最近読んだニュース・記事で,とても興味深かった 「ミツバチ」の話を紹介します。出典は,仕事が医療関係であることから, スミスクラインビーチャム社の 隔月誌「ふゅーちゃー」No.35 (2000年11月刊)の上智大教授青木清氏がかかれていたものからの引用です。

ミ ツバチの温度調節

 人間の体は,1年間の冬と夏,あるいは1日の昼と夜 とでほとんど変わることなく,約36.5℃という,いわゆる平熱を維持している。した がって,体内の生命現象のすべてがその温度に適合している。この調節は自分の 意志によるのではなく,ほとんど意識に上がることもなく,体温調節機能によって行 われている。このような外環境と関係なく体温調節の能力をもっているのは哺乳類 と鳥類だけである。これら以外の動物,たとえばトカゲは,外気温が上がって暖かけ れば温血になり動きが活発であるが,夕方になって外気が冷えてくると,血液の温度も 下がり動きは不活発になる。トカゲのような動物を変温動物という。

 ところで,昆虫も変温動物で,環境の温度に激しく 左右される。だが,ミツバチは特殊である。彼等は胸部の筋肉の代謝を高める ことによって,わずか数分の間に急速に全身の温度を高めることができる。彼等の住ん でいる巣内の蜂児園には,成虫の働き蜂が約1万匹いて,そこでは正確に35℃という定 常的な温度が維持されている。もし巣内が少しでも冷えると,彼等は自分の体温を上 げることによって,巣内を外気の温度より10℃も高めることができる。彼等は生きたス トーブの役割を果たして,蜂児房に熱を与える。そこでは,熱が下がらないように蜂児房の 上に彼等はびっしりとかたまって布団の役目を果たす。

 これに反して,暑い日には,集まりをゆる めるが,それでも温度が上がるようだと,冷たい水を外から運び込み,翅であ おいで蒸発を促す。この時,大変芸の細かいことをする。持ち込んだ水を 房に一滴ずつ配分する。特に幼虫の巣房には重点的に与える。こうなると冬の ストーブとは異なり,一変してベンチレーターとなり,加熱した空気を外へと 追いやる。つまり,水を使った蒸発による冷却方法である。このような作 業が行われるのは,蜂が温度を確実に感受していることと,ミツバチのコロ ニー全体の見事な秩序立てれらた協調動作が働いているからである。このよ うな協調作業は誰が教えたことでもない。彼等は生得的にその能力を持って いるのである。それを私達は本能行動と呼んでいる。

 

新 しい住居探し

 ミツバチの家族は花の蜜のたくさんでる季節 になると,新しい女王蜂の誕生をみる。その時,前からいる古い女王 蜂は一緒に生活していた古い働き蜂約1万匹の大群を連れて新しい住 家へと移動する。この新しい住家への移動を分封という。新しい女王蜂の誕 生によって分封する時が近づいてくると,働き蜂は四方八方に飛び立ち ,自分たちの住むべきよい環境にある住家を探し求める。これはという 住家を探してきたミツバチは,仲間のいる自分の巣でダンス を踊る。ダンスは新しい巣のある方向と距離,それにどのくらい快適かの 意味をもっている。このことは一匹だけによるものではなく,多数の働き蜂によ ってダンスの競演が行われる。その際,より良い場所を探してきたミツバチ のダンスのほうが勢いが良い。すると,勢いの悪いほうの蜂はダンスを止め て,その相手の発見した場所へと飛んでいってみる。このようにして,ミツバ チのダンスの競演の結果,1〜2時間の間により良い一つの場所に絞られてく る。最後は働き蜂のダンスは衆議一決する。それによって,女王蜂は大群の働き 蜂とともに新しい快適な巣へと移動する。これが分封という,ミツバチにおけ る一種の増殖である。この時のダンスは花密のありかを教えるのとは異なる興味ある協 調作業である。人間社会ではなかなか衆議一決などは望めないが,彼等はダン スという方法によって正当に決めることができる。これも本能行動である。

 このような本能行動から,私達は彼等が集団 としての生活を維持るために,各々が協調して役目を果たし,また,互 いに守り合って,生きている生活を理解することができる。これらのことから私 達は人間社会でみられる事柄と対比させた時,人間は文明社会で生活している が,その基盤には本能が働いているので,そこには学ぶべき多くの点があることを知る。

青木 清:動物行動からみた患者が来る診療所,ふ ゅーちゃー2000年11月号,P14,から一部抜粋。

このコーナーへのご意見は kittyphm@fsinet.or.jp

ホームページへ