忘れ貝はワスレガイか
 
  江坂輝彌氏の「化石の知識 貝塚の貝」によるとワスレガイは歴史時代には鑑賞用、玩具用とし
貝殻が珍重され、「忘れ貝」として「万葉集」などにも記され、
 内面に金泥をぬって香盒(香料を入れる容器)として使用されたとあります。 万葉集に詠まれていることを記載しているのはワスレガイだけでした。 忘れ貝と恋忘れ貝が同じ貝とすると 万葉集の忘れ貝・恋忘れ貝はマルスダレガイ科のワスレガイとなり、 アサリやハマグリなどほかの二枚貝は万葉集では詠まれていないことになります。 一方、波部忠重氏の「貝の博物誌(貝と文学)」では、万葉集などの歌集、また古事記、日本書紀などに出ている貝の名が、現在の貝と同じ種であるかは疑わしいことが多いと述べ、忘れ貝にしても特定の種であったとは思えないとしている。「わすれがい・忘れ貝」という名前が万葉集などにみられるように、まず古くから「わすれがい」という名があって、それがこの貝の和名にあてはめられたのだそうです。

 
エゾワスレガイ
Callista (Ezocallista) brevisiphonata
Carpenter 1865 北海道浜中町地先 1992年採集
異歯亜綱マルスダレガイ科マツヤマワスレガイ亜科
エゾワスレガイ属
分布 三陸以北、水深5〜30m


 
マツヤマワスレガイ
Callista chinensis (Holten,1803) 北海道江差町地先 1992年採集
異歯亜綱マルスダレガイ科マツヤマワスレガイ亜科 マツヤマワスレガイ属
分布
相模湾以南、水深5〜50m
日本海での分布記録現在のところ資料未入手:平成21(2009)年5月2日以下に加筆訂正
富山県氷見市北大町唐島付近、富山県岩瀬浜、富山市水橋、福井県高浜町の日本海でも採集されている。
出典:宮本望氏貝コレクションU(2008)富山市科学博物館収蔵資料目録第22号の60頁に

ワスレガイ
Cyclosunetta menstrualis (Menke,1843)
異歯亜綱マルスダレガイ科ワスレガイ亜科ワスレガイ属
分布
房総半島以南、熱帯太平洋、水深5〜50m

貝殻帯
  欧州の湖では、貝類の死殻の多量な堆積は、いわゆる貝殻帯(shell-zone)として古くから知られている現象です。
日本では二、三の湖で相当多数の貝殻が堆積することが宮地傳三郎氏により報告され、
また、朝比奈英三氏は北海道の藻琴湖に貝殻帯の存在を報告しています。
宮地氏は1932、1937、1937年に、それぞれJap.J.zoo.4,41−79、陸水学雑誌、7、55−63、ビィナス、7、51−74に、
朝比奈氏は1940年に陸水学雑誌、9、185−193にそれぞれ報告しています。
日本の淡水湖、汽水湖、海水湖での貝殻帯の存在と貝殻帯に堆積した貝の種類などが明らかになっているのか興味の有るところです。
また、万葉集で詠まれている恋忘れ貝や忘れ貝の歌は、海岸や干潟などの海のほかに湖でも詠まれていたのか興味の有るところです。
さらに、万葉集の歌の詠まれた時代の日本の海岸や湖沼の地形や塩分濃度などの環境条件なども知りたいところです。