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道行く人々は、お経でも見ているかのように携帯電話ばかりを見ています。
話しかけないでという雰囲気で満ちています。
そんな雰囲気の中に、人と人のつながりがあるとは思えません。
もしあるとすれば、どんな時なのか、自分でも分かりません。
仕事帰り、駅から自転車で夜の道を走っています。
帰ったところで 家はマンションなので、誰もいません。
近所のコンビニに着くと、家に戻って何を食べようかなあと
あれこれ物色しています。
お弁当には、そろそろ飽きてきたなあ、少しお酒も飲みたいしと思ったので、
ワインと缶詰、それに水を買いました。
夜中はコンビニ以外は、歩く人もいなくて寂しい限りです。
がちゃがちゃと音を立てながら、コンビニの袋を持って、
自転車で走り出して交差点のそばに着いた時、うめき声が
耳に入ってきました。
MP3プレーヤーで音楽を聴いていれば、気づかずにそのままマンションに
帰っていたかも知れません。
たまたま音楽を聴いていなかったから、うめき声に気づいたのかもしれません。
交差点のまわりをぐるっと見回すと、建物の前に男の人が倒れています。
見過ごしてもよかったのですが、もし自分が同じ立場だったらと思うと、
少し心配になりました。
自転車で倒れている人のそばまで近づいて、「だいじょうぶですか?」と聞くと、
「だいじょうぶ」と返事がありましたが、倒れたままです。
私は自転車を近くに止めて、倒れている人のそばに近づきました。
すると、倒れている人は、ゆっくりと上体をあげると、座り込みました。
「ああ、これは飲みすぎだなあ」とすぐに分かりましたが、
自分もお酒を飲んで貧血で倒れたことがあったし、ここまで声をかけておいて
放っておくのもどうかなあと思ったので、自分でも不思議なことに
座り込んでいる人の隣に座りました。
私は救急士でもなければ医者でもないですが、もしかして頭を打っていると
まずいので、携帯電話で救急車を呼んでから、コンビニで買ったミネラルウオーターを
「飲んで」と差し出しました。
座り込んでいる人は、明らかに酔っ払っていましたが、水は飲みたかったようで、
少し飲んで、なにかぼそぼそと、独り言を言っています。
独り言の内容は、さっぱり分かりませんでしたが、相槌を打ったりしているうちに、
救急車がやってきました。
救急士の人は、一目見るなり「酔っ払いか」と吐き捨てるように言いました。
それを聞いた私は、かちんと頭にきて「酔っ払いなら診断しないでいいのか!」と、
自分でも驚くようなことを言い返しました。
救急士の人は、やれやれという感じで、それでも一通り問診をしました。
座り込んでいる人も素直に応じていました。
救急車が走り出す際に、救急士の人は私に、「気をつけて帰るんだよ」と言いました。
とりあえずだいじょうぶなんだと思った私は、座り込んでいる人に、
「ゆっくりしたら帰るといいよ」と言うと、自転車でマンションに帰りました。
次の日の朝。
ヘッドホンで音楽を聴きながら、自転車で昨日の場所に行きましたが、
座り込んでいた人はいませんでした。
無事だったらいいなあと思いながら、会社に向かいました。
生死がかかっていないと人にかかわれないものなのかなあと考え込んでいます。
誰だって自分が一番大事で、大切だから…。
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