〈シムビコートの使用実感〉

●シムビコートを4ヵ月半使ってみて
〈弱めの抗炎症作用を他の吸ステ併用で補えば十分使える上出来の薬〉
(6.26/11)

 シムビコート(パルミコートとホルメテロールの合剤)がなくなってきた。あと数日分しかない。完全になくなったら、あとはフルタイドとオルベスコとセレベントで凌ごうと考えている。

シムビコート フルタイドディスカス オルベスコ セレベントディスカス


 シムビコートを使って4ヵ月半くらい経つ。まだ4ヵ月という見方もできるが、もう4ヵ月経ったという見方もできる。どちらが正しいかわからないが、この4ヵ月半の私の喘息状態を報告することはできる。
 結論から言えば、シムビコートはまずまず私の期待に応えてくれた。フルタイドディスカスとセレベントディスカスでコントロールしていたそれ以前とほぼ変わらない状態を保つことができた。「フルタイド+セレベント」のセットより優れていたかとなると断言はできないが、「シムビコート+フルタイド」で、少なくとも同程度の効果が持続的に感じられた。
 ただしシムビコート(パルミコート)抗炎症効果はフルタイドより劣ると感じた。
 だからシムビコートだけを使うなら、例えばアドエア(フルタイドとセレベントの合剤)を1日に2吸入していた人なら3吸入か4吸入したほうがいいように思う。あるいは、私のようにフルタイドなど他の吸ステを併用したほうが効果的だと思う。
 一方、シムビコート(ホルメテロール)気管支拡張効果はセレベントより断然勝ると感じた。
 効果の持続時間はやや短い気がしたが、吸入してから効きはじめるまでが実に早くて驚いた。メプチンエアーなどの気管支拡張薬を吸ったような感覚だと言うと大袈裟だが、吸ってから30分くらい経たないと効果が出てこないセレベントと比較すれば「メプチンみたいだ」という感想を漏らしたくなる。
 しかも、私の場合、セレベントを使うと筋けいれんの副作用が出るのだが、シムビコートではそれが出なかった。セレベントで筋けいれんの副作用が出る私は、セレベントを使うなら1日1吸入しかできなかった。しかしシムビコートは2吸入しても3吸入しても何の異常も出なかった。
 この副作用に関しては私だけのことかもしれないので大きな声では言いたくないが、セレベントのようにまた筋肉がツルのかなぁと怖々だった私としては、それがまったくなかったので、「シムビコートは凄い!」とつい声が大きくなってしまう。

 ただし、吸入ステロイド薬と長時間持続型の気管支拡張薬の合剤については、私は今にいたってもあまり評価したくない気分を持っている。気管支拡張薬でQOLを高く維持できても、喘息の原因である気道粘膜の慢性炎症がそのままでは治療とは言えないからだ。
 ピークフロー値の高い患者さんが使うのならわかる。例えば基準値を越えるようなピークフロー値を安定的に吹いている人が吸入するのであれば、薬剤の肺への到達率が高く、気管支拡張薬の恩恵とともに吸入ステロイド薬の恩恵も十分に受けられるだろう。しかし、ピークフロー値の低い患者さんが合剤を使っても効果は少ないと思う。
 例えば基準値(ピークフローメーターに付いてくる基準値表で見る自分の基準値はあまりアテにならない。気管支拡張薬を吸入した後に記録したそれまでの最高値よりやや高い値を基準値だと考えたほうがいいと私は思っている)が500なのに、普段のピークフロー値の平均が300だったとしよう。300は500の6割だから、ちょっと危険な状態だと言っていい。
 喘息の状態は別として、そのピークフロー値でシムビコートなどの合剤を使うとしよう。私は、吸入してもあまり効果がないと思う。
 300はよほど喘息がひどい人か子供の値であり(小柄な方は別)、その気道は相当に狭くなっている。そんな気道で吸入薬を吸っても肺の奥までは吸い込めