いーじー様に、このお話にでてくる「ちきちゃん」を描いていただきました。 ありがとうございます、いーじー様(^-^)
「ちょっと、イタズラしすぎたかなあ」 なおくんは、授業中も、気になって仕方ありませんでした。 隣の席を、ちらっと見ると、まだちきちゃんは、うつむいたまま、 ハンカチで顔を隠しながら、泣きじゃくっているようです。 「消しゴム、隠しただけなのになあ」 教科書を読む、なおくんの目も、どこかおちつきがありません。 まさか、こんなに泣かれるなんて、なおくんも、気落ちしてきました。 なおくんは、ちきちゃんが、好きなのです。 で、ちょっと、イタズラして、どうにかして、見つけてもらって、 話したかったのです。 「なのに、泣かせてしまった」 なおくんは、あやまろうと思ったのですが、なんとなく照れくさくて、 あやまれませんでした。 まして、いまは授業中です。 話しかけたくても、かけられないので、どうしていいのか、なおくんは 困っていました。 困っていたのは、ちきちゃんも同じでした。 なおくんに、消しゴム隠されて、見つからなかったこともあります。 けれど、ちきちゃんも、隣の席の、なおくんのことが、気になって いたのです。 「どうしてなのかなあ、ずーっと、同じクラスだからかなあ」 この小学校に入学してから、5年間、なおくんとは、ずーっと同じ クラスでした。 何度か、隣の席になったこともあります。 それなのに、今度ばかりは、ちきちゃんの気持ちは、少し違って いました。 「隣の席になれて、うれしかったのに」 話かけたいけど、でも、許せなくて、ちきちゃんは、下を向いた ままでした。 授業が半分くらいまで進んだときです。 ふわーっと、クラス中に、カレーのにおいが広がってきたのです。 「あっ、きょうはカレーだ!」 急に、生徒たちが、ざわざわと話し始めました。 「静かに!」 先生が、注意すると、生徒たちは話を止めましたが、どことなく、 みんな、そわそわしています。 なおくんも、ちきちゃんも、そわそわしていました。 「あ、カレーだ!」 その瞬間に、目が合ったからです。 ふたりとも、どうしたらいいのか、わかりませんでした。 ちきちゃんが、目を自分の教科書に戻そうとしたときに、なおくんの 小さな声を聞きました。 「ごめんな」 妙に、こそばゆい気持ちが、ちきちゃんの中に広がりました。 教科書に目を戻そうとして、ふと、机の上を見ると、隠されたはずの 消しゴムが、置いてありました。 ちらっと、ちきちゃんは、隣の席を見ました。 なおくんは、落ち着かない様子で、教科書を見ているようです。 ちきちゃんは、くすっと笑うと、なおくんに、そっと言いました。 「きょう、カレーだね」 なおくんも、ちらっと、ちきちゃんを見ると、はにかみながら、 言いました。 「うん、カレーだな」 授業が終わって、給食の時間です。 なおくんと、ちきちゃんは、楽しそうに話しながら、給食を食べました。 カレーのにおいに包まれた教室で...