.2
土壌 一般環境把握調査 1,983 1,983 0 2.2 0 250
発生源周辺状況把握調査 635 635 0 6.0 0 250
合計 2,618 2,618 0 3.1 0 250

表−4(2) 我が国の年度別ダイオキシン類環境調査結果

単位:大気 pg-TEQ/m3、水質 pg-TEQ/l、底質 pg-TEQ/g、土壌 pg-TEQ/g

環境媒体 調査種類/地域区分 '97年度 '98年度 '99年度
2000年度 '01年度 '02年度 '03年度 '04年度
大気 一般環境 平均値 0.55 0.23 0.18 0.14 0.14 0.093 0.064 0.058

(地点数)

(63) (381) (353) (705) (762) (731) (691) (694)
発生源周辺 平均値 0.58 0.20 0.18 0.15 0.13 0.092 0.078 0.063

(地点数)

(2) (61) (96) (189) (190) (206) (188) (161)
沿道 平均値 0.47 0.19 0.23 0.17 0.16 0.091 0.076 0.055

(地点数)

(3) (16) (14) (26) (27) (29) (34) (37)
全体 平均値 0.55 0.23 0.18 0.15 0.13 0.093 0.068 0.059
濃度範囲 0.010〜1.4 0.0〜0.96 0.0065〜1.1 0.0073〜1.0 0.0090〜1.7 0.0066〜0.84 0.0066〜0.72 0.0083〜0.55

(地点数)

(68) (458) (463) (920) (979) (966) (913) (892)
公共用水域 水質 河川 平均値 - - 0.40 0.36 0.28 0.29 0.27 0.25

(地点数)

- - (186) (1,612) (1,674) (1,663) (1,615) (1,591)
湖沼 平均値 - - 0.25 0.22 0.21 0.18 0.20 0.17

(地点数)

- - (63) (104) (95) (102) (99) (100)
海域 平均値 - - 0.14 0.13 0.13 0.092 0.094 0.095

(地点数)

- - (319) (400) (444) (442) (412) (366)
全体 平均値 - 0.50 0.24 0.31 0.25 0.24 0.24 0.22
濃度範囲 - 0.065〜13 0.054〜14 0.012〜48 0.0028〜27 0.010〜2.7 0.020〜11 0.0069〜4.6

(地点数)

- (204) (568) (2,116) (2,213) (2,207) (2,126) (2,057)
底質 河川 平均値 - - 5.0 9.2 7.3 8.5 6.3 7.1

(地点数)

- - (171) (1,367) (1,360) (1,338) (1,377) (1,336)
湖沼 平均値 - - 9.8 11 18 13 11 9.4

(地点数)

- - (52) (102) (85) (86) (89) (90)
海域 平均値 - - 4.9 11 11 14 11 9.0

(地点数)

- - (319) (367) (368) (360) (359) (314)
全体 平均値 - 8.3 5.4 9.6 8.5 9.8 7.4 7.5
濃度範囲 - 0.10〜260 0.066〜230 0.0011〜1,400 0.012〜540 0.0087〜640 0.057〜420 0.050〜1,300

(地点数)

- (205) (542) (1,836) (1,813) (1,784) (1,825) (1,740)
地下水質   平均値 - 0.17 0.096 0.092 0.074 0.066 0.059 0.063
濃度範囲 - 0.046〜5.5 0.062〜0.55 0.00081〜0.89 0.00020〜0.92 0.011〜2.0 0.00032〜0.67 0.0079〜3.2

(地点数)

- (188) (296) (1,479) (1,473) (1,310) (1,200) (1,101)
土壌 一般環境 平均値 - - - 4.6 3.2 3.4 2.6 2.2

(地点数)

- - - (1,942) (2,313) (2,282) (2,128) (1,983)
発生源周辺 平均値 - - - 11 11 4.7 8.4 6.0

(地点数)

- - - (1,089) (1,422) (1,018) (931) (635)
合計 平均値 - 6.5 - 6.9 6.2 3.8 4.4 3.1
濃度範囲 - 0.0015〜61 - 0〜1,200 0〜4,600 0〜250 0〜1,400 0〜250

(地点数)

- (286) - (3,031) (3,735) (3,300) (3,059) (2,618)

