Minamata Kyoritsu Hospital

水俣協立病院の機能と役割

はじめに

水俣協立病院(前身水俣診療所)が開設されて35年が経過しました。水俣市をはじめとする不知火海沿岸住民が水俣病に苦しむと同時に生活苦・差別のなかで、「わたしたちの病気を診てくれる病院がほしい」という水俣病患者たちの切望に応えて、その解決と救済のために、水俣診療所が建設されました。そして、慢患をはじめとする一般内科と水俣病を医療活動の2本柱として地域住民の医療を展開してきました。1995年、これまで水俣病問題は水俣病第3次訴訟の和解で解決したと考えていましたが、2004年の水俣病関西訴訟最高裁判決後、水俣病の申請者が再び増えはじめ、まだ隠された患者がいることが再確認されました。わたしたちは、水俣病の完全解決をめざして水俣協立病院が地域で果たす役割を明らかにし、今後の医療活動を展開していきます。

1.地域の沿革

水俣・芦北地域は不知火海に面した海岸や九州山脈の起伏に富んだ地形と温暖な気候の地域であるとともに、水俣病という世界最大の公害に犯された地域でもあります。その原因物質である産業廃棄物が埋められた水俣市の住民は2次汚染が起きないかという危惧をいだきながら日々の生活をおくっていますし、環境復元の都市として住民が環境衛生に取り組んでいる街でもあります。

2.人口構成

水俣・芦北地域の人口は、2000年国勢調査によると59,261人で、県人口1,858,344人の3.2%を占めています。

年齢3区分

0〜14歳

15〜64歳

65歳以上

比   率

14.8%

57.9%

27.3%

                         (熊本県の老人人口比21.3%)

3.人口動態

@水俣・芦北地域の人口は、1955年の人口95,849人(県人口比5.0%)を最高に年々減少しています。2010年の予測人口は、51,683人で今後とも人口の減少が予測されます。また、今後はますます高齢者人口比が増加するものと予想されています。
世帯数は2000年の国勢調査で20,650世帯、一世帯あたりの人員は2.9人で、1995年の3.3人と比べて減少しています。水俣市は2.64人で県下6番目に少ない状況にあります。

A熊本県の平均寿命は、生活水準の向上や医療技術の進歩により大幅に伸びており、全国でもトップクラスの長寿県となっていますが、水俣・芦北管内でも同様な傾向にあります。

水俣市

田浦町

芦北町

津奈木街

県平均

男性

77.3

76.0

76.0

77.2

77.3

女性

84.4

83.1

83.0

83.3

84.4

B出生・死亡
2000年の水俣・芦北地域の出生数は464人で、人口比7.8人(/千人対)となっています。(県平均は9.3人)
2000年の死亡数は703人で、人口比11.9人(/千人対)となっています。(県平均8.6人)*死亡数÷出生数=1.51倍

C主要死因
2000年度の主要死因は、悪性新生物が351.0(人/10万人対)、心疾患173.8人、脳血管疾患146.8人、肺炎気管支炎108.0人、不慮の事故及び有害作用60.7人で1994年以降の主要死因には変化はありません。

D転入・転出
 2000年の転入率は358人(/人口1万人対)、転出率は411人と転出が転入を上回っています。この傾向は1960年から続いています。*転出率÷転入率=1.14倍

4.医療状況
@水俣・芦北地域の1999年10月1日現在の医療施設は、病院11、一般診療所46、歯科診療所22となっています。人口10万人あたりの施設数及び病床数は、県平均を上回っています。

医療施設数                         人口10万人当たり

施設総数

病院数

診療所数

歯科診療所数

備考

水俣・芦北

129.8

18.3

76.5

34.9

熊本県

129.2

12.3

77.0

39.9

医療施設病床数(療養病床数:2006年現在にて再掲)    人口10万人当たり

病床総数

病院病床数

一般病床数

精神病床数

結核病床数

診療所病床数

療養病床数

水俣芦北

3,219.6

2,730.4

2,054.9

632.3

36.6

489.2

323

熊本県

2,492.5

1,991.0

1,469.4

484.9

35.3

500.1

                    出典:平成11年「熊本県保健衛生統計年表」

A保健医療従事者数については、医師数、保健師・看護師・准看護師数については、熊本県の場合、全国平均を上回っており、歯科医師、薬剤師、助産師数については、全国平均を下回っていますが、全体的には充足されつつあります。

