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透き通るような、薄い日の光がまぶしい冬の朝。
同じ格好をした人々が、同じ方を向いて、まるで何かに
とりつかれたかのように歩いて行きます。
どの季節でも変わらない、一年中続く風景。
その列を乱さないように付いていく、一人の娘がいました。
娘は、その年の春に会社勤めを始めました。
勤め始めた頃は、不安を抱きながらも、期待の方が大きかった
ものでした。
毎日、必死になって仕事に慣れようと働きました。
娘の勤めている会社の方も、新しく入ってきた人を早く
一人前にしようと、さまざまな方法で教育していきました。
そのかいもあって、娘は一人前の「社会人」となりました。
そして迎えた初めての冬。
娘は、毎日考え込むようになりました。
「社会人って一体どんな人のことを言うんだろう。
まわりの人は立派な社会人になったって言ってくれるけど、
どうしてそうなっちゃったのだろう。わたしは社会人に
なったつもりはないのに、どうして社会人なんて呼ばれて
しまうんだろう」
同じ会社の人に聞いたりもしました。
「どうして私たちは社会人って呼ばれるのかしら?」
すると、決まってこんな答が返ってきました。
「それは、働いて、一人で生活しているからだよ。
みんな形はどうあれ、学校を経て、社会の中で働いて
生活していくのだから。そういう風になった人のことを
社会人と言うんだよ」
娘はその答を聞くと、「社会人」が何か人生の目標の
ようなものに見えてしまって仕方ありませんでした。
みんな社会人になるために、そう呼ばれるために生きて
きたのかと思うと娘はとても寂しい気持ちになるのでした。
そして、自分もそういう生き方をしているのかと思うと、
娘は会社勤めをすることに疑問を持ち始めたのです。
そんなことを考えながら、人混みの中を歩いているうちに、
足元がやわらかいことに気づきました。
歩き心地がいいなあと思いながら、ふと下を見ると、
歩道一面に黄色く色づいた銀杏の落葉が敷き詰められていました。
「わあ、こんなに銀杏の葉が・・・。でもいつ散ったのかしら」
娘は、銀杏の道を歩いていることに気づくと、きゅうに
うれしくなりました。
「この道、どこまで続いているんだろう」
そう思うと、娘は銀杏の落葉を見つめながら、先へ先へと
歩き続けました。
いつものビルを通り過ぎて。
会社の前を通り過ぎて。
大きな交差点があっても、その先に金色の道が見えると、
まだいけると思い、さらにその先へと歩き続けました。
やがて、銀杏並木も途絶え、普通の歩道になったところで、娘は、
「ああ、やっと終わった。ここまで続いていたんだ」
と、満足げに言いました。
そして、ひと休みしようと思い、あたりを見回すと、公園のような
ところがすぐそばにあるのに気づきました。
「あそこで少し休もう」
娘は、低い柵を通って、中に入りました。
入った途端、娘は、目を見張りました。
中は、一面の銀杏の落葉で埋め尽くされていたのです。
「わあー、ここにもある」
娘はうれしくなって、近くにあったベンチに腰掛けました。
そして、金色の草原のような風景に見とれていました。
「一人で大丈夫?」
「ああ、大丈夫じゃよ」
「じゃあ、ここで」
若者は、一人を車から降ろすと、さっそうと走り去っていきました。
車から降りた人は、しばらく柵のところを見ていましたが、
やがてため息をつくと、静かに歩き始めました。
ベンチのところまで来ると、一人の老女が、幸せそうな顔をして
座っているのが見えました。
「そんなに老人ホームはいいのかねえ」
腰を曲げながら、柵を通ってきた老女は、そう言いながら
金色の広場を抜けると、宿舎の方へと歩いていきました。
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