表−5 諸外国における大気中の(PCDD+PCDF)濃度

国名 地域 濃度(pg-TEQ/m3)
アメリカ 都市域 1989 0.08-0.18
アメリカ 農村域 1989 0.05
ドイツ 工業地域 1993 0.15
ドイツ 都市域 1994 0.07-0.35
ドイツ 農村域 1994 0.03-0.07
イギリス 都市域 1993 0.04-0.10
スウエーデン 都市域 1991 0.024
スウエーデン 郊外域 1991 0.013
新ガイドライン添付資料(1997年1月)より

 

(参考) 「平成16年度ダイオキシン類に係る環境調査結果について」(環境省報道発表資料、05.11.25)

 

ダイオキシン類のリスク評価

1.耐容一日摂取量(TDI)

 各国におけるダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)は、表−6に示す通り大きく異なっています。日本からイタリアまでの国では、ダイオキシン類は発癌物質ではなく、その作用に閾値ありと見なしてTDIを算出しています。一方、米国カルフォルニア州や食品医薬品庁では、ダイオキシン類は発癌物質であり、その作用に閾値なしとしてTDIを設定しています。
WHO(世界保健機構)は、従来10pg-TEQ/kg体重/日の値を採用していましたが、1998年5月29日の専門家会議にて見直しを行い、コプラナーPCBを含め1〜4pg-TEQ/kg体重/日へと変更しました。

 
我が国でもこの変更を基に検討が行われ、1999年6月、ダイオキシン対策閣僚会議にて、従来の10pg-TEQ/kg体重/日の値を見直し、コプラナーPCBを含んで4pg-TEQ/kg体重/日とするよう決定されました。そして、その後成立したダイオキシン類対策特別措置法にて、この値が法制化されました。

表−6 各国におけるダイオキシン類の耐容一日摂取量

国名または機関名 耐容一日摂取量(TDI)(pg-TEQ/kg体重/日)
日本 4 (コプラナーPCBを含む)
カナダ 10
WHO欧州地域事務局 1〜4(目標値:1未満) (コプラナーPCBを含む)
オランダ 2(コプラナーPCBを含む)
スウエーデン 2(コプラナーPCBを含む)
ドイツ 2(コプラナーPCBを含む)
イギリス 2(コプラナーPCBを含む)
イタリア 2(コプラナーPCBを含む)
米国環境保護庁 1(コプラナーPCBを含む)
米国カルフォルニア州 0.007
米国食品医薬品庁 0.06
オランダからイタリアの値は14pg-TEQ/kg/週を一日当たりに換算
摂南大学薬学部・宮田教授資料(2002年)より

 

2.暴露評価

 我が国の大都市におけるダイオキシン類摂取量の推定例を表−7に示します。
 コプラナーPCBを含めると98%が食事経由であり、食事経由のうち約60%が魚介類と報告されています。

表−7 大都市におけるダイオキシン類の摂取量

媒 体 一日摂取量(pg-TEQ/kg体重/日) 摂取割合(%)
PCDD+PCDF Co−PCB 合計
食 事 3.50 8.72 12.22 98.12
大 気 0.18 0.0078 0.1878 1.51
0.00013 0.0013 0.0014 0.01
土 壌 0.0448 不明 0.0448 0.36
3.72 8.73 12.45 100.00
摂南大学薬学部・宮田教授資料(1997年)より
                                                                                                    
 また、環境庁・ダイオキシンリスク評価検討会、環境庁中央環境審議会及び厚生省生活環境審議会・食品衛生調査会、環境省総合環境政策局、並びに厚生労働省食品保健部による「一般的な生活環境における摂取量の推定」及び「平均的な摂取量」を表−8〜表−11に示します。これらの報告では、上記値より低い値となっています。

表−8 一般的な生活環境下での(PCDD+PCDF)の摂取量

項 目 大都市地域
(pg-TEQ/kg体重/日)
中小都市地域
(pg-TEQ/kg体重/日)
バックグラウンド地域
(pg-TEQ/kg体重/日)
食 物 0.26〜3.26 0.26〜3.26 0.26〜3.26
大 気 0.18 0.15 0.02
0.001 0.001 0.001
土 壌 0.084 0.084 0.008
0.52〜3.53 0.50〜3.50 0.29〜3.29

