初めての中京競馬場、しかしあいにく雨である。朝方は良馬場発表だったものの、本番が近づくにつれやや重→重と変化。よろしくない、大変よろしくない。なぜなら僕の本命馬は良馬場得意の馬だったからだ。

マサラッキという馬、運のない馬だ。本来ならば少なくとも2年前、暮れのスプリンターズSの頃から短距離戦線の雄として騒がれていてよかった馬。十分にその力量を有しながらも賞金不足で除外続き(あの頃はピークを過ぎた短距離馬がG1と見るや大挙出走してきて新興勢力の育成を阻んでいたように思える)。渋々ローカルを回り、漸く賞金を加算して出たG1は悪天候続き。6歳にして絶頂期を迎え、万全の体制で臨んだここがまた悪天候。泣けてくる。勝ち目は薄いだろう。それでもこの日はマサラッキと心中することに決めた。

直前の白百合Sでロバノパンヤを巡って妙な盛り上がりを見せたがさておき。パドックを周回する各馬を見ながらの感想。大本命シーキングザパールは叩いて前走以上の勢いを見せると期待されているようだが、確かにその馬体からは勢いは感じるがこの馬、マサラッキ同様、いやそれ以上に馬場の悪化を嫌う。本質的に奇麗な飛びが良馬場向きのマサラッキとは違い、気性の悪さから雨を嫌うのである。この日徐々に調子を上げつつあった武豊に抗いがたく馬券には絡めたが、正直あまり魅力は感じない。2番人気はシンコウフォレスト。抜群に良く見えるのだが僕はこの馬がどうしても好きになれない。理由は単純、速くないからだ。スプリンターとしての資質=時計決着での強さと考える僕は、この馬の「時計が懸かった時には確実に台頭」する泥臭さが嫌なのだ。電撃の6ハロン戦に似合うのはもっと優雅な極限のスピードではあるまいか。そんな事を考えるあまり、どう考えても雨が降って有利になるこの馬を馬券から外した。データ至上主義の論詰めの予想を身上とする僕にしては珍しいミスだが、予想屋としてのじぶんより競馬ファンとしての自分を優先した結果だ。単に当てに行くだけならわざわざ名古屋までレースを見に行かずともよいのだから後悔はしていない・・・ちょっとしてるけどさ、うん。 3番人気はスギノハヤカゼ。前走59`を背負って好勝負をしているだけに上積みという点ではメンバー中髄一。しかしやはり良馬場でやりたかったクチだ。

4番人気が我らがマサラッキ。何とも素晴らしい馬体、気合乗りも抜群だ。良馬場でやっていれば勝利間違い無しな出来である。なんだか感傷的な気分になったがそれでも本線をここに据える。5番人気は驚いたことにエイシンバーリン。既にピークは過ぎているこの馬だが、状態は悪くないし、確かにこの馬場ならば前残りは大いに有り得るといったところか。でも買わない。それよりもむしろ7番人気のワシントンカラーだ。状態は今年最高、やや物見する癖が出てきたのでブリンカーを装着。そしてそして何と言っても重馬場が滅法上手い。当然首位争いに加わるだろう、自信の対抗(中途半端に冷静な奴)。というわけで本線はマサラッキ−ワシントンカラー。両馬からシンコウフォレストを除いた(なぜ除く?)上位人気馬へ流す。後は発走を待つのみである。

ここでちょっと中京競馬場について語ってみよう。関西地区では唯一の左回り。この競馬場は本馬場とスタンドの距離が非常に近い。直線、柵沿いで見ていると馬が自分の方に向かって走ってくるような錯覚すら覚える。馬場は非常に平坦で、向こう流しがかなり近い。いろいろな条件を加味して、1200〜1400のビッグレースを開催するのに相応しい競馬場だと言える。左回りというのは大きなポイントで、関西馬にとって慣れないレースになるので、関東、関西のホーム−アウェイの有利不利は皆無に近い。もっと大きなレースを開いてもいいように思える。ダートの短距離重賞が相応しかろう。直前の白百合Sを見るに関西地区では最もダート開催に適しているようだ。もっとも、集客人数は蚊なり少なそうでその辺に課題があるのだが。

