「サービス、サービス?」
「きょう、はやく帰れる?」
端末の前で、忙しそうにキーをたたいている娘の後ろを、お仕事の終わった
作戦部の女が暇そうに歩きながら言いました。
「ええ、このプログラムが終われば帰れますけれど」
「そう、それじゃあ、待っているわ」
クルマのキーを、かちゃかちゃ回しながら、女は駐車場へと向かいました。
作戦本部の入り口で娘が待っていると、クルマがすごい音を立てて停まりました。
「あはは、まだ修理が終わりきっていないのよ」
「だいじょうぶですかあ?」
不安そうに尋ねる娘。
「これだから技術部は困るわね、作戦部はこれくらいのクルマなら乗り回してよ、
さあ、乗って」
娘を乗せると、女は猛烈な勢いでクルマを走らせました。
「どうしたんですか、そんなに急いで」
「はやく行かないと、バーゲン、終わっちゃうのよ」
「なんのバーゲンですかあ?」
「行けば分かるわ、飛ばすわよ」
女は、時計に目をやると、アクセルを一杯に踏み込みました。
「うわあ、これ、かわいいですね」
「これもいいわね」
なんとかバーゲンに間に合ったふたりは、あれこれ見ています。
「ちょうど欲しかったんですよお、夏だし」
「よかったわ、連れてきて。ね、この前のおわびも兼ねて、プレゼントしたいの」
「ええっ、いいんですかあ」
「いいわよ」
娘は、素直によろこんで、あれこれと見ています。
が、さすがにバーゲン品、なかなか合うものがありません。
「難しいなあ」
ふと、娘の目に、マリンブルーの色が飛び込んできました。
「あ、これ、いいなあ」
娘は、ハンガーごと手に取ると、ちらっと見て、女に言いました。
「これがいいんですけど」
女も、ちらっと見ると、驚いたように言いました。
「えっ! だいじょうぶ?」
「ぴったりですから」
そのままレジに向かおうとしている娘。
女は、あわてて娘の手をつかんで、引き止めました。
そして、小部屋の、アコーディオンドアを閉じると、そっと言いました。
「せっかくのプレゼントだから、確かめさせて・・・」
閉店の音楽が流れ出したころ。
かすかに暖かい水着を手にした女は、小部屋から出てきました。
「いま買ってくるからね」
汗だくになった娘は、うつろな目で、女の後ろ姿を眺めていました。
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