〈喘息で苦しむ人をなくす作戦〉

●喘息で苦しむ人をなくす大作戦!
〈すべての医師と看護師に喘息についての徹底講習を受けさせ、喘息患者はその修了医師を選んで受診できるようにする〉
(11.13/11)


 「喘息VOICE」の「病院がトラウマに!」というタイトルで掲載した投稿を読んであらためて考え込んだ(同じ投稿はこの「喘息TOPICS」の「『誤診』を糾弾する!」にも掲載)
 このままでは日本の喘息治療は進歩せず、ダメ医師とダメ看護師が野放しのまま、喘息で苦しむ患者さんが増える一方だ、と。専門医のくせに喘息患者を「喘息じゃない」と『誤診』するダメ医師、「サチュレーションが高いんだから苦しいはずがないでしょ」と患者を『虐待』する看護師…。
 呼吸器科の医師でも喘息患者を『誤診』するというこの恐ろしい現実を関係者はどう考えているのだろうか。医師は「喘息だと思ったらすぐ受診しましょう」と言うが、しかし、その医師たちは喘鳴のない(正しくは“聴き取りにくい”)喘息患者、サチュレーションの高い喘息患者を「喘息」と鑑別できるのだろうか
 こんな現状なのに「喘息だと思ったらすぐ受診しましょう」と言うべきではない。喘息患者が安心して受診できないなんて、これほどの異常な事態はない。この事態を異常だと医師たちは思わないのだろうか。
 「早く受診しろ」と言う前に医師は喘息について勉強すべきだと思う。「無音喘息」や「サチュレーションの高い喘息」についての知識くらいは持っていなくてはならない。じゃなければ患者としては安心して病院にも行けない。
 早めに受診するのが喘息治療にとっては最も大切なことだが、受診しても喘息ではないと『誤診』されて治療を受けられなかったり、「大したことない」と言われて満足な治療を受けられないとしたら、受診する意味がないどころか、かえってまずい
 医師も厚労省も「そんなケースは少ない」と言うかもしれないが、『Zensoku Web』に寄せられるその種のメールがこの時代になっても多いのは(昔はもっと多かった。ただし昔は吸入ステロイド療法が普及していなかったので「吸ステを出してもらえない」というメールも多かった)喘息患者を正しく診断できない医師がたくさんいることを雄弁に物語っている。「無音喘息」や「サチュレーションの高い喘息」を知らない医師が驚くほど多い(要望があればそれらの不勉強で無知な医師の実名を私の知る限りで公表してもいい)
 医師にはプライドが高い人が多いから、私たち患者にああだこうだと言われても動くまい。開業医を束ねるのは医師会らしいが、勤務医を束ねる組織はあるのだろうか。あるとしたら医師会とその組織に、医師たちの再教育をしてもらいたい。
 けれど、まあ無理だろうなと思う。だったら厚労省が動くべきだ。私は知らなかったが、その厚労省、2006年から5ヵ年計画で(ということは今年まで)「ぜんそく死ゼロ作戦」というのをやっていたみたいだ。
 厚労省のその計画では、まず「2次医療機関」ごとに専門病院を決め、地域の医師の教育を進めるとともに、都道府県に最低1ヵ所は基幹病院を決めてネットワーク化したという。具体的には、発作が起きたときに適切な救急医療が受けられるよう、医療機関名や病歴などを記入して常に身につける「患者カード」の普及を都道府県に促したらしい。
 しかし私は、そんな計画があったことも知らなかったし、「患者カード」なんてものももらわなかった。
《後期》
「基幹病院」という言葉は何度か見た。『誤診』や『虐待』に関して『Zensoku Web』にいただいたメールで読んだのだ。その投稿者たちは「基幹病院」の医師たちに『誤診』され、「基幹病院」の看護婦さんたちに『虐待』された。「基幹病院」ってどういう基準で選ばれたのだろうか。まあ、どんな病院を「基幹病院」にしたとしても、現状では医師たちの『誤診』は出るだろうし、看護婦さんたちの『虐待』も出るだろうと思う。
