研究会員未発表論文 (1) 於 都市的土地利用研究会
『既存借地権の定期所有権への移行に関する一考察』
-定期借地権の地上権方式への移行に関連して-
不動産鑑定士 河 村 龍
二.移行に関する理論と現実の諸問題
1.法的視点からの移行と借地権の清算の問題
2.実務的視点からの移行の問題
(1)借地非訟方式の応用的手法及び、紛争の和解方式の手法
三.定期所有権(定期借地権の地上権方式)への移行
1.権利譲渡に関連する場合の定期所有権への移行
2.[ケ−ス研究 A]の設例
3.問題点に対する検討
4.契約と書式について
5.実務的観点から留意すべき事項
四.むすび
五、別紙及び参照文献
1992年、8月1日新借地法の施行より、はや2年半有余を経過、ようやく定期借
地権に基づく戸建住宅、同マンションが事業化され事例も出始めた。 それは、従来の土
地所有権のものに比し、30%〜50%割安な価格で販売出 来るとして、住宅メ−カ−
及び大手中小不動産会社等が積極的に取組み、営業 活動を展開し始めたからであり、現
実に定期借地権の取引事例の分析も出始めた。
他方、建設省も戸建、マンション両者について、来年度の重点施策に、定期借地権を
活用した良質な住宅供給促進制度を盛り込もうと意欲的に検討を始めているとの事である。
この様に、定期借地権制度が現実に動き出した事は、従来の持家制度が高額化した事
の破綻に代わる、新持家制度(低額、良質、定借物件)が、新時代の潮流になり得るもの
と認識され始めた事を意味する。
稲本教授は、「新法が定める定期借地制度は、都市に於ける土地利用の制度のあり方
という点で新たな一歩を踏み出したが、同時に、いくつかの重要な課題を将来に残した。」
そして、「これまで長い間、借地権の存続保障の総体が 借地権を保護し、その物権化を
実現するものと考えられていたのに対し、権利としての永続保障はその本質的な要素では
なくむしろ、しばしば権利の成立を阻害する要因となる事を確認し、その上で改めて定期
借地制度を物権的利用権として完成させることが今後の展開の基調となるであろう。」と
述べ、更に、次の三点を踏まえれば「定期借地権は、土地の利用という側面に於いて、そ
の存続期間中、所有権に準じた地位を借地権者に付与する事が理解されよう。」と論じ、
「@ 利用上必要且つ十分な空間的時間的範囲に限定された土地利用権であること。
A 土地所有者の主観的意図乃至事情に左右されず、且つ、権利としての流動性を保障
された土地利用権であること。
B 原則として、建物の所有権と不可分の土地利用権であり、その消滅後は、建物が土
地に符合する事を妨げないばかりか、それを保障するものである事。」と問題点を指摘し
ている。(注1)
この事は、定期借地権を地上権の設定契約を通じて、都市に於ける土地の合理的利用
を促し、土地所有権の合理的な一形態と位置付けるべきで、その意味で稲本教授の提唱す
るこの形態を時間的な限定の下に譲渡された土地所有権、即ち、定期所有権と言われる事
が理解されよう。
そこで、かねてより興味を感じていた問題点、「既存借地権から定期借地権への転換」
に就いて、「定期所有権への移行」という観点から考察し実務的視点からの合理的展開を
解明していくこととする。そして、その事は、既存の借地権についての純法理論的解明と、
法律実務と不動産鑑定の実務として成長して来た借地非訟事件の意見書、決定等と慣習と
して成熟して来た取引慣行の側面からの総合的なアプロ−チが必要であると同時に、裁判
上の接近の手法と現実の市民間で行う接近の手法の融合的手法を解明する事でもある。
そして、本稿に於ては、先ず、実務的観点から、「既存借地権の定期所有権への移行」が
手法として裁判所の論議に耐え得るものとして考察し、開発出来ればと思い、以下順に論
ずる事とする。
二.移行に関する理論と現実の諸問題
1.法的視点から借地権の清算の問題
(1) 借地権の強行的保護を目的とした1941年(S.16年)改正法の仕組み(「正
当自由」が存在しなければ更新の拒絶をする事が出来ない)が任意返還を求める「対価」
を著しく高額なものとし、借地権価格乃至、借地権割合の観念を普及させ、高率な権利金、
立退料、承諾料、及び更新料を授受する慣行を創り出し、借地関係の実態を複雑難解なも
のへとしてしまった。
(2) こうして、借地権価格等が発生し、取引の対象となり、相続財産の課税対象とな
った現在、複雑難解な既存借地関係をそのまま放置して置いて良いものだろうか。ここに
既存借地権の定期所有権への移行の意義が認められる。
(3) 法的視点からの清算
@ 法律的観点から清算の問題を取り上げると、それは「借地関係の終了に伴う利益調
整としての借地権の清算であり、「正当事由による借地権の消滅とその補償」の問題
である。
A そして、これらの基本的判断基準は、権利金等の授受が借地権取得の対価であり、
「土地のキャピタルゲインの関係では、土地の共有持分(土地所有権の分有が生じた)
とみる事が出来る。」そして、「借地権者は、いわばその実質的な共有持分の清算と
して、土地の時価のうち、その持分割合に見合うものを受けることができる。この清
算金には、その給付した金額如何にかかわらず、その財産的給付当時の更地価格との
比率に応じた土地価格の上昇による利益を含む事になる。」と配分の方法にも言及し、
「これが、借地関係の終了(特に借地期間満了や解約申し入れによるもの)に伴う当
事者間の利益調整の方法としては、最も公正公平の観念にかなうもののように思われ
る。」と、分析し、更に、「借地関係の終了の事由、例えば、債務不履行の場合どう
扱うかは問題であり、更に、借地関係の経緯如何によっては、その扱いに差異が生ず
ると考えられるが、この点は、(1) 借地関係の終了事由と清算、(2) 斟酌事由としての
借地権終了の事情、(3) 借地に関する従前の経過の斟酌に於て検討する。」(注2)として
かなり詳細に検討されている。 本稿に於ては、実質的観点から、既存借地権の定期
所有権への移行が主テ−マであるから、法的側面についての私なりの分析検討につい
ては、別の機会に譲る事として、法的指唆のみ勘案し、実務面への検討に進む。
2.実務的視点からの移行の問題
(1)借地非訟方式の応用的手法及び、紛争の和解方式の手法
@移行の発生原因としての要因
先ず、実務的に移行が考えられるのは、借地関係に何か問題が発生した場合に、これ
らの解決案として提示される可能性が高いことから、借地関係に於て「問題の発生」と
言えば、最も多いケ−スは、更新料の授受に関連する場合、地代の紛争に関連する場合、
借地非訟事件に関連する場合、契約解除条件の発生の場合、相続に関連する場合、小規
模な再開発事業に関連する場合等が考えられる。 これらについてまとめると次の通り。
A更新時期の到来
イ.更新料請求に関連する場合の移行
ロ.更新拒絶に関連する場合の移行
B地代値上げの紛争
イ.地代値上げの紛争に関連する場合の移行
C借地非訟事件に関連する場合
イ.権利譲渡の承諾に関連する場合の移行
ロ.増改築の承諾に関連する場合の移
ハ.条件変更に関連する場合の移行
ニ.小規模再開発事業に関連する場合
D契約解除条件の発生に関連する場合
イ.債務不履行の発生に関連する場合の移行
ロ.無断権利の譲渡に関連する場合の移行
ハ.無断増改築に関連する場合の移行
ニ.その他信頼関係破壊に関連する場合の移行
E相続に関連する場合
イ.借地人と建物の所有名義が異なる場合の移行
ロ.無断で借地人である被相続人が子供等に転貸している場合の移行上記の事情が発
生した場合、これらを理由に更新料その他の金銭給付の請求、契約の解除の請求等
を媒体として、その、解決案、代替案として、定期借地権等への移行が促進される
可能性が考えられるが、「平成3年12月7日建設省経済動発第89号」を以て「借
地借家法の施行に伴う宅地建物取引業法の厳正な運用について」の通達が、建設省建
設経済局不動産業課長名で発せられ、また、「NBL 500 P.13借地借家の紛争と
借地借家法の施行 法務省民事参事官升田 純氏」は、「賃貸人のなかには、この法
律の施行を前に、従来の賃貸借契約の内容を、変更するチャンス到来と考えるものも
いないではない。 施行前の賃貸借契約を、借地借家法の規定を適用させるために合
意解除をし、新規に賃貸借を締結する事を検討している最中かもしれない。
このように合意解除をし、新規に賃貸借を締結するについて、客観的・合理的な理
由がないなど特段の事情がない場合には、借地法、借家法の潜脱を目的とするものと
して、無効とされることが多いだろう。」と述べている。
両者共時宜を得たもので、既存借地権の定期借地権への移行の重大性を指摘した
もので、ここに、重要な意義を認める事が出来る。それが問題なのは、モグリ業者
等非合法グル−プによって、無償で移行されるケ−スが多いのではないかと危惧さ
れ、また、トラブルの発生原因とみられるからであろう。
要は、既存借地権の定期借地権への客観的に合理的な移行がなされているかどう
か、それは、不動産取引上の慣行として成熟した関係をどのように現実の合理的な
清算関係に調整するか、そして、それが実行されているかにつきる。この事が重要
な判断基準ではないかと思考される。
(2)移行の類型
既存借地権から定期借地権等への移行の類型については、何通りかの類型が考えられ
るが、例示的に列挙すれば次の通り。
@一般定期借地権への移行
イ.定期所有権(地上権設定)への移行
ロ.定期借地権(賃借権の設定登記のされたもの)への移行
ハ.定期借地権(設定登記のないもの)への移行
A建物譲渡特約付定期借地権への移行
イ.建物譲渡特約付定期所有権への移行
ロ.建物譲渡特約付定期借地権への移行
B事業用定期借地権への移行
イ.定期所有権(地上権設定)への移行
ロ.定期借地権(賃借権の設定登記のあるものとないもの)への移行
C普通借地権への移行
イ.定期所有権(地上権設定)への移行
ロ.定期借地権(賃借権の設定登記のあるものとないもの)への移行
以上9通りの移行の類型が予測されるが、本稿では主として定期所有権に移行する場
