「チャーンス!」
「風邪なんだから、おとなしく寝ているのよ」
作戦部の女は、そう言うと、少し乱暴にドアをばたんと閉めました。
少年も学校に出かけていて、部屋に残っているのは、ドイツから来た、スタイル
抜群の少女ひとりです。
少女は、女が出かけるのを確認すると、ベッドから起き上がりました。
そして、パジャマ姿のままで、バスルームへと向かいました。
「遊びに行くには、絶好の日だわ」
シャワーを浴びた少女は、普段着に着替えると、外に出かけました。
繁華街をあちこち眺めながら歩いている少女。
ただでさえ目立つのですが、風邪で少し頬がピンク色しているせいか、よけいに
際立って見えます。
やがて、ゲームセンターの前で少女は立ち止まりました。
「この前は、散々だったけど、きょうは、違うからね」
ちゃりんとお金を入れると、クレーンゲームを始めました。
「あー、また、だめだー」
少女は、まだ何にも取れなくていらだっていました。
そして、ポケットから取り出したお金を入れようとしたときに、くらっとした
ような感じを受けました。
「あれ? おかしいなあ」
クレーンを操作しようにも、どうもピントが合わない感じがします。
少女は、クレーン操作に集中しようと、頭を二、三度振ると、ガラスにおでこを
くっつけるようにして、ゲームを続けていました。
ちょうどそのころ。
食べ物を買い込んだ娘が、ゲームセンターのそばを通りかかりました。
ふと見ると、クレーンゲームの前で、つらそうにしている少女。
娘は、駆け寄って聞きました。
「風邪だって聞いていたのに・・・、だいじょうぶ?」
少女は、いつものように「だいじょうぶよ!」と言おうとしましたが、風邪の
せいか、ちいさな声で「ええ」と言うのが精一杯でした。
娘は、少女のおでこに手を当てました。
「うわー、すごい熱よ、家に戻らないと・・・」
すると少女は、サルの人形を指差して、言いました。
「あれを取るまでは・・・」
娘は、くすっと笑うと、クレーンを操って、一回でサルの人形を取りました。
「はい、これ、あげるから、家に戻ろう、ついていってあげるから、ね」
少女は素直に「うん」とうなづくと、娘とともに歩き始めました。
次の日。
少女は、元気よく起き上がると、学校に行く準備を始めました。
「一日で治って、よかったわね」
「まあね、これくらいなんでもないわよ」
サルの人形を、そっと撫でながら少女はつぶやきました。
「あれだけ汗を出させられたら、誰でも風邪、治っちゃうよ」
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