環境庁・ダイオキシンリスク評価検討会報告書(1997年5月)より

表−9 平均的な(PCDD+PCDF+Co−PCB)の摂取量

項 目 PCDD+PCDF
(pg-TEQ/kg体重/日)
Co−PCB
(pg-TEQ/kg体重/日)
合 計
(pg-TEQ/kg体重/日)
食 物 0.96 1.45 2.41
大 気 0.17 - 0.17
土 壌 0.02 - 0.02
1.15 1.45 2.60

環境庁中央環境審議会及び厚生省生活環境審議会・食品衛生調査会報告書(1999年6月)より

表−10 ダイオキシン類の平均摂取量

項 目 摂取量 (pg-TEQ/kg体重/日)
食 物 1.45
大 気 0.042
土 壌 0.0095
1.50

環境省総合環境政策局環境保健部報告書(2002年12月)より

表−11 ダイオキシン類の食品からの一日摂取量の全国平均年次推移

'98年 '99年 2000年 '01年 '02年 '03年 '04年
摂取量 (pg-TEQ/kg体重/日) 2.01
(1.22〜2.77)
2.25
(1.19〜7.01)
1.45
(0.84〜2.01)
1.63
(0.67〜3.40)
1.49
(0.57〜3.40)
1.33
(0.58〜3.05)
1.41
(0.48〜2.93)

厚生労働省食品安全部報告(2006年2月)より

 

 一方、母乳経由の乳児のダイオキシン類摂取量が、67〜149pg-TEQ/kg体重/日であるとの報告(摂南大学薬学部・宮田教授:1997年)もあり、今後母乳・食品などの汚染状況や健康影響について早急に調査することが求められます。
                                                                                            
(参考) 「環境庁・ダイオキシン排出抑制対策検討会及びダイオキシンリスク評価検討会の報告書について」(環境庁報道発表資料、97.5.7)
「人における暴露実態調査の結果について」(環境省総合環境政策局環境保健部発表資料、02.12.24)
「平成16年度食品からのダイオキシン類の一日摂取量調査等の調査結果について」(厚生労働省報道発表資料、06.2.9)

 

ごみ焼却炉におけるダイオキシン類の発生機構

 都市ごみの焼却炉においては、燃焼過程での合成とともに、排ガス中で再合成、即ち300℃付近の排ガス中で未燃有機物が飛灰表面で塩化銅等の触媒作用により塩素分と反応してダイオキシン類を生成するといわれています。
間欠運転炉の場合、定常運転時に比べてスタート、ストップ時や埋火時の排出濃度が大きくなっています。

 

我が国における法規制の動き

.ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドラインの改定

 都市ごみ焼却炉から排出されるダイオキシン類が周辺住民に不安を与え、社会問題化しているなかで、厚生省は「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」を設置して検討を行いました。そして、1997年1月、当面の耐容一日摂取量(TDI)の10pg-TEQ/kg体重/日を評価指針として、ごみ処理に係る「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」の改定を行いました。

 

2.大気汚染防止法施行令や廃棄物処理法施行令等の改正

 環境庁は、1997年8月、「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令」及び「指定物質抑制基準を定める告示」を制定しました。この改正により、一般廃棄物及び産業廃棄物の焼却炉並びに製鋼用電気炉が法規制を受けることになりました。(この規定は、ダイオキシン類対策特別措置法の制定により2001年1月15日より廃止されました。)
また、厚生省は、大気汚染防止法施行令の改正に合わせ、同じく1997年8月、廃棄物焼却施設の構造・維持管理基準の見直しや許可対象範囲の拡大等を行うため、「廃棄物処理法施行令及び施行規則の改正」を行いました。
 更に、1998年4月、環境庁は、排ガス中のダイオキシン類の多くがばいじんに吸着されているため、主要な発生源である廃棄物焼却施設に対する排ガス中のばいじんの規制強化もダイオキシン類の低減に有効であり、早急に対応する必要があるとの中央環境審議会答申に応え、廃棄物焼却炉からのばいじんの排出規制を強化しました。具体的には、大気汚染防止法施行規則等を改正し、廃棄物焼却施設炉に係るばいじんの排出基準を改正しました。
                         
 大気汚染防止法施行令や廃棄物処理法施行令等の改正の詳しい内容については、こちらを参照して下さい。

 