合の権利譲渡を中心に論述していく。
移行の類型が予測されるが、本稿では主として「定期所有権に移行する場合の権利譲
渡」を中心に論述していく。
三.定期所有権(定期借地権の地上権方式)への移行
1.権利譲渡に関連する場合の定期所有権への移行
この場合の移行に就いては、既に借地権取引きの慣行上、或いは、借地非訟事件に於け
る決定例等から、比較的客観的、合理的な承諾料及び、承諾料率を見出だす事が出来る。
従って、「借地非訟事件に対する意見書」と同様「清算に関する意見書」を、当事者間
に答申する形式で調整を進める事により、既存借地権から定期所有権への客観的、合理的、
合法的移行が可能となる。
問題点は、高度な専門性と倫理性を要求される調整者、及び、移行する事が誰を利益し、
誰が不利益となるか、そして、その為の承諾料についてどの様に考えるべきかという点と、
借地人の50年定期所有権への移行の不利益について、単なる行政的慣行としての借地権
割合に基づく借地権価格について、本質的な分析、検討が必要となると考えられる事であ
る。
2. [ケ−ス研究 A]の設例、分析、検討
(1)借地人乙が借地権付建物を処分する為、買受予定者丙を探して来た。乙は地主甲に
譲渡承諾料として240万円を支払う用意がある旨申し入れた。甲は相談した上で解答
するとして再開を約した。
この場合の賃貸借関係は、戦前からのもので20年毎に法定更新され、申し入れの時
点で経過年数15年、残存期間5年とされ、1度更新料を支払っている。
ここでは、取り壊しを考えているので建物価格は省略し、木造から堅固な建物への条件
変更をする ものとして設例する。
(2)地主甲は、不動産カウンセラ−のところに相談に行ったところ、カウンセラ−の話
では「従来からの借地権は、甲が買い取るか、いつまでも貸し続けるか、管理のわずら
わしさに比してメリットが小さいので、この際「定期所有権」として地上権に切り替え、
50年後に更地で戻してもらう方法を採用したらどうか」と言われ、更に、「乙に対し
借地権譲渡の承諾は認めるわけにはいかないが、もし、丙が、定期借地権の地上権設定
方式(定期所有権)の契約の変更に応じ、相当な地上権設定料等移行の清算について、
乙と丙が共同して支払う意思があるということなら、承諾の問題を考えても良いのでは
ないかと言われた。 甲は、乙にその旨説明し、乙は丙とも協議した結果、地主甲の主
張を入れ、「清算意見書」を不動産鑑定士に依頼する事とした。費用は3者で各3分の
1ずつ負担する事にした。 詳細は、「別紙−清算」を参照
(3) 清算調整金
清算調整金として「別紙−清算1、2、3」により
8% を基準とした場合 ¥3,660,000 15、3%
10% を基準とした場合 ¥4,920,000 20、5%
15% を基準とした場合 ¥8,280,000 34、5%
の額が求められたが、この負担割合についてどの様に乙、丙で配分すべきかについては、
イ.全部乙負担
ロ.乙、丙各2分の1ずつ負担する
ハ.本来地主との関係であるべき乙の借地権価格との調整
10% の場合の乙の権利価格「別紙−清算2」「G後段参照」
2400万円×0、3 = 720万円 … 60% ×30% G1参照
2400万円×0、35= 840万円 … 60% ×70% /2 G後段参照
2400万円×0、03= 72万円 … 更新料1回分 G3参照
合計 1632万円
割合の借地権価格 甲、乙間本来の権利価格 差額
2400万円 − 1632万円 = 768万円
この 768万円は、借地人乙の市場性に基づく売り得部分で、全額乙に帰属させる事の
合理性に乏しい価格である。この価格から8%,10%,15% の場合の清算調整金を控除す
ると下記の通り
8% … 768万円 − 366万円 = 402万円
10% … 768万円 − 492万円 = 276万円 1/2 138万円
15% … 768万円 − 828万円 = ▲60万円
上記の結果10% の場合の清算調整金 492万円を移行の為の承諾料とした場合につい
て検討すると、次の通り。
A.地主甲の承諾料相当額 492万円
B.借地人乙に帰属する権利価格
1632万円 + 138万円 = 1770万円
138万円は乙、丙で等分に配分(公平性)
C.買受予定者丙の移行の買受価格
2400万円 − 138万円 = 2262万円
注。 8% の場合、甲 366万円、乙 1833万円、丙 2199万円
地主甲の承諾料 492万円は、割合方式の借地権価格の20、5% に当り、8%の場合は15、3%
(366万円) で、地上権設定登記に応じる不利益面と、その都度承諾料の適正額や地代
の値上げ等の適正額の計算、交渉等の煩わしさ、また逆に、その都度取れる承諾料の
放棄による不利益を勘案すれば、20% 前後の額に当る 10% ( 492万円)を基礎とした調
整が最も妥当な額と考えられるので、意見書であれば、下記の通り決定することとな
る。
甲、乙、丙の定期所有権への移行を条件とした場合の甲の承諾料相当額は¥4,920,000.-