 喘息死を減らすために国が動いたのは日本では初めてだったのでそれなりに評価はしてあげるべきだろう。しかし、ここ数年で喘息死が着実に減ったのはこの作戦のおかげではなく、吸入ステロイド療法の普及が進んだためだったと私は思う。だいたい「発作が起きたときに適切な救急医療が受けられるよう」対策を取るなんて、本質を間違えている
 喘息死を減らすには喘息患者の治療を十分なものにすることが先決だ。その結果として喘息死が減るのであり、喘息死を減らすにはその方法しかない。喘息で死亡する人の多くが軽症患者であることからも、喘息死を減らすには軽症、あるいは自分が喘息とも思っていない「隠れ喘息患者」を発掘して彼らに本格的な正しい治療を受けさせるのが何よりも重要だ。
 「発作が起きたときに適切な救急医療が受けられるよう」な対策は、重度喘息患者対策をメインに考えているとしか思えない。そこまで悪化しないようにするのが喘息治療の基本であり、その基本ができなければ喘息死を減らすなんて無理であり、喘息死をゼロにするなんて夢のまた夢だ。はすっぱに見れば、吸入ステロイド療法の普及によって喘息死がどんどん減ってきていた時期に、このぶんなら今後も着実に減ると見た厚労省官僚が、自省の株アップを目指して「ぜんそく死ゼロ作戦」などといういかにも称賛されそうなキャンペーンを考え出したのではなかったか。
 そういう面では官僚たちは本当に頭がいいが、その頭を本気で国民のために使えよと言いたい。喘息死を減らすのは大賛成だし、努力次第でゼロにすることは可能だと私は思っている。しかし、厚労省の掲げるやり方では絶対に「喘息死ゼロ」は達成できない
 「喘息死ゼロ」は、ただ単に「喘息死ゼロ」という言葉を叫んでいても絶対に達成できない。警察が「交通死ゼロ」の標語を掲げて交通事故そのものを減らす作戦にはあまり力を入れていないのと同じようなことになる。警察のこのことに関してはどこかで同じようなことを書いた記憶があるが、ここでも書く。
 交通事故死を減らすには交通事故全体を減らさなくてはならない。重大事故になりやすいスピード違反車を捕まえてばかりいても交通死は減らない。なぜなら人身事故の大半は交差点とその近く、つまりスピードの出ていない場所で起こっているからだ。
 警察はそのことを百も承知で「交通死ゼロ」に向けて努力している姿を国民に見せて自己満足している。役人根性が見え隠れして気分が悪い。厚労省も同じなのだろう。
 喘息死を本当に減らしたいなら医師と看護師の教育が不可欠だし、患者さんへの徹底的な啓発も不可欠だ。それをしないで「喘息死ゼロを目指します」なんて簡単に言わないでほしい。徹底的にやらなきゃ無理なのだから。
 頭のいい彼らはそのくらいは気付いているはずだ。それでも「ぜんそく死ゼロ作戦」などという響きはいいが内実のないことをやったのは、「警察だけでなく厚労省も頑張ってるんですよ」というポーズだったと思う。しかし、そんなポーズに騙される国民ばかりでないことを頭のいい厚労省官僚たちは知るべきだ。
 厚労省官僚たちに言いたい。やるなら徹底的にやり、確実に成果を上げろ、と。成果を上げられなかったら全員辞職しろとも言いたい。
 例えば厚労省は「早めの受診」を患者に呼びかけたらしいが、そんな“声”を私は聞いたことがない。呼びかけるなら大々的にやるべきで、それも喘息でない一般人も含めた、できれば全国民に呼びかけないと効果はない明らかな喘息患者はもちろん、「隠れ喘息患者」の耳にもしつこいくらい届くような「声」を厚労省が発信しなければほとんど意味はなく、繰り返すが「喘息死ゼロ」なんて絶対に無理なのだ。