各馬が馬場へ出てくる。毎度のことながらシーキングザパールには落ち着きというか風格が無い。一介の条件馬のようにチャカついている。なんだか以前NHKマイルで見た時よりも悪化しているような気がする。こういう馬はダートみたいな芝は苦手なんだよなぁ。マサラッキも落ち着いてはいるものの、どうも雨のせいで気合が入りきってない。見た目いいのはワシントンカラー、コクトジュリアン、エイシンバーリンなど。レースは、どうだろう、1分8秒台の決着になるのではないだろうか。そうなるとワシントンカラーに大いに勝機なのだが・・・。

いよいよゲート入り。ファンファーレはテープだった。何だかなぁ。これは声を大にして怒りたいのだが、せっかく地元にG1を誘致したのに、なぜファンファーレを使い回すのか? 全くのナンセンスである。こんな些末なことでレースの格を下げてどうするのだろうか? さておき発走。エイシンバーリンが素晴らしい飛び出し。びったりとシンコウフォレストが2番手。早くも折り合っている感じ(やだなぁ)。シーキングは小回りを考慮してか早めに動いてその後ろ。マサラッキもこれと並んでいる。両馬とも完全に折り合って、素晴らしい行きっ振り。これなら、と期待を持つ。ワシントンカラーは中段内。スギノハヤカゼ後方。おいおい、絶対届かねーよそこからじゃあ。田島騎手、午前中にも同じ事をやって後方ままで終わっている。・・・あまり重賞級の馬に乗る機会のない中堅ジョッキーがこんな騎乗をしていたら明日から飯の種に困るだろうに。

3角付近で馬なりのままマサラッキが先頭に接近する。シーキングも一緒に動こうとしたが前が若干狭くなり一歩遅れる。いやマサラッキ鞍上の河内がシーキングの行きたい進路を先に進んで後手に回らせた格好。この人今年になってからこういう騎乗が目立つ。老獪というか、騎手として完成の域に来ているようだ。「まだまだ武豊も青いね」と言わんばかり。4角に来てシーキングも体勢を立て直しマサラッキの直後まで来る。ここでマサラッキ急に止まったようになる。カーブで足元を気にしていたようだ。一気に後退。直線に向いてまだ先頭はエイシンバーリン。今回は競りかける馬がなかったために楽してきている。こうなると粘っこい馬だ。馬なりで並ぶシンコウフォレスト。持ち味のジリっぽい末脚をジリジリと爆発・・・しないんだが、発揮する。エイシンバーリンも頑張るが往年の並んで怯まない根性はもう無い。3着ケイワンバイキングで決まりそうなところに遅まきに伸びてきたシーキング(本質的に重下手ではないので、やる気さえ出せば伸びる)、そして際立った末脚で突っ込むワシントンカラー! だが中京の直線は短くエイシンバーリンを捉えたところで既にシンコウフォレストはゴール過ぎ。

勝ったシンコウフォレスト。優勝したその栄光が汚れることはないが、いかんせんG1にして1分9秒台の決着は「低次元」と言わざるを得ず、得意な展開に全てが向いた結果の優勝と見る。2着ワシントンカラーは実力通り。馬場に影響されない切れ味は現役スプリンター屈指。勝ち馬よりむしろ強い印象を与える。3着エイシンバーリンもすべて上手く行っての結果。これといって評価する材料も見当たらない。4着まで頑張ったシーキングは気性の問題さえ何とかなればタイキシャトルと互角の域まで到達できるのだが。悪展開で一応格好はつけた点は大いに評価。5着ケイワンバイキングももう少しキャリアを詰めば首位争いに加わってくるだろう。

結局マサラッキは10着。まぁ仕方が無い。今回は条件が悪すぎた。しかし、こう言って「次こそは」と何度思ってきただろう。未完の大器に足りないものは「運」のみだ。11着スギノハヤカゼは確かにこの馬場では多くは望めまいが、拙騎乗が目立ったのも事実。

何にせよ、今回のレースを終え、依然短距離戦線はタイキシャトルの単独絶対政権。あの馬の言い訳の必要すらない圧倒的な強さは際立ったもの。残念ながら足元に及びそうな馬を発見すら出来なかった。中京競馬場にもう一つ望むとしたら、芝などを改良してもう少し高速馬場に仕上がるよう、努めて欲しいものだ(今年は新潟の代替開催とかあったから仕方ないといえばそうだが)。

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