乙の売買価格は¥22,620,000、内、乙が甲へ上記承諾料を支払う事、丙は定期所有権への移行
による50年間で返還する不利益等考慮して、売買価格は¥22,620,000と決定する。
注、2400万円で取引し承諾料 500万円とするなどは、意見書に基づき調整者がいれば、多少
の調整は無論妥当と考慮される。
従って、移行への承諾料は割合方式の借地権価格を一応の試算価格としてその15%〜25%
程度が相当と分析される。
(4)地代の決定と自動改定方式の特約
移行する場合に地主に対する繁雑さ、煩わしさを除去する為、特約として、固定資産
税額との倍率とか、更地に対する純賃料の割合とか、固定資産税評価額を0、7 で除した
価格と純賃料の割合とか特定した上で3年毎(評価替の時期)に増減する事に特定する
事は、特に重要な事と思慮される。
ここでは、清算調整金の求め方を中心に考察したので、賃料の自動改定の評価及び、
特約条項等については省略する。
3. 問題点に対する検討
(1)調整者について
「別紙−清算2」の「既存借地権から定期所有権への移行に関する清算評価査定表」を
通じて検討すれば、借地非訟事件を担当した事のある不動産鑑定、カウンセラ−である不
動産鑑定士、コンサルティング技術認定者である取引主任者、弁護士等があげられる。
(2)承諾料の問題については、鑑定委員の経験のある不動産鑑定士に、「清算に関する
意見書」を発注すれば、基本的に妥当な清算額が算定されると思慮される。当事者間で
異議があれば調整者の調整に期待する事が出来よう。
(3)借地人の50年定期所有権への移行の不利益についての検討と調整が最も重要な
課題となる。
@ 本来の借地権価格の検討と調整
「借地権の経済的価値=借地権価格については、法的保護利益、寄与配分利益、付加
価値利益の複合価格である」という澤野順彦弁護士で不動産鑑定士(注3)の説に対
して、私は、法的保護利益として所謂、最高裁判所の判例に基づく場所的利益として、
借地権価格の30%とする事については衆知の事実として認容し、移行に関しての不利益額算
定上、試算価格として割合方式に基づく借地権価格から、その法的保護利益としての30%
を控除した残りの70% の額について、寄与配分利益と付加価値利益の混在しているものとみ
て、利益の公平公正の観点から、折半する事が妥当ではないかと考えられるのでこの考
え方を採用し、権利金の有無、更新料の授受等考慮して、移行の調整方式として採用出
来るのではないかと考え、この手法を試算してみた。
(「別紙−清算2」の「G」参照)
更地価格 借地権割合 面積 割合方式の借地権価格
80万円/坪 × 0、6 × 50坪 = 2400万円
イ.法的保護利益(場所的利益) 30%
ロ.権利金の有無(無きものとして) 0%
ハ.更新料の授受1回(2、5%〜5%) 3%
ニ.不利益率は次の通り
イ ニ*A ハ
借地人に帰属すべき権利 寄与配分付加価値折半
60% ×30% + 60% × 70% /2 + 3% = 42%
割合の借地権 本来の借地権
60% − 42% = 18% …調整上地主に帰属すべき率
ら地主と借地人と折半する事が妥当と思慮されるからである。
寄与分利益部分は草分け的にその地域の発展に寄与したとしても、法的保護による
30% の基礎権利相当額を控除した残りの寄与分利益は、一方的に借地人に帰属させる事
は、公平に反すると思慮されるからである。
付加価値利益についても、適正価格と言われている公示価格の中にも投機的要因に
よる価格が内在していると指摘している西村判事の論文もある事から、寄与分利益と
付加価値利益部分は公平の観点から、地主と借地人とで折半する事が合理的で妥当な
配分率と思慮される。
A 上記寄与分利益と付加価値の折半を補強する底地価格と地代の収益価格の関係
更地価格100万/坪 借地権60万/坪 底地40万/坪 とした場合一般に地代は月額
300円/坪程度である事、地代の値上げは、変動の原則に基づき経済的事情の変化に対応
し、比較的低額に押さえられて来た傾向が認められる。
(地代家賃統制令の影響、スライド方式等「最高裁判決では、諸方式により求められ
たものを総合的に勘案して決定する」 としているが、現実的には弁護士費用、鑑定
書の費用等がかかり、経費にも満たない値上げの為、争うメリットがない事。)
更に、相続税に於ては、公示価格の80% の40% に当る額32円/坪 として計算される。
他方地代は、上記月、 300円/坪 の収益価格は、仮に12か月分の内、 2か月分を公租
公課とみて、年間3000円/坪 の純収益にしかならず、これを5%で資本還元すれば6万/坪
という事で、上記差額について32万-6万=26万/坪は、税法上実際に 6万円の価値しか
ないものに、32万円も価値があるものとして課税している擬制上の価格で、憲法第29条に
基づく財産権の侵害に当るのではないか疑義を感ぜざるを得ない。
B 以上の事から借地権価格の処理に当たって、売り得分を借地人に取られ、相続に当
