喜劇新思想大系

 『喜劇新思想大系』は,現在はマンガ家を廃業し小説家として活躍している山上たつひこが『がきデカ』で大ブレイクする直前の1972年7月から1974年4月まで『マンガストーリー』という雑誌に連載していたギャグマンガです。

 山上たつひこといえば『がきデカ』を代表とするギャグマンガ家として有名ですが,実は『喜劇新思想大系』以前はどちらかといえば、シリアスなマンガを描く人だったんですよね。特に『光る風』は日本が軍隊を持ち海外派兵をする近未来を舞台とした超シリアスなストーリーであり(これは現在こそ読むべきマンガだと思います),とても同じマンガ家が描いた作品とは思えません。

 そして,この『喜劇新思想大系』こそが山上たつひこがストーリー物からギャグ物へと転向する橋渡しとなった記念すべき作品なのです。この作品の成功があったからこそ山上たつひこは『がきデカ』を生み出すことができたといっても過言ではないでしょう。

 とはいえ,初めのころはストーリー・マンガの色が濃く残っており,ギャグも警察や政治をおちょくったような理屈っぽいものが多くて,山上たつひこ自身がかなり苦しんでいる様子が見られます。
 これが後の『がきデカ』にも通じるエロ・グロ・ナンセンスを主軸するようになると,個性的で異常な脇役達の活躍もあって,ギャグの破壊力も大幅にUPしたのです。

 『喜劇新思想大系』にあって『がきデカ』にないもの,それは『恋愛』と『SEX』です。特に前者は青春のやるせなさ切なさをしみじみと感じさせるものがあり,これが『喜劇新思想大系』をただのエロ・グロ・ナンセンスのギャグ・マンガとしない大きな要因となっているです。そして私が『がきデカ』よりも『喜劇新思想大系』が好きなのも,ここに理由があるんですよね。

主な登場人物

逆向 春助 主人公。定職にはついておらずアルバイト(精液で作った糊やインチキなポルノ写真を売ったり)をして生活している。頭の中はSEX一色。小林めぐみに恋心を抱いている。
池上 筒彦 春彦の同居人。小説家を目指しており,町内素人名人会のシナリオも書いている。無修正反り出っ歯。
悶々 時次郎 春彦の同居人。陰徳寺で僧侶の修行中だが修行をしているのを見たことがない。3人の中では一番良識人か?
若尾 志麻 未亡人。割烹おますを経営。小林めぐみの姉(名字が違うのは旧姓を名乗っているからか?)。初回登場時には娘がいたはずだが,いつのまにかいなくなっている(^^;)。彼女とつきあった男は何故か精神に異常をきたす。魔性の女?
小林 めぐみ 若尾志麻の妹。美少女高校生。夜は割烹おますの手伝いをしている。
近松 亀丸 三味線の師匠。春彦達と同じアパートに住んでおり,行動をともにすることが多い。おかまであり,玉三郎というホモだちもいる。
隅田川 乱一 隅田川外科の息子。犬猫を切り刻むのが趣味。両親が病院内での患者殺しで死刑になった後,医者となる。以外と常識人なところもある。人外境魔人。