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たくさんの商店や家が雑然と立ち並ぶ街の駅前通り。
その駅前の一本道に、シロツメクサが咲いている一角がありました。
駅を利用している人たちはみんな知っていて、学校帰りの女学生や、
勤め人は、学校であったことや、好きな人のことをそっと話したり、
花を見てほっと一息ついたりしていました。
道端に雑草のように咲いているシロツメクサは、
それとなく人々の心に入り込んでいる、そんな存在でした。
木枯らしが吹きつける日のこと。
けたたましい音とともに、駅前の道の工事が始まりました。
道ゆく人は、細くなった脇道を通りながら、それとなくシロツメクサの
ことが気になって仕方ありませんでした。
「残しておいてもらいたい」と願っている人。
「抜かれてしまうんだろうな」とあきらめている人。
想いはさまざまでしたが、見慣れた白い、小さな風景が
なくなるのかと思うと、寂しい気持ちで、駅へと入って行きました。
めずらしく雪が降る中で続けられた工事で、シロツメクサは何気なく、
引き抜かれてしまいました。
夕方に駅に着いた人たちは、雪があんまり降っているので、
シロツメクサがどうなったのか、よくわかりませんでした。
それで、工事をしている人に口々に聞いていました。
「シロツメクサはどうしたのですか?」
工事をしている人の答はいつも一緒でした。
「ああ、あそこは掘り起こしたから、抜いちゃったんじゃないか」
その答に、みんながっかりしました。
そして、街一面に降り広がる雪をながめては、シロツメクサのことを
想いつつ、家路を急いでいました。
雪がやんで、日差しがまぶしい次の日の朝。
人々は窓をあけて、ほーっと見とれていました。
街中が、一面まっ白でした。
でも、雪はすでに溶けきっていました。
代わりに、咲き乱れたシロツメクサで、うめつくされていたのでした。
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