たってはバブル崩壊にも拘らず投機要因を含む擬制上の底地価格で課税され、賃料の
値上げもままならず、三方から財産権が侵害されているのが実情である。そこに矛盾
が発生しているとすれば、これを既存借地権から定期所有権への移行についての妥当
な清算評価について考究し、簡易ソフトの開発を通じて簡易迅速に処理出来る道を模
索した次第で、借地権自体の客観的合理的な解明と、現実的な慣行としての承諾料の
授受との関係に於て、移行への清算評価による意見書が、客観的、合理的になされる
事で、既存借地権から定期所有権への移行の道が開かれるものと考えられるのではな
いかと分析検討をしてみた次第である。
4.契約と書式について
本件処理上の手順や契約書式等に関しては、不動産鑑定士が不動産カウンセラ−業務と
して行うのか、取引業者がカウンセリング業務として行うのか、不動産鑑定士に意見書を
依頼するのか、甲、乙、丙、三者の調整者の実務処理の仕方によって異なるので、ここで
は省略し、契約関係を略記する事に留める。
契約の種類
(1) 「甲、乙、丙の移行に関する内諾の覚書」
(2) 「移行に関する意見書の依頼書」
(3) 甲、乙間「条件付賃貸借合意解除兼清算に関する覚書」
(4) 甲、丙間 「定期所有権設定契約書」
5. 実務的観点から留意すべき事項
定期所有権への移行に関し、承諾料が高額となれば借地非訟事件として提訴が考慮され
ようし、また、そのような事態になれば、買受予定者丙は取引を中止する事もあり、調整
に当って十分な説明及び説得が要求される事となろう。
調整に当っては、契約の当初、権利金の授受及び、これに代わる造成等の有無、地代水
準、更新料等の授受の有無、その他背信的行為、債務不履行等の実績の有無等調整のポイ
ントを見極める事も必要であろう。
四.むすび
1.定期借地権を特に定期所有権の方向へ誘導する事と同時に、既存借地権から定期所
有権への移行を推進させる事とは、21世紀へ向けての土地利用の観念を普及させる事
のみならず、不動産市場の拡大、豊かな住生活への実現性が期待される。
特に、前記にあげた三点、時限的土地利用権となる事、流動性を保障された利用権で
ある事、消滅後、建物は土地に符号する事に替えて、定期所有権設定契約書の中に明確
に規定する事(例えば、契約期間終了後の翌日に建物を無償で譲与し、建物の所有権移
転請求権を地主に認める旨の規定等)によって、定期借地制度の諸部分を見直しする以
前に、既存借地権から定期所有権への移行を通じて、旧借地関係の不明朗性、複雑で多
様な問題点の残務整理がなされていく事であろう。
2.その為には、地主への合理的な誘導と説得が必要である事と、相続税法上の公正な助
成が必要。その点を吟味すると大旨下記の通り。
(1)既存借地権の管理の困難性からの解放
(2)相当な移行料の収入の見込
(3)土地は50年後に必ず返却される事となる事
(4)地代の自動改定の特約による利益
(5)最後に最も重要な事は「定期所有権の底地の相続財産評価に当って、定期所有権の
設定されたものについては、その時点の時価・路線価の残価率相当額として 5%〜
10% 程度、または、地代のある場合は、その収益価格のいずれか安い方の価格と
する」事の誘導のための特別措置が最小限必要と思慮される。(相続税法上の特別措
置の要請)
3.更に、既存借地権の定期所有権への移行の合理的手法の開発は、定期所有権の中古市
場の確立に大きく寄与するばかりではなく、金融への担保の問題、権利の明確化、トラ
ブルの減少化等、社会一般に大きく貢献するものと確信し得るものである。
そして、このような重要な担い手として、中小業者のコンサルティング技能認定者、
不動産カウンセラ−、不動産鑑定士等が活躍出来るならば、逆に、3〜5軒程度の地主、
借地人を含めて、定期所有権に基づく再開発方式にも応用出来よう。
また、借地非訟事件として、既存借地権から定期所有権への条件変更の申立ての可能
性を含めて、不動産業界の活性化に大きく寄与するものと思考され、既存借地権の定期
所有権への移行の秩序ある転換に当って、規制緩和と誘導が特に要請される。
4. 最後に、法改正に於て実現出来なかった、完成された都市的土地利用としてのあり
方の未実現部分について、既存借地権から定期所有権への移行を通じて、あるべき姿へ
と転換出来る環境を、関係諸官庁、並びに、関係者に整備されるよう、声を大にして提
言したい。
五.別紙及び参照文献
「別紙−清算1」 8% の場合 既存借地権から定期所有権への移行に関する清算評価査定表
「別紙−清算2」10% の場合 既存借地権から定期所有権への移行に関する清算評価査定表
(注1) 「定期借地制度の創設と土地所有権」1994、2 東京大学教授稲本洋之助 近刊
「定期借地制度の研究」版下抜粋P.19〜21
(注2) 借地・借家法改正の方向 −新しい秩序を求めて−
稲葉威雄 別冊NBL 20 P.59以下
『既存借地権の定期所有権への移行 [ケース研究B]』
- 再開発事業を通じて地主と借地人と定期所有権者の共生に関連して -
