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朝の通勤ラッシュ。
バスの中は、疲れた顔でいっぱいです。
たいていの客は、駅に向かっていますが、私はいつも、途中にある公園の
ところで、バスから降りてしまいます。
だからといって、別に仕事に行くのをやめたわけではありません。
私の仕事場は「公園」なのです。
私は、公園の整備員です。
公園の中を見回って、ごみを拾ったり、草花に水をあげたりするのが私の仕事です。
これが意外と大変な仕事で、一日中、広い公園を走り回らなければなりません。
全部見回り終わると、もう日は暮れています。
体もへとへとに疲れています。
が、私は、草のにおいのするこの仕事が気に入っていましたので、毎日はり切って
仕事をしていました。
朝の通勤ラッシュ。
バスの中は、疲れた顔でいっぱいです。
しかし、私の顔も疲れていました。
バスを降りると、いつもと違う、重い足取りで公園へ向かいました。
今日は花火大会の日。
多くの人が、夜空に開く大輪の花を近くで見ようと、公園の中にある芝生の広場に
集まってきています。
宴会をしている人々。
早く始まらないかと話し合う人々。
芝生の上で遊び回る子供たち。
私は、事務所の中で、ため息をついていました。
花火大会が終わって、人々が帰ったあとに、広場の整備をしなければならなかった
からです。
「ドーン、ドドーン」
花火の打ち上げが始まりました。
人々はみんな、上を向いて見とれています。
が、すぐに下を向いて、目をこすったり、服をはたいたりしています。
打ち上げ場が近いので、花火の燃えかすが、広場に雨のように降ってくるからです。
私は、広場の整備をどうしようかと考えてしまっていて、花火どころではありません。
「近くで見ると、迫力あるね」
「でも、この燃えかす、すごいね」
人々は口々に言いながらも、花火に見とれています。
私は、仕事に備えて仮眠をしました。
「花火大会、終わりましたので、あとよろしくお願いします」
花火大会の主催者の声で、私は起きました。
硝煙のようなにおいのたちこめる公園は、花火大会の時の騒ぎがうそのように
静まり返っています。
私は広場へ行きました。
「まるで、ごみの山だ」
私は、芝生の上に散らばっているごみを拾い集めたあと、広場じゅうに水を
まきました。
「これで終わった」
広場のまん中にすわり、ひと息ついた途端、
「ポーン、ポポーン」
広場のあちらこちらから、小さな、小さな花火が、いっせいにあがり始めたのです。
赤や黄色の光の花が咲き乱れた広場は、まるで色とりどりの光の海のようです。
「わあ、きれいだなあ」
私が見とれていると、まわりの花から、こんな声が聞こえてきました。
「水をくれて、ありがとう。おかげで花を咲かせ、種をつくることができました。
また明日も咲かせて下さい」
その声が終わると、花は消えて、広場は、もとの暗い緑色に戻りました。
私は、立ち上がると、広場を見渡して言いました。
「こちらこそ、きれいな景色をありがとう」
朝の通勤ラッシュ。
バスの中は、疲れた顔でいっぱいです。
私は、いつものように、公園のところでバスを降りました。
私を降ろしたバスは、のろのろと、疲れた足取りで、駅へ向かって走って
行きました。
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