「チャイム、受け付けません」



  「ちょっとお、もうお買い物、おわり?」
  「はい、ぜんぶ買いました」
  「だったらちょっと持ってよお、重たいよお」
  「はあい」
  お買い物袋を抱えている娘と、そばかすが愛らしい少女。
  「お料理、楽しみですね」
  「そうね」
  料理好きな少女は、さっきからはしゃいでいます。
  「さ、はやく家にいきましょ」
  少女を急かす娘も、微笑んでいます。
  仲よさそうに歩いている二人は、まだ気づいていませんでした。
  白衣を着た女性が、じいーっと見つめているのを・・・

  「きょうはなにを作ろうか?」
  エプロン姿の娘と少女は、料理の本を見ながら、あれこれ考えています。
  「でも、いいの?  おうちのほうは?」
  「きょうは、姉にお願いしたからだいじょうぶです、それに・・・」
  「それに?」
  「この前、間違えちゃったおわびもしたいし」
  「そんなあ、もういいのに」
  「なんだか楽しいから・・・いやですか?」
  「いやじゃあないわよ」
  「よかったあ、さ、料理、作りましょ」
  少女は、慣れた手つきで、てきぱきと下拵えをしていきます。
  「すごいわね」
  「お料理、好きですから」
  「じゃあ、わたしは見てるだけにしようかなあ」
  「あっ、ずっるーい」
  ことことと煮物を作っている間も、二人は楽しそうにお話しています。
  そのとき、ドアのチャイムが鳴りました。
  「いるー?」
  娘は、驚きました。
  (なんでお休みの日に先輩が・・・)
  少女は、娘の困ったような顔を見ると、そっと言いました。
  「居留守、使っちゃいましょ」
  外からは先輩の声が聞こえてきます。
  「いないのお?」
  娘はお仕事の話かと気が気でない様子です。
  そして、娘が何か言おうとしたとき。
  台所の電気を消した少女は、そっと娘の口を封じました。

  「おかしいわね、さっきまで明かりがついていたのに」
  先輩は、白衣を風にたなびかせながら、なにか考えるように娘の家を後にしました。

  「またおじゃましていいですか?」
  少女の言葉に、娘はにこっと笑いました。
  「気をつけてね、おやすみ」
  「おやすみなさい」
  少女を見送った娘は、片づけもそこそこに浴室へと消えました。

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