一.はじめに
1992年8月1日新借地法の施行より、はや3年半有余を経過、戸建住宅の供給はめ
ざましく、「定借ブーム」の観を呈している中で、「東京都内の定期借地権マンション」
も別紙の通り、ブームの兆しを見せ始めたようだ。そうした中で私は、既存借地権から定
期所有権への移行について一貫して研究し考察してきた折、ようやくその可能を秘めた手
法を[ケース研究B]を通じて、開発できるのではないかと確信致し、以下[ケース研究
B]の概要について説明する。
さて、その概要を紹介すると、地主と借地人等の(一団の土地)借地関係を合理的に調
整し、双方が共生できるよう、土地利用組合(匿名組合)または、土地利用協同組合を地
主参加のもとに設立し、地主は、借地人等に上記組合に対し、定期所有権の60年間の約
に基づく再開発事業を地主も参加することを前提に転貸を認めることとする。
地主の参加資格は、その承諾料相当額の割合を地主の持分として、全体の権利床の割当
を行い、残保留床の譲渡益を持って、地主及び借地人の割当床に充当し、過不足のある場
合はこれを精算する。
このような権利状態で、定期所有権消滅後、土地利用協同組合の名義に無償、または、
有償で、建物の所有権を、移転し、場合によっては、借家契約に切り替え、あるいは取り
壊して再々開発を行うか等… その間、従来の借地関係は、事情によって長期的視点で、
地主が、借地権を買戻す手法や、従来の借地人等の物件の売買の手法、評価法も開発出来
ようし、また、地主が、土地利用協同組合に、底地を売買することも考えられ、旧借地関
係を整理していくことができよう。
上記のような再開発事業がスムーズに実施可能ならば、定期所有権の事業化に、再開発
による地域の活性化のために、そして、地主と借地人と定期所有権者との共生に大いに役
立つのみならず、中小業者の生きる道もおのずと開けるものと予測される。
ここまでの考察からすれば、既存借地権の定期所有権への移行の問題は、権利調整に基
づく総合的複合的土地利用計画事業として、参加者それぞれに何等かのプラスを与え、互
いに、共生関係に立つ手法として、位置付けられる事業計画であると、指摘できよう。そ
して、この共生関係の成り立つ事業のみが、今後大きく成功するのではないかと予感する。
以下、[ケース研究B]の設例、そのアプローチの手法、モデルの事業的分析等、順次、
論述していくことする。
二.[ケース研究B]の設例とアプローチへの手法
1.[ケース研究B]の設例と概要
(1) 権利関係とその内容
地主Aは、駅に近接する立地を持つ画地991.71u( 300坪)を、借地人B、C、D、
E、F、Gの6名に各165.28u(50坪)ずつ賃貸しているものとする。(ここでは借家
関係は捨象して論を進める。)
地代 月額 242円/u 800円/坪 月額 ¥40,000
月額合計 ¥240,000 年額 ¥ 2,880,000
建蔽率 80% 容積率 400%
路線価の借地権割合 70%
(2)土地利用協同組合設立の要件
次の事項に関し、地主、借地人全員の合意が成立すれば、定期所有権に基づく再開発事業
を行う事を認める。
@ 地主の参加資格は、次の承諾料相当額の割合を地主の持分とし、全体の権利床の割
当を、行うものとする事の合意に基づき、定期所有権のための転貸を認める。
A 設立予定の土地利用協同組合(*1)は、60年間の定期所有権に基づく再開発事
業を行うものとし、原則として、従来の床面積から10%を控除した権利床(事業的に可
能な場合は等しい床面積)を取得できるものとし、残保留床は第三者に譲渡し、その益金
をもって権利床の建築費等に充当するものとする。過不足ある場合は、これを精算するも
のとする。
B 承諾料相当額の割合
ここでは、借地非訟事件に於けると同様な手法で「不動産鑑定評価に関する意見書」に
基づく割合をもって確定する。
考えられる承諾料割合は、大旨次の通り
一括数件の
単独の承諾 再開発事業の場合
イ.転貸の承諾料割合 10%前後 3〜 5%
ロ.地上権設定承諾料割合 10%前後 3〜 5%
ハ.堅固建物への条件変更料割合 10%前後 3〜 5%
ニ.定期所有権としての譲渡承諾料割合 5%前後 2〜 4%
計 11%〜19%
平均 15%
上記承諾料割合は、1件の場合と4件に渡る再開発に係わるケースとでは、調整が必要
で、「別紙ー分析 0〜3 」の場合は、15%を採用して試算したものであるが、過去の借地非訟事
件に於ける複数の承諾について行ったケースから累進適用すれば、地主への承諾料割合は、
20%前後が総合的に見て、妥当ではないかと思われるが、試算の段階で、20%では、再開発事
業自体が困難であることから、地主も参加することの利益をも考慮して、15%と調整した。
(専門家としての総合的判断)常識的な考え方からすれば、路線価で借地権割合が70%と
されていれば、地主として各借地人の70%の割合の内、各20%ずつを地
主の承諾料割合として持分に充当してほしいと思うのが通常ではなかろうか。
