最終兵器彼女

高橋しん

 第1巻の後書きに作者の高橋しん氏はこう書いています。
 『「最終兵器彼女」は,私の初めてのラブ・ストーリーです』と....
 まさにそのとおり,これは哀しいまでに切ないラブ・ストーリーなのです。

 実は以前から,書店でこの本を見かけて(特に第1巻の表紙の女の子が滅茶苦茶可愛いかったので)気にはなっていたんです。
 でも,タイトルが「最終兵器彼女」でしょ。何だかとんでもなく恥ずかしいラブ・コメなのでは(実は「最終兵器彼女」とは,『最終兵器のような究極の彼女』のことだと思っていました(^^;)....と敬遠していたんですよね。
 まさか本当に言葉通りの『最終兵器』だったとは....

 物語は北海道のある街から始まります(札幌の近くにある海辺の街といえば,やはり小樽なんでしょうね)。高校3年生のシュウジは5日前から同級生のちせと付き合い始めますが,何となくお互いにギクシャクとして上手く付き合うことができません....と粗筋を書くと,どこからどう見てもラブコメですよね。
 実際,第1巻第1章の『ぼくたちは,恋していく。』は,これだけ単体でも短編として少女マンガに掲載されても少しもおかしくないくらいラブコメとしての完成度の高い作品となっています。
 ところが,第2章の『「ごめんなさい」と彼女は。』で,突然ちせは最終兵器としてシュウジの前に現れるのです(しかも,その理由はまったく語られること無しに)。
 
突然最終兵器となってしまったちせに戸惑うシュウジ。そりゃそうでしょう(^^;)v
 普段の彼女はそれ以前のどじで可愛い『ちせ』のままなのに,ポケベルで呼び出しがあると最終兵器となって敵をやっつける...って,文章にしたら絶対にギャグ・マンガにしか思えませんよね。
 でも,
哀しいまでにラブ・ストーリーなんです。『ちせ』の交換日記は涙無しには読むことができません。
 実験的なSFとラブコメがここまで無理なく融合したマンガは初めて見ました。

 やがてちせは最終兵器として成長し続け,ひとつの街をあっという間に消し去ってしまうような力を持つようになります。この頃から戦場の場面が増えるのですが。戦争の理由も明らかにされず,またどこと戦っているのかすらもわかりません。だからこそ,かえって戦争が元来持っている不条理をより強く感じることができるのですね。。
 たとえば,第3巻第5章『この星で-(1)』のナカムラの死の場面を見れば,自己愛の固まりのような某マンガ家の『戦争論』がいかに皮相的なものであるかが良くわかります(まあ,確かにあちらの方が分かりやすいから世間的には受けるのかもしれませんけれどね)。

 第3巻第5章『この星で-(4)』で,恋をすることを恐れるようになってしまったシュウジとちせは元のクラスメイトに戻ります。もちろん,二人はまだ互いの事が好きで好きでたまらないのにも関わらずです....この場面の切なさは,本当に心が苦しくなりますね。

 第4巻になると,ちせはもう高校に通うこともやめ,最終兵器としての行動に力を入れるようになります(戦いを急いでいるように思われるのは,彼女自身の中で何かが始まっているからなのでしょうか?)

 いよいよ次の第5巻で最後となる予定ですが,いったいどのような結末になるのでしょう?
 決してハッピー・エンドにはならないことはわかるのですが,いったいどのような結末になるのか気になって仕方ありませんね。

ところで,丘の上にある高校(しかもちょっぴりどじな女の子と通学する)という設定は,どっかで見たことはありませんか?
 そう,『
To Heart』です。後書きの「参考文献」には入っていないのですが,ちせって,あかりとマルチを足して割ったような性格だし,ちせの友達のアケミは志保みたいだし,なんか共通点があるんですよね....他にも屋上でお弁当を食べるイベントとか...なんて考えるのは,ヲタクのなせる技ですね(^^;)...困ったもんだ...

2001/04/14