3.ダイオキシン類対策特別措置法の制定

 上述のように、今までダイオキシン類の規制は複数の法律により行われてきました。
しかしながら、ダイオキシン類対策を効率よく進めるには、総合的な施策・規制が必要となります。そこで、ダイオキシン類削減対策を一本化し、更に規制を強化するため、「ダイオキシン類対策特別措置法案」が作成され、国会に提出されました。この法案は、1999年7月12日、全党の賛成により可決・成立し、2000年1月15日より施行されています。
この法律の内容は、次の通りであり、ダイオキシン類の総量規制を取り入れるなど世界でも例のない画期的な内容となっています。しかしながら、食品の安全基準づくり等については、依然、政府や与党の反対が強く、検討事項とされています。
 
ダイオキシン類対策特別措置法の内容)
1. 耐容一日摂取量・環境基準の制定
(1) 耐容一日摂取量:4pg-TEQ/kg体重/日とする。
(2) 環境基準:
大気 0.6pg-TEQ/m3以下とする。
水質 1 pg-TEQ/l以下とする。
土壌 1,000pg-TEQ/g以下とする。
底質 150pg-TEQ/g以下とする。(2002年9月1日追加施行)
2. 排出の規制
(1) 排出基準:排出ガス及び排出水につき、施設の種類・構造に応じて総理府令で定める。(表−10及び表−11の通り。)
(2) 総量規制:排出基準のみでは環境基準の確保が困難であると政令で指定された地域について、知事が総量削減計画を作成し、総量規制基準を定める。
(3) ばいじん処理基準:廃棄物焼却炉のばいじん及びもえがらの処理基準(処分する場合の基準)を、3ng-TEQ/gとする。
3.汚染状況の監視、調査測定
4.汚染された土壌の処理
5.罰則:施設の計画変更命令・改善命令への違反者に対しては、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金

表−12 大気基準適用施設及び大気排出基準値(ng-TEQ/m3N)

種 類

施設規模

新設施設基準

既 設 施 設 基 準

2000.1-2001.1

2001.1-2002.11

2002.12-

廃棄物焼却炉 4t/h以上

0.1

基準の適用を猶予

80

1

2t/h-4t/h

1

5

50kg/h-2t/h

5

10

銑鉄製造用燒結炉

0.1

2

1

製鋼用電気炉

0.5

20

5

亜鉛回収施設

1

40

10

アルミニウム合金製造施設

1

20

5

表−13 水質基準対象施設及び水質排出基準値(pg-TEQ/l)

種  類

新設施設基準

既 設 施 設 基 準
2000.1-2001.1

2001.1-2003.1

2003.1-
クラフトパルプ又はサルファイトパルプ製造用の塩素系漂白施設 10 基準の適用を猶予 10 10
塩化ビニルモノマー製造用の二塩化エチレン洗浄施設 20 10
アルミニウム・同合金製造用の溶解炉、乾燥炉又は培焼炉の廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設
廃棄物焼却炉の廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設、灰の貯留施設(燃焼能力50kg/h以上) 50 10
PCB分解施設及びPCB洗浄施設 10 10
上記の施設から排出される下水を処理する下水道終末処理施設
上記の施設を設置する事業場から排出される水の処理施設

 

種  類

2001.12.1追加施行

硫酸カリウム製造施設のうち、廃ガス洗浄施設 10

カプロラクタム製造施設(塩化ニトロシルを使用するものに限る。)のうち、硫酸濃縮施設・シクロヘキサン分離施設・廃ガス洗浄施設

クロロベンゼン又はジクロロベンゼン製造施設のうち、水洗施設・廃ガス洗浄施設

種  類

2002.8.15追加施行
カーバイド法アセチレン製造用のアセチレン洗浄施設 10
アルミナ繊維製造施設のうち、廃ガス洗浄施設

8・18−ジクロロ−5・15−ジエチル−5・15−ジヒドロジインドロ[3・2−b:3′・2′−m]トリフェノジオキサジン(別名ジオキサジンバイオレット)製造施設のうち、ニトロ化誘導体分離施設及び還元誘導体分離施設・ニトロ化誘導体洗浄施設及び還元誘導体洗浄施設・ジオキサジンバイオレット洗浄施設・熱風乾燥施設

亜鉛の回収施設(製鋼用電気炉から発生するばいじんであって、集じん機により集められたものからの亜鉛の回収に限る。)のうち、精製施設・廃ガス洗浄施設・湿式集じん施設

 