注1.借地人等のみで、この手法を行うことも可能であるが、この場合の承諾料に関し
ては、総合的に分析した上でないと、イージーには、割合を判定することは困難であろう。
C 以上の合意が成立したならば
イ.「土地利用協同組合設立の覚書」の作成
借契約を借地人全員及び地主の承諾の調印を行う。
権設定を、土地利用協同組合に認め、実行する。
(3)これ以後は、等価交換方式、優良建築物等整備事業または、都市再開発法に準拠して、
開発事業を行うものとする。
三.モデルの事業的分析
1.再開発事業に関連した定期所有権の分譲マンション991.72u( 300坪)の敷地上
に、総戸数52戸の内、販売予定戸数40.5戸分、1戸は管理人室、10.5戸分の権利転換床
(1戸 18.46坪の 1.5部分 27.69坪 借地人6人地主1人 計7人分) 総建築面積1200
坪 専有面積 960坪 1戸当り 18.46坪とした。
2.販売価格
専有面積当り坪価 1戸当りの価格 資料
専有面積当り 200円/坪 の 75% 150万/坪 2,769万円 … 3
1戸当り 3692万円(所有権) 80% 160万/坪 2,954万円 … 1
85% 170万/坪 3,138万円 … 0
90% 180万/坪 3,323万円 … 4
3.分析結果
75%の場合は ー 6,414万円の赤字
80%の場合は + 1,063万円の黒字
85%の場合は + 8,539万円の黒字
90%の場合は +16,015万円の黒字
これ等の余剰金からして所有権を中心としたものに比して、定期所有権で販売する場合、
ー15%程度しか割安にできないのではないかと思慮されるが、組合方式で、建設会社でマンショ
ン販売している所であれば、参加組合員として実行性が考えられるのではなかろうか。
更に、補助金制度もあることを考慮すれば、ぎりぎり20%の割引でも実現出来るのではなか
ろうか。
4.地主参加の転貸方式の定期所有権の可能性
あれば、実現性が高いし、保留床の販売にも安定性が認められることが特長としてあげ
られる。
他方、ビル化されている場合、借家人がいる場合等複雑化している点が難点である。
従来通りであるから相続時の問題は底地の鑑定書を添付すれば問題ないと思慮される。
(*2)
地代は、継続賃料として合意成立時点に於て、基準となる手法(@更地価格の純賃料
に対する一定割合に公租公課を加算する方法 A固定資産評価額に対する純賃料の一
定割合に公租公課を加算する方法等)を特定し、3年毎にみなおし、更に、土地利用
協同組合へ値上げ、更に、マンションの取得者に値上げを自動的に行う手法を相互の
契約書の中で特約していく必要がある。
尚、販売したマンションの取得者には、別途、管理費等が必要となるが、管理組合
を通じ、管理費、修繕積立金の他に取り壊し費用積立金、地代等合計月額で 2万〜 2.5
万円程度が支払える最高だとすれば、地代も1戸当り 1万〜 1.2万円程度が限界と予測さ
れる。 実際に現実に即して分析が必要。
(3)良質に保全するための手法
原則取り壊しとするが、取り壊さないで土地利用協同組合が建物を修繕して再販売する
場合、賃貸する場合が考えられるが、この場合に修繕積立金、及び取り壊し積立金等の二
分の一を所有権移転と同時に返金するとか、場合によっては建物を残価で買い取るかの選
択権を、土地利用協同組合の合議で決定できるように特約しておくことが必要であろう。
(4)債務不履行による契約解除
取得した物件については処分はできるが、債務不履行のある場合についての処理規定を
充実しておくことが大切であろう。管理組合が行うのか、土地利用協同組合が行うのか等、
それによっては終了時に於ける処理に影響が出るものと認められる。
四.おわりに
[ケース研究B]では、地主参加の転貸方式に於ける定期所有権の再開発事業としてその
可能性について論究してきたが、これ等を通じて既存借地権からの定期所有権に転換する
場合には、各種の手法が考えられる。それを例示すれば次の通り。
@精算方式で行う場合
A転貸で定期所有権に移転する場合
B借地関係を合意時点で凍結して定期所有権等に移行する場合の3つの方式が考えられ
るが、今までの研究では、転貸方式、凍結方式がより現実的で、長期には、旧借地関係が、
個々的に処分されたり、一括に処分されたりするケースも出て来ることだろうし、この場
合に於ける現実に沿った評価方式も考えられよう。
その意味で、長期的に「土地利用組合」が、借地法の中で法人化が可能であれば、細分
化され、複合化されている土地問題は、法人へ収斂されていく事だろう。尚、再開発事業
についても、簡単に出来るようなシステムの改正も重要となろう。更に、この手法につい
て一層の研究を進めていきたいと考えている。
*1 建設省から通達で、「土地利用協同組合」の設立が申請出来るようにならない
か。また定期所有権の再開発に関連する事業実施の場合に、調整費、設計費等、
相当額の助成方式が考えられないか。何かの法律の一部改正とか?優良建築物
等整備事業に関連して、民間の自主性と定借の促進、 100u以上住宅の促進、
