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春を運んでくれるのは誰?
だんだんと夜が明けてきて、あたりが白く見えてくる。
まるで雲の海の中のよう。
ここまで雲は低く流れるのだろうか?
おおきな口のビンを持ったおじいさんは大きな声で呼びかける。
春を持ってきたよ。
この箱の中に春が一杯はいっているよ。
どんな春がいいかなあ?
桜の咲き誇る春。
新入生の真新しい制服がきれいな春。
つくしが生えて大地が緑に覆われている春。
白い雪が道端に残っている春。
波の音がとてもやわらかな春。
さあ、どれでもお好きな春を持っていっておくれ。
がんばれ、がんばれ。
そして、くたびれたらお休みしよう。
時間はがんばれば早いし、お休みしていても早い。
駆け足で時間は走る。
大きな口のビンの中は、虹色の宝石がたくさん入っている。
集まった子供たちは、おじいさんの話も聞かずに、
じーっと宝石を見つめている。
おじいさんは糸だらけの手を出した。
いいかい、糸を一本引くんだよ。
さあ、何色の飴がついているかな。
おいしいから、たべてごらん。
口いっぱいにほおばると、春の味がひろがるから。
どんな春の味がする?
春はどれもいい香りでしょ。
食べ終わったら夏がくるから、夏が待遠しい人はがんばろう。
そうでなかったら飴を静かに口の中にしまっておこう。
子供たちは糸を引っぱる。
飴をおいしそうに食べている。
小さな子が大きな子供のかげにかくれてじーっと飴を見ている。
おじいさんは独り言のようにつぶやいた。
春の飴はいらないのかい?
どうしていらないの?
時間がとまっちゃうよ。
幼稚園に行きたくないからだろう。
頷いたところを見ると当たりだな。
お友だちたくさんできるよ。
お友だちとたくさん遊べるよ。
お弁当だって一緒に食べられるよ。
それとも嫌いな子でもいるのかい?
だいじょうぶ、仲良くなれるよ。
おゆうぎしたり、遊んだり、ときにはけんかしたりするけれど、
みんないい子だから。
隣にいる子が飴を持ってきた。
いっこあげる、と手渡された飴を小さな子はうれしそうに
口にほおばった。
春の飴をほおばってごらん。
がんばろう、がんばろう。
ほら、勇気がわいてくるから。
怖がらないで、一緒に歩こうよ。
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