よみました
わたしの読んだものがたりの感想です

「安房直子コレクション」
安房 直子/文・北見葉胡/絵


 これは全部で7巻の本で構成されています。
 71の物語が収録されており、どれもこれも、
すてきな物語ばかりなのですが、初めて読んだ
物語の感想を書きたいと思います。
 なお、1巻(「ものいう動物たちのすみか」)だけは
全部読んだことがあるので、感想は省略しています。

 「てまり」
  (「なくしてしまった魔法の時間」に収録)
  いまでは見ることも滅多にないてまりを題材にした、
  あざやかな短編です。おせんのもっているてまりを
  通して、別の世界を見ることができる上に、てまりの
  持っている秘密が、お姫さまにつながっていくあたりは
  とてもきれいです。「きつねの窓」のような雰囲気を
  もっていますが、より現実的な物語ゆえに、鈴の音が
  物悲しい響きを持っていると思います。

 「空にうかんだエレベーター」
  (「見知らぬ町ふしぎな村」に収録)
  ショーウインドーの内側と外側、見られる側と見る側の
  気持ちが、ぴたっと合った時に起きる奇跡を描いています。
  言葉を純粋に信じた少女と、うさぎが巻き起こす物語で、
  景観の美しさも描いた短編です。最後の場面で、思わぬ
  どんでん返しが起きますが、その物理的な景観と、内面の
  景観の対比が見事で、この本の中では一番好きです。

 「海の口笛」
  (「見知らぬ町ふしぎな村」に収録)
  この物語は、とにもかくにも最後の場面が、とんでもなく
  おもしろいです。どちらかというと、軽いタッチで描かれた
  物語ですが、思いもよらない出来事から、物語は進みます。
  やや欲に駆られてしまう面があるにしても、最後の場面の
  壮大さ、そして簡単に受け入れてしまう人たちの気持ちよさは
  読んでいて、どことなくうれしくなりました。

 「ライラック通りの帽子屋」
  (「まよいこんだ異界の話」に収録)
  これは意外な落とし穴があるんだよというのを痛感させられる
  物語で、それゆえに読んでいて、おもしろいんだけれど、どこか
  寂しい面を持っています。
  帽子屋が不思議な帽子をかぶって、不思議な世界で素敵な帽子を
  作るのですが、この帽子を脱いだら、もとの世界に戻ります。
  矛盾した動きを、ものの見事に描いた傑作です。

 「三日月村の黒猫」
  (「まよいこんだ異界の話」に収録)
  寂しいながらも美しい物語です。洋服についているボタンから
  物語は始まるのですが、思わぬ方向へ進んでいきます。
  普通の生活でも見られる現実が、寂しさとして表現されており、
  その象徴としてボタンが出てくると言ったほうがいいのかも
  知れません。最後の最後にちょっとだけ希望を描きますが、
  安房さんの物語にしては、かなり強いメッセージが見て取れます。

 「天の鹿」
  (「恋人たちの冒険」に収録)
  本の題名を見たときに、そういう物語があったかなと思ったほど
  驚きましたが、この物語は、美しさ、想いという点では、想像を
  はるかに超えた世界を見せてくれます。三姉妹がいて、三人目で
  がらりと物語が変わっていくあたりは、読んでいてこうなって
  欲しいという気持ちが生まれました。かと言って、その通りに
  なったからといって、がっくりするどころか、うれしくなって、
  この本の中では一番好きな、大切にしたい物語です。

 「鶴の家」
  (「世界の果ての国へ」に収録)
  実は、この物語は、だいぶ前に読んだことがあります。
  個人的に安房直子さんの物語の中でも、傑作中の傑作だと
  思っていて、なかなか感想を書けませんでした。
  なので、今回も感想は書きませんが、言葉にできないほどの
  とてつもない世界を見せてくれます。
  収録されている「世界の果ての国へ」は、正直で働き者が
  出てくるものの、最後は寂しい終わり方ばかりです。
  安房直子さんらしい本だなあと思いました。

 「青い糸」
  (「世界の果ての国へ」に収録)
  この物語は、あまりの寂寥感、ありそうでない未来、
  報われない努力、人の気持ちのよりどころの美しさと
  切なさを、きれいな青い糸で表現しきった傑作です。
  おそらく安房直子さんが絶頂期に描かれたのではないかと
  思われるほど、作風がよくわかる物語です。
  マフラーを編み上げていく光景、マフラーをほどいていく
  光景は、言葉にならないほど、きれいで寂しいです。

 「エプロンをかけためんどり」
  (「めぐる季節の話」に収録)
  大きな人の浅はかさと、小さな人の純粋さが、見事に
  描かれた傑作です。めんどりが自分でたまごを産んで
  たまご焼き作る場面は、見逃しそうですが、おそらく
  断腸の思いで、それでも過去の恩を忘れなかったから
  できた芸当だと思います。このあたりをさらりと描きつつ、
  大きな人の、ある意味変な常識を、この物語では、
  ばかけたものと描いているところ、めんどりに対する初美の
  純粋な想いを伸びやかに描いているところは、とても好きです。

 


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