ムカデ咬傷の温熱療法

正門 近郊の自然再発見玄関

ムカデにかまれたときの激痛が温熱療法でおさまることを発見したときの記録

受傷時のようす

 1985年7月25日, 稲佐山(長崎市内の 有名な 観光地) 山頂西方の 斜面で 地質調査を おこなっていました. ゆうがたになり, 福田のほうに むけて 下山を はじめて しばらく たったころ, てで たちぎを にぎった 瞬間 (やまの なかでは ころばないように しばしば きに つかまりながら あるきます), ゆびの つけねに 猛烈な いたみを 感じました.

 なにに やられたのか わかりませんが, 6mmくらいの 間隔を おいて, はりで さしたような あとが 2つ ついていました. 皮膚の 表面に 毒液や 血液などは とくに ついてなかった ようです. 最初は マムシかと おもいながら (九州本土で マムシが きにのぼる ということは まずないのですが), 一刻も はやく やまから 脱出することを かんがえ, いたみを こらえながら たにを くだりました.

 バス停に でるまで 30分ぐらい かかったように おもいますが, そのあいだも いたみは はげしく つづき, 最悪の ばあい しぬことも 覚悟しながら あるきつづけました. おりしも 雷雨に みまわれ, 精神的に 最悪の 状態でした.

 マムシで あれば, 内出血が おこり きずの 周囲が むらさきいろに なる はずですが, あるきながら きずを みていても いっこうに その 気配は ありません. つまり, マムシではなく, ほかの 動物に かまれた ということです. 問題の 動物が きの みき (または おおえだ)に とまっていたこと, はりで さしたような あとが 2つ あること, その 間隔が 6mmで あること, いたみが 猛烈であること などから, 体長15cm以上の ムカデであろう という 結論に 達しました.

 ようやく バスに のりましたが, あまりの いたさに 気分が わるくなり, ついには 意識が うすれて, 通路に すわりこんで しまいました. バスから おりた あとも そのまま 5分ぐらい (もっと ながかったかも しれません) たてませんでした. それから 自力で いえに かえりましたが, そのときの ようすは くわしく おぼえていません. 帰宅した あとも はげしい いたみが つづきました.

温熱療法の発見

 しばらくたって, 気分が もちなおしてから 入浴しました. そのとき, さされた ゆびを おゆに つけると いたみが かるくなり, 水面から あげて かぜに あたったり, 常温 (25−30℃)の みずを かけたりすると いたみが はげしくなることに 気づきました. ためしに, おいだきを して, 無理せずに 我慢できる ぐらいの 高温(42℃前後?)になった 水面付近に きずを もってきて 数分間 (もしかすると 10数分間) あたためてみると, 完全に いたみが きえて, その あとも 再発しませんでした.

 やまの なかで かまれてから 帰宅して 入浴するまで, 2時間以上 たっていた はずです. その あいだ, 猛烈な いたみが ずっと つづきました. ハチ(ミツバチ と アシナガバチ)や マツモムシに さされたときは, はじめこそ 激痛でしたが, なにも しなくても せいぜい 20分ぐらいで しずまっていました. ですから ムカデ?に さされた ときの いたみが いかに 異常であるか わかります. 

 翌日以降も きずが はれることは ありませんでしたが (ハチに さされると はじめ パンパンに はれて, あとから ゴワゴワに なります), 数日たって 全身に 無数の あかい 発疹が あらわれました. かゆみが あったかどうかは おぼえていません. また, 腋下リンパ節が はれて 圧痛が ありました. そのため 皮膚科で のみぐすりを 処方されましたが, これが 感染症なのか, アレルギーなのかも いまと なっては わかりません. 以後, みのまわりで 発生した ムカデ咬傷には 温熱療法を 実行して 確実な 効果を あげています. 

 正確に いえば, このときの 動物の 正体は 不明の ままです. しかし, このときの 症状と, のちに ムカデに かまれたときの 症状が おなじなので (ただし 発疹は でませんでした), いろいろな 状況証拠と あわせて ムカデであった と かんがえて よさそうです.

