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「うーん、いいアイデアが出ないなあ・・・」
私は、原稿用紙に向かって、考え込んでいます。
部屋の中には、書きかけの原稿用紙が一面に散らばっています。
私はもの書きをして暮らしています。
お話がすらすらとできあがる時はいいのですが、
たいがいは簡単にはできません。
いつもお話のことで頭がいっぱいで、そのせいでしょうか、
私は不眠症になっていました。
さて、しばらくの間、私は原稿用紙にお話の切れ端を書いて
いましたが、どうしても文章にはなりません。
「今日はやめよう」
私は、部屋の灯りを消すと、布団にもぐり込みました。
暗闇の中、天井を見つめながら、私は、なかなか眠ることが
出来ませんでした。
「どうしようかなあ、締め切りまでにお話できないと、
生活ができないなあ」
考えている間にも、枕元の時計はかちこちと、時を刻んでいます。
私は、はやく眠りにつこうと思いました。
「ひつじでも数えるか」
どれくらいの時間が経ったでしょうか、いつのまにか私は
寝息をたてていました。
私が眠っている間のことです。
部屋の中は、書きかけの原稿用紙と同じくらいの数の
こひつじでいっぱいになっていました。
あちらこちらで、めえめえと声が聞こえています。
でも、ひつじたちは、ちゃんと話をしているつもりのようです。
「ひゃー、紙だらけだね」
「もったいないなあ」
ひつじたちは、めいめい原稿用紙を見ています。
「何だか書きかけばっかりだよ」
「この人はもの書きなんだろうね」
「ねえ、ちょっと、これ読んでみてよ」
机の上にいたひつじが、原稿用紙を口にくわえて、
机からひょいと降りました。
集まったひつじたちの輪の中に置かれた原稿用紙には、
こんなことが書いてありました。
「ひつじは紙を食べてしまう
おまけにひつじの知っている言葉はめえめえだけ
読書ができない悲しい動物」
これを読んだひつじたちは、怒り出してしまいました。
「ぼくたちだって本を読むことくらいできるぞ」
「そうだそうだ、すごくいいお話、いっぱい読んでいるんだから」
「そうそう、それもこの人の書いたお話より感動したお話ばっかりね」
ひとしきり言い終わると、ひつじたちは、口々に言いました。
「こうなったら、ぼくたちがお話を書こう」
「そうしよう、そうしよう」
時計が朝を告げる音で、私は目をさましました。
「お話、考えないと・・・」
そう思いながら机の上を見て、私はびっくりしました。
「あれっ、原稿、できている」
きちんと二つ折りにされて綴じられている原稿の表紙には、
こんな題名が書いてありました。
「ひつじの書いたお話」
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