〈喘息学校の思い出〉

●喘息学校で過ごした日々を経て
(5.26/97―冨沢仁之さんのメールより)

 皆さん、小児喘息の子供たちが親元を離れて療養所で生活していることを知っていますか? 小児喘息の子供のすべてがそうしているわけではありませんが、そういう世界が現実として存在しています。
 私はつい最近になってそういう療養所(兼学校)のことを知りました。そんな矢先、療養所で生活したことのある方からメールをいただきました。
 その内容は、私が勝手に想像していたこととはずいぶん違っていました。私はもっと暗い世界を想像していたのですが、この方のメールを読むかぎりでは暗さはあまり感じられません。たぶん、暗さを感じさせるような辛いことを思い出すより、楽しかったことを思い出して前向きに生きていらっしゃるせいだと思います。
 とにかく、そのメールを以下に紹介します。皆さんはどう感じられるでしょうか。
 はじめまして。27歳の自営業です。僕も生まれたときから喘息なので、仕事のことで苦労されている方、その気持ちわかります。自分もひとつの職場が続かなくて苦労しました。今は、あきらめて自分で仕事を始めました。
 僕は小学校5年から親元を離れて川崎の「井田病院」内にあった「あおぞら学園」、中学校からは横浜の「小児アレルギーセンター」に3年間いました。両校とも完全な全寮制で、同じ病気をもつ仲間たちと日々をともにしてきました。
 「あおぞら学園」は、小学校1年生から小学校6年までの学校で、生徒は全員が喘息をもっていました。病院の別病棟ということで、その学校には常に看護婦さんと寮母さん、それにドクターがいて、そこで僕たちは喘息の治療と勉強をしてきました。
 朝6時に起きて屋上で「乾布摩擦」「ラジオ体操」……寒い日はマイナス6度!! 当然、裸でがんばったものです。
 辛いこともたくさんありましたが、思い出すのは楽しいことばかりです。寮母さんが企画するいろいろな行事、同じ釜の飯を食べた仲間たち。今でも連絡を取り合って仲良くしている友達がたくさんいます。残念ながら「あおぞら学園」は今年の4月で廃校になり、この前、卒業生が集まって派手な同窓会をしてきました。
 中学校に入ってからは、横浜にある「小児アレルギーセンター」にいました。ここには、中1から中学卒業までお世話になりました。
 ここでも、「あおぞら学園」同様、きっちっとした喘息の管理をしながら勉強しました。ただここは「体力つける」のがメインで、勉強の合間をぬっては運動をしていました。設備がよく、体を鍛えまくったのを覚えています。
 薬のせいで中2のとき以来、身長が伸びていませんが、おかげさまで卒業後10年以上たった今でも多少のことなら普通の人以上にできると思います。ここでの友達には甲子園に出たやつとか県大会でよい成績を出したやつなどがいます。今でもみんな親友です。
 これらの日々は、普通の人では経験できない素晴らしいものだったと僕は思っています。
 僕はたぶん関東で五指に入る喘息もちだと思います。少なくともそう言われ続けてきました。20年以上もステロイドを服用しています。成長期に大量の薬をのんだため、いろいろな障害が出ました。薬の副作用はとても辛いものです。発作のほうが楽です。ステロイドの副作用で、ほうっておけば僕はあっと言う間にぶくぶく太ってしまいます。3日で6kg太ったこともありました。骨も異常に弱くなって、転んだだけで簡単に骨折してしまいます。「メジヘラ」などの吸入薬で心臓に負担がかかり心停止したこともありました。薬のせいで寿命も短いと思います。
 こんな重症の喘息だったからこそ療養所に入っていたのですが、しかしその療養所生活を経て僕は喘息を味方につけてこれを克服してきました。今では、発作が起きなければ普通の人より元気なほどです。27歳の今でも夜遊びばかりですし、10代の女の子ともばんばん遊んでいます。
 確かに、仕事などでは無理がきかず体調を崩すこともあるかもしれません。しかし、よほどの喘息の人でなければ問題はないと思います。薬を上手にコントロールしてのみ、気持ちに左右されない強い心を持てば大丈夫です。
 成長期に大量の薬をのんでない方がうらやましくてしょうがありません。そんな僕でもがんばっています。だから「喘息だから」と逃げてほしくありません。
 発作のときは、気持ちを落ちつけて、息を吐く。うずくまって寝ないで上を向いて大の字で寝る。苦しいときほど胸を張る。苦しいのはまだ生きている証拠で、自分で息をしようと努力ができます。僕のように大量の薬をのんで発作を無理矢理おさえこむより、安全で確実に発作が軽くなります。
 うまくは言えませんが、卑屈に思うからいけないのです。病気だと思うから発作が起きるんだと思います。世の中にはもっと辛い病気や怪我で五体すら満足でない人がたくさんいます。だからこそ喘息を病気だとは思わないでがんばってほしいと思っています。
 生意気言ってすみません。正直な気持ちです。


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