 温熱療法を 実行する ときは, 可能であれば 入浴して きずの 部分を 水面の 高温部分に ひたすのが もっとも 確実です (きずの 部位を おゆの なかで 上下 または 水平方向に 移動させることで 微妙な 温度調節が できます. 温度計よりも 自覚症状のほうが 重要です. いちばん 快適に 感じる ところを さがすわけです). 水面付近以外は ぬるくても まったく 支障ありません (おゆ全体を あつく すると 熱中症になったり やけどを おこしたり する 危険が あります). あたためかたが 中途半端だと ひえたとき いたみが 再発します.

ムカデ退治の方法

 ムカデは エタノール (俗に エチルアルコールとも いいます)に つけると しにます. 薬局で 無水エタノール というのを かってきて, たかさ 10cmぐらい, 直径 5cm ぐらいの びんに いれ, 蒸発しないように ふたを して, ムカデの 出現に そなえています. 消毒用アルコールは エタノールと みずの 混合物なので, 保存している あいだに エタノールが さきに 蒸発して 濃度が さがってしまいます. ですから, かならず 無水エタノールを つかいます. 無水エタノールは てに ついても ほとんど 無害です (ただし きずに つくと 有害です). たいへん 引火しやすいので 細心の 注意が 必要です (静電気厳禁・火気厳禁).

 2010年になってから ムカデを つかまえるときは ながさ 20cmぐらいの がっしりした ピンセットを つかっています. これが いちばん 確実で 安全です (不安なら もっと おおきい ピンセットを つかっても よい). さきのほうが ギザギザに なっている ものが すべりません. できるだけ あたまに ちかいところを はさんで つかまえます. そのまま あたまから エタノールいりの びんの なかに つっこみます. ピンセットで はさんでいる あいだに ムカデが うごいて しっぽが てに ふれることが ありますが, なにごとも おこりませんので, しっかり もっておくことが 重要です. エタノールに つっこまれた ムカデは はじめ あばれますが, 短時間で うごけなく なりますので, ふたを して, そのままに しておきます. 完全に しんだら あとは すてるなり, そのまま 液浸標本に するなり, ひきあげて 乾燥標本に するなり, 自由です.

 ピンセットが ないときは わりばしが つかいやすいと おもいます (以前は わりばしを つかっていました). いざというときに つかえるかどうか, あらかじめ ものを つかんで たしかめておくのが よいでしょう. さきが まるい はしや ツルツルした はしは すべって にげられる おそれが ありますので, よくありません.

 ムカデが でそうなときは これらの 道具を まくらもとに おいて ねると すこしは ましになります. カサカサいう おとが きこえたときは ムカデの あしおと かもしれません. そのようなときは まず エタノールびんの ふたを あけておきます. それから ピンセット (または わりばし)を もって, 捕獲に とりかかります. 順序を まちがうと かたてに ムカデを もったまま, もういっぽうの てで びんの ふたを あけることになるので たいへんです. さされたときも 被害を ひろげないように, とりあえず 捕獲を こころみます (これらは ふたり 以上  いれば 同時進行も できます). 

 なにより パニックを おこさない ことが かんじんです. そのためにも ひごろから イメージトレーニングを しておくのが よいと おもいます.

独立発見された温熱療法の症例

ムカデ毒の対処方法(相互リンク)

 私設研究所Neo-Tech-Labを 開設されている 上田智章さんが 温熱療法を 独自に 発見された いきさつと, その 公表によって 検証された 温熱療法の 体験が 40例以上 掲載されています.  

 なお, 当館仮想館長が この 25年間 ムカデに かかわってきた 経験に てらすと, ムカデの 毒は かみついたときに きばから 注入されるように かんがえられます (後日, くわしい 説明を 追加します)が, この 点に 関して 上田さんは 独自の 仮説を のべておられます.

 2010年9月2日に ムカデの 液浸標本を とりだして, きばを 観察したところ, きばの くろい 部分の 内側全体に ふかい われめが みえました. われめが おくのほうで どこまで つづいているか 現時点では わかりません. したがって, この われめ全体から 毒が ふきだしているかも しれませんし, あるいは 上田さんの 説のように われめの ねもとから 毒が でて われめに そって ひろがっているのかも しれません. 

正門 近郊の自然再発見玄関


制作・著作 (C)布袋 厚 2010年