パイヌカジ

パイとは南のこと。 カジとは風のこと。

パイヌカジとは、あたたかな南の風のこと。沖縄の言葉です。

南の風、パイヌカジ・・・

・・・なんとやわらかく、たおやかなひびきでしょうか。

パイヌカジは沖縄の青い海の上をわたります。

すると海は、息をするようにゆったりと膨らみます。

丸い波、丸い腹の中に、ひとつの生命を宿らせたのです。

平和の芽です。

・・・それもつかの間、丸い腹は、きらめきながら、

さんご礁にくだけて散ってしまいます。

でもパイヌカジは、吹くことをやめません。

宿った生命が実る日は来る、いつかきっとくる

             ・・・
と吹きつづけるのです。


―下嶋哲朗・著―『チビチリガマの集団自決―「神の国」の果てに』 まえがきにかえて
より
凱風社 ISBN-7736-2501-5