「クッション」



  「ここはこうしてと・・・」
  当直で出勤している娘は、ノートパソコンで何事か作業をしています。
  珍しくポインティングデバイスを操作したりしています。
  
  「なんとかできたかしら」
  ノートパソコンから目をそらすと、娘は、あたりを見回しました。
  いま作ったばかりのデータを、フロッピーにセーブすると、ラベルに何か書いて
そっとポケットに入れました。
  そしてノートパソコンのデータを消去すると、娘は安心したのでしょうか、
椅子にもたれかかって、ふうっと息をつきました。

  「そろそろ交代の時間ね」
  時計を見ながら、娘は、そそくさと着替えると、本部を後にしました。

  「めずらしいわね、よほど急いで帰ったのかしら?」
  電源の入ったままのノートパソコンを見ながら、白衣の博士は、電源を切ろうと
して、その手を止めました。
  そして、ものすごい勢いでキーを打ち込んでいます。
  やがて出てきたものを見て、思わず博士は笑い出しそうになりました。
  「しようがないわね」
  そっとノートパソコンを閉じると、電源を切りました。

  その頃。
  そばかすがあどけない少女と娘は、パソコンを見ながら、楽しそうに話して
いました。
  「こんな感じの柄がいいんですね」
  「うん、でも、ほんとにいいの?」
  「ええ、こういうの作るのって好きですから・・・楽しみにしていてくださいね」
  「ありがとう」
  パソコンを操作している娘の横から、少女は、そっと言いました。
  「まだ電源切らないで・・・」
  画面の明かりだけが、夕暮れの部屋を照らしていました。

  「あら、新しい柄ね」
  「え、ええ」
  椅子に座ろうとして、先輩に声をかけられて、娘は慌てて返事をしました。
  白衣のポケットに手を入れて立ち去る先輩は、つぶやきました。
  「ふーん、そういう事ね・・・」

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