「気になるお弁当」



  お仕事が一息ついて、娘は大きく伸びをしました。
  「さてと、お昼ごはんでも食べようかしら」
  かばんの中から、あの少女の作ってくれるお弁当を取り出したときです。
  不意に、白衣を着た博士が声をかけてきました。
  「お昼、いっしょに食べない?」
  「でも、お弁当、持ってきましたから」
  「ふふふ、実はわたしもお弁当を持ってきたのよ」
  「え?  先輩もですか?」
  「わたしの研究室で食べましょ」
  娘は、お弁当を持つと、先輩といっしょに研究室へ向かいました。

  「すごいですね」
  最新型の端末を、娘は、食い入るように見つめています。
  「さあ、ここで食べましょう」
  資料を脇に追いやると、広いテーブルができています。
  娘は、お弁当を広げると、おいしそうに食べはじめました。
  「最近、料理に凝っているのね」
  「そんなこともないですけど・・・」
  「でも、お弁当、おいしそうじゃない」
  「あ、ありがとうございます」
  娘は、まさか少女に作ってもらっているとは、間違っても言えないと思いました。
  「先輩のお弁当って?」
  「わたしは、簡単にサンドイッチを作ってみたの」
  あれこれお話しながら、食事するふたり。

  お弁当を食べおわった娘は、丁寧にお弁当箱を包んでいます。
  「おいしかった?」
  「はい」
  「少し休憩したら、また仕事ね」
  「そうですね」
  返事をしながら、娘は、みょうに眠くなってきました。
  「あら?  どうしたの?」
  「おなかいっぱいになると、眠くなってしまって・・・」
  そう言いながら、いすにもたれるように娘はうとうとしています。
  「少し眠るといいわ・・・気持ちよく・・・」
  先輩は、そう言うと、研究室のブラインドを降ろしました。

  「お仕事、がんばらなくっちゃ」
  先輩の腕に、うれしそうに寄り添う娘。
  その姿に、先輩は、うれしそうな、でも、少し複雑な表情をしていました。
  「さすがね、お弁当のことを言わないなんて・・・でもいつかは・・・」

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