|
「アンソニー」
茂市久美子・作/黒井健・絵
この本を読みながら思ったことがあります。
「この物語は泣いている」と。
茂市久美子さんの物語は、どちらかというと、
さらっとした感じで描かれていると思っていたのですが、
この本は、だいぶ違っていて、力強くて、それでいて
どこか寂しいです。
アンソニーという名前の写真機を主人公にして、
そこを通して親子のつながりのようなものを見事に
描ききっています。
幻想的な世界が出てくる意味では、童話の体裁をなして
いるようにも思えますが、読んでみると現実味の強い、
それでいて優しさが詰まった印象を受けました。
絵もお話の意図を汲み取っているようで、力強いです。
特にザシキワラシの絵は、秀逸だと思いました。
短編が連作形式になっている物語で、さらりと終わる
書き方は、茂市久美子さんの作風なのですが、この本は
違った一面を見せてくれています。
一気に読んでしまいましたが、じっくりと読むと、
もっと、おもしろいかも知れないです。
ちょうど写真の物語を書いた直後に読んだだけに、
なにか縁のようなものを思い浮かべました。
|