 もし厚労省が本気で「喘息死ゼロ」を目指すつもりがあったのなら、患者への徹底的な呼びかけをしただろう。それをしなかったのは、やはり単なるポーズだったからとしか思えない。同時にやるべき医師と看護師の教育をしなかったのも本気ではなかったからだろう。
 教育については少しはしたのかもしれないが、『Zensoku Web』に寄せられる悲痛なメールを読む限りでは「した」とは到底思えないレベルの内容だったのだと思う。厚労省がすべての医師と看護師を対象にした講習会を開き、そこで喘息の基本知識と最新治療法、そして「無音喘息」や「サチュレーションの高い喘息」などについても教える。なぜ重度喘息患者にはサチュレーションの高い人が多いのか、なぜ喘鳴が聴き取りにくくなるのかといった基本的知識も教え、無音喘息患者に協力してもらって聴こえにくい喘鳴を聴き取る技術を習得させるといった実技講習も行う
 すべての医師と看護師に講習を受けさせるのが現実的でないと言うなら、呼吸器科の医師と主な看護師たちだけでもいい。ただし、その場合は呼吸器科以外の医師は原則として喘息患者を診ないことにする。明らかに喘息で治療法もこれしかないと断定できるケースとか呼吸器科以外が専門でも喘息治療に精通している医師は別として、例えば呼吸器科以外の医師が喘息かどうか鑑別が難しい患者などを診察したときは、呼吸器科の専門医に診てもらうよう患者に勧めるのだ。
 一番いいのはやはり呼吸器科も含めて全科の医師すべてにその講習を強制的に受けさせることだと思うが、現実的にそれは難しいかもしれないから、次善の策として呼吸器科の医師と看護師だけを対象にみっちりと講習を受けてもらう。これなら現実的だと思うから十分に可能だろう。いずれにしても、喘息患者や喘息かもしれない人を簡単な問診や聴診などだけで安易に「喘息でない」と診断(誤診)することがなくなるようにできればそれでいい
 ちなみに、その講習のことは国民一般に大々的に宣伝してその講習修了医師を受診すれば安心だということを周知させる。講習を受けて知識と技術を確かに習得した医師や看護師にはそれを証明する賞状みたいなものを渡す。医師はそれを額に入れて待合室にでも飾り、それを見て患者が医師を選ぶことができるようにするわけだ。
 そこまですれば「喘息死ゼロ」は夢ではないと思う。しかし、そこまでしないのなら、しつこく言うけど「喘息死ゼロ」は夢のまた夢だ。と言っても「喘息死ゼロ」の目標はそれほど困難なものではないと思う。
 厚労省も医師も看護師も、やるべきこと、やればできることをサボってやらないでいるから実現できないだけだ。やるべきことをきちんとやり、やればできる勉強などをしっかりやれば「喘息死ゼロ」は十分に可能な目標だと思う。可能なのにあきらめている連中には辞職か廃業してもらい、やる気のある官僚と医師と看護師で「喘息死ゼロ」を目指してほしい
 医師と看護師の教育もしないで「受診しろ」と安易に言うのは現状では無責任極まる「お医者さんも看護婦さんも喘息のことを勉強してるから大丈夫、受診してね」と言えるような環境を整えてほしい。患者や患者とみられる人たちに受診を勧めるのはその後だ。
 そうすれば患者は安心して受診できる。患者が安心して受診もできないというこの異常事態を放っておくのは犯罪だと言っても言い過ぎではないと思う。厚労相さん、この現実をよく胸に叩き込んで、今度は本気の「大作戦」を実行してほしい。
 「ぜんそく死ゼロ作戦」ではダメだよ。「ぜんそくで苦しむ人をなくす大作戦」だからね。今度は本質を間違えないで役人としての義務をきちんと果たしてもらいたい



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