 医療従事者状況

種類

圏域

熊本県

総数

10万人対

総数

10万人対

医師

歯科医師

薬剤師

保健師

助産師

看護師

准看護師

154

29

71

21

17

538

462

261

49

120

36

29

912

783

4,585

1,082

2,558

698

3,191

3,534

10,698

246

59

138

38

17

728

575

                    出典:平成10年「熊本県保健衛生統計年表」

B2000年度の各種健診の受診率は、一般住民結核健康診断55.2%、基本健康診査44.1%(県42.4%)、胃ガン検診34.8%(県24.2%)、子宮ガン検診35.1%(県24.8%)、乳ガン検診38.0%(県23.1%)、肺ガン検診60.4%(県40.8%)、大腸ガン検診36.7%(県28.8%)で、いずれも県平均を上回っています。

5.高齢者をとりまく環境

@水俣・芦北地域の高齢者人口の推移
水俣・芦北地域の2000年の総人口は59,261人で、そのなかで65歳以上の高齢者数は16,178人で高齢化率は27.3%です(熊本県21.3%)。2010年の予測では総人口51,683人と減少しますが、高齢者数は18,864人と増加します。

A在宅高齢者の世帯構成
 2005年4月、1人暮らしの高齢者は1,679人で、20.5%となっています。

B介護保険認定者の推移
 2000年の介護保険認定者は1,392人、2001年1,534人、2002年1,705人、2003年1,814人、2004年1,852人、2005年1,833人と増加し、介護保険認定率は21.1%(全国16.1%、熊本県18.1%)と非常に高くなっています。

C介護保険サービス利用状況
 介護保険サービスの利用者は居宅サービス受給者数1,191人、施設サービス受給者数339人、サービス未利用者数303人となっています。特に居宅サービス利用者数のなかで、訪問看護サービス利用者は124件で、そのなかの70%を当院が担当しています。


6.地域における保健・医療・福祉の課題

@人口の高齢化とともに生活習慣病やこれに起因した痴呆・寝たきり等の要介護状態となる者への対応、健康づくりの充実などが今後ますます必要になってきています。

A個人の嗜好や食生活も多様化しており、生活習慣病につながる要因も増加しており、子供の頃から健康的な生活習慣を身につけることが重要です。

B高齢化・少子化の進展とともに、保健・医療・福祉分野の一体的サービスの提供を行う体制の整備が必要になってきます。

7.水俣協立病院の役割

@在宅医療 
 水俣協立病院の地域における在宅医療の取り組みは、まだ訪問看護制度がないころから在宅患者さんの生活上の問題点を把握して改善し、自宅での療養生活を円滑にするために取り組んできました。現在、月約100件の訪問診察・往診を毎日おこなっています。在宅酸素療法、在宅人工呼吸器療法、経管栄養、在宅IVHなどの治療が可能です。往診は重症度に応じて月1回から連日行っています。特に末期がん患者に対しては、必要に応じて連日の往診などもおこなっています。そして、隣接するケアセンターより訪問看護が月約100件、訪問介護は月約70件おこなっています。

 今後の高齢化や療養病床の削減により、在宅患者が増加してくることが考えられます。地域の医療・福祉機関と連携を取りながら在宅医療の取り組みをわたしたちの重点課題としていきます

A慢性疾患
 食生活の多様化により生活習慣病が多くなっており、国民全体の健康問題となっています。わたしたちは、糖尿病・高血圧病などの慢性疾患の治療に力をいれて患者の全身管理を行う医療活動をすすめていきます。

B水俣病
 水俣病の取り組みは、水俣協立病院が誕生した使命でもあります。水俣病の病像はまだ解明されていませんし、治療についても抜本的な方法は確立されていません。わたしたちは患者の苦しみをともに分かち合いながら、水俣病の病像の解明・治療の取り組みを重視し、共に歩んでいきます。特に現在、水俣協立病院に通院している患者の半数が水俣病や水俣病疑いのある患者であり、そういう点では水俣病の治療要求が潜在しているといえます。患者の協力で水俣病の研究と治療を重点として取り組んでいきます。

C小病院としての機能
 小病院としての優点として小回りがきくということがあげられます。人工透析の開始は患者の要求が管理部に直接伝わり、その要求をすばやく検討した結果でした。今後も地域の人々の医療要求に応えられる機能を持つ様、医療の発展を追及し努力していきます。

8.最後に

 [高齢者・寝たきり等の要介護状況]、「生活習慣病」、「保健・医療・福祉分野の一体的サービス」など医療と福祉・生活の複合的取り組みが今後求められてきます。わたしたちは、民医連の優位性を活かし、「無差別平等の医療」「地域との協力共同・連携」を重視し、医療・福祉の充実や公害を克服して、安心して住みつづけられるまちづくりを引き続きめざしていきます。