「冷房装置故障」



  ひとときの安らぎ、それは休憩時間。
  「冷房が切れてしまうなんて、ついていないわ」
  大型コンピュータの並ぶ部屋の中で、うちわをパタパタと
あおぎながら、その娘は恋愛小説の本を読んでいました。
  食い入るように読みながら、娘は、自分もこんな恋愛が
できたらいいなあと、あれこれ思い描いています。
  「でも、わたしはお仕事が好きだし・・・、なかなかこういう
    出逢いってないのよね」
  本を読む娘の額から、汗が吹き出ています。
  「それにしても暑いわね、着替えないと、服がべたべたになっちゃう」
  ぱたっと本を閉じると、娘はシャワールームに行きました。

  「ここも暑いわね」
  娘は汗を洗い流すと、髪を洗い始めました。
  「あら、ここにいたのね」
  「あ、先輩」
  娘の隣で、シャワーの栓をひねる先輩。
  「暑いわね、きょうは」
  「もう、ほんとに暑くて、制服着ていたくないくらいです」
  「ところで、さっき読んでいた本はなにかしら?」
  「あ、恋愛小説です。わたし、恋愛ものが好きなんです。でも現実は
    甘くないですね」
  髪を洗いながら、少しぐちっぽい口調で話す娘。
  先輩は、娘に近づくと、シャワーの栓を全開にしました。
  「きょうはほんとに暑いわね・・・」
  「・・・」
  娘は、だんだんと、のぼせたような感覚に包まれていきました。

  白衣を着ながら先輩は言いました。
  「すべて洗い流せたかしら?」
  シャワールームで制服を着ている娘は、少しはにかんだ、でも、
すっきりした表情で、にこっと笑いました。

ショートカットページに戻ります

ホームページに戻ります