今後の対策

 今後は、まず「ダイオキシン類対策特別措置法」の完全実施が求められます。その上で、更に十分な実態調査や食品汚染等に対する基準づくりが必要となります。
しかしながら、ダイオキシン問題を解決する上で、最も重要であり最も簡単なことは、私たち一人一人がごみを減らすということです。大量消費・大量廃棄社会からの脱却こそがダイオキシン類問題の解決のキーポイントなのです。
 
(今後の対応策)
1.十分な実態調査
我が国におけるダイオキシン類の汚染実態や人に対する影響等については、まだ十分に分かっていないのが実状です。早急に十分な実態調査を行っていくことが求められます。
2.発生抑制対策
ダイオキシン発生の原因についても、まだ十分には分かっていませんが、大きな原因としてごみの焼却が考えられています。そこで、まず「ごみを減らすこと」が必要となります。不要なものは買わない・もらわない、再利用できるものは再利用する、いらなくなったものは分別し、リサイクルできるものはリサイクルするといったことが求められます。
そして、ごみ焼却にあたっては、十分な排出抑制対策を施した施設で、十分な管理のもと処理することが必要となります。
3.ダイオキシン類の分解
一部の地域では既に高濃度の土壌汚染が報告されています。今後汚染地域の浄化をどのように進めていくか、早急に検討していくことが必要となります。
4.個人レベルでの対策
加齢とともに体内のダイオキシン濃度は高くなっているとの報告があり、「ダイオキシンで汚染された食品は避ける」、「体内に蓄積されたダイオキシンはなるべく早く排出させる」といったことが必要となります。ダイオキシン排出のためには、食物繊維や葉緑素を含んだ食品の摂取が効果的とのことです。

 

(参考) 「ダイオキシン対策について」(環境省ホームページ内)
「ダイオキシン類2005(関係各省庁共通パンフレット)」(環境省ホームページ内)

 

ダイオキシン類問題に関する資料及びリンク

1.「ダイオキシン100の知識」の紹介

 1998年8月5日、私も一部を執筆しました「ダイオキシン100の知識」と題する本が東京書籍より出版されました。この本は、パソコン通信で情報交換をしながら作った本で、一般の人向けにダイオキシン問題をわかりやすくつたえるため100のテーマを取り上げ、やさしく解説しています。執筆者は、化学の研究者から中高教員、会社員、公務員、主婦と幅広く、一般の人が一般の人向けに作った本といえます。また、この本には参考資料や関連サイトも数多く紹介されていますので、更に詳しく知りたい人にとっても参考になると思います。
 この本の紹介や100テーマの一覧については、こちらも参照して下さい。

 

2.トピックス

 ダイオキシン類問題に関する資料やリンクは、上記「ダイオキシン100の知識」の巻末に掲載されています。
 そこで、上記の本発行後の主要な話題について、次に紹介します。

(1)所沢産野菜のダイオキシン汚染問題について

 1999年2月1日のテレビ朝日・ニュースステーションの報道により、所沢産野菜のダイオキシン汚染が大きな話題となりました。結局、高濃度汚染と報告されたサンプルは野菜(ほうれん草)ではなく、お茶であり、しかもお茶よりの摂取量は微量で、人体への影響はないとの報告がなされました。
 この問題についての、サイトを次に紹介します。
   
所沢、野菜報道問題(武田尚志さん)

 

(2)藤沢市引地川におけるダイオキシン流出問題について

 2000年3月、藤沢市が引地川に流れ込む排水溝を調査したところ、荏原製作所藤沢工場からの排水溝で1リットルあたり3,200pg及び8,100pgと今までに例のない高濃度のダイオキシン類が検出されたと発表しました。そして、藤沢市・神奈川県が工場に立ち入り検査し、原因は、工場内にある焼却炉の洗煙排水が工事ミスにて雨水配管に接続されていたことによることが判明しました。また、その後の一連の調査結果から他にも排水系統の誤接続が認められたほか、総合排水処理施設の能力不足などの排水管理上の問題があることが判明しました。
 当初問題となった焼却炉は停止されていますが、同社に対しては、5月、神奈川県及び藤沢市から「排水処理施設を改善・整備すること」、「排水及び廃棄物の管理体制を抜本的に見直し、改善・強化すること」といった勧告がなされました。
 このの問題についての、サイトを紹介します。
   
第3回引地川水系ダイオキシン汚染事件対策連絡調整会議の結果について(環境庁、2000.05.12)
引地川水系ダイオキシン汚染事件への対応(環境庁、2000.05.31)

 


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