100年以上の耐用年数を持つ優良マンションの促進等を含めて考慮されないだろ
うか。
*2 収益価格と路線価の底地割合の開差額と、借地人の未利用空間部分の合計が、
保留床として利用されることから、この手法の実現性を認める事も可能であろう。それよ
りも、収益価格で底地は評価されるべき現実性が認められ、相続時に合理的である。
『既存借地権の定期所有権への移行に
関する一考察[ケース研究C]』
- 借家人居付の 借地権付建物の 売買に関連して -
一.はじめに
次会に出かけた折、そこのおかみから相談された件に関し、商工会議所の相談日に来る
ように話をしたところ、資料を持参して相談にみえた。
そのとき、どの様な話をしたか約7〜8年前の事であったが、先日、突然そのおかみか
ら電話があり、是非処理をお願いしたい、という事で再度商工会議所の相談日に来てもら
う事とした。
おかみの考えでは、借地人のAが旧地主から譲り受けた新地主Bと訴訟事件(家屋収去
土地明渡事件)で勝訴したが、その後Aが死亡し、その息子A(養子に出した)が相続人
となった。しかし、地主Bからは、相変わらず家屋収去土地明渡しの申し入れがあり、従
来から供託中の地代は、そのまま続けているとの事であった。
空き家となった家を、このおかみDが、借家人として住み付き、平成元年頃より現在に
至っている。このおかみDが、どうしてもこの家を取得したいと奔走し、相続人Aの名義
変更の手続き等研究し、ようやくAの相続登記も完了した。しかし、Aは処分してもよい
が、どうも地主との人間関係がおかしくなっているままで自分が動くのは、いやだと言う
ことになった。
そこで、おかみDは、私を思い出して処理を頼みたいと言うことになった次第である。
この場合の手法はいろいろ考えられる所であるが、ここまで地主との感情問題が、こじ
れてしまっていると、なかなか難しいと予測される。 この関係を、一応略記すると、次
の通りとなる。
2.借家人と家主(借地人)及び地主との関係
一応「借家人が居付の状態で当該借地権付建物を譲り受ける場合の適正価格」で、前記
おかみDが、譲り受ける売買予約契約を、Aと行う。 地主の承諾または、底地の売買
の承諾等、条件が整えば、前記条件に基づく鑑定評価額で、売買も可能であるが、問題は、
地主の承諾が、得られない場合、借地非訟事件としての「地主に代わる裁判所の許可の決
定」の手法がある。しかし、地主の優先買い取り請求権が、発動されると、建物を地主
に買い取られてしまい、Aは、資金回収が出来る点、容認も出来るが、問題は譲り受け
るために奔走してきたおかみである。
後)譲渡担保としてDの名義に変更し、家賃と金利を相殺し、地代相当額を地主に支払
う方式が考えられる。しかし、もっと合理的な手法がないか多々考えているうちに[ケ
ース研究C]という形態をとれば、地主もある程度納得してもらえるのではなかろうか。
定期所有権への移行として、[ケース研究A]の応用方式として以下考察していく。
二.調整方式に基づく既存借地権から定期所有権への移行
1.地主Bと借家人Dの関係
(1)権利譲渡の借地人Aに代わって、権利譲受の承諾料相当額(借地権価格の10%)を
DはAに代わってBに支払う。
100万円×
0.7× 0.1×33坪 = 231万円 ………… イ
(2)借地権から定期所有権80年への移行の合意
@ 借地権から地上権設定に関する承諾料について
更新料から考えれば借地権価格の 3%が相当として
100万円× 0.7×0.03×33坪 × 4回分= 277.2万円 …… ロ
地上権設定についての取引上の慣行からして借地権の10〜20%程度であるから
80年間を考慮して15%
100万円× 0.7×33坪 ×0.15 = 345.5万円 …… ハ
80年の取り壊し費用相当額、及び名義変更手続き費用相当額の前払金として
5万円 × 30坪 = 150万円 ……… ニ
イ+ロ+ハ+ニ = 1003.7万円 = 1000万円
従って、旧借地権から定期借地権80年の地上権設定契約に移行する事に、合意する
旨の契約書の締結後、期日を定め、地上権設定登記手続きと同時に、全額または、残金
の支払いを行う。
注 地代は、固定資産税のみの支払いをDにさせるか、または、固定資産税と同額の地
代を特定するか。
A 現在進行中の取引である事を考慮し、あらゆる事態に対処出来るよう調整方法を検
討している中で、地主が、土地を返却してほしい気持に対して、相当の一時金を受領
し、更に、孫の代になって、返却される事の現実と、将来の希望の産物として考察し
た。 今後どのように変化していくか、私自身期待している所である。
三.おわりに
このように、既存借地権から定期所有権への移行の手法は、将に、土地の有効利用を前
提とした、地主と借地人の無償で取り上げられた借地権の取り戻しの相剋なのかも知れな
い。 その意味では、今後のカウンセラー業務及び、コンサルティング業務として浮上して
来る分野ではないかと思考される。将に知恵が財を産み出す時代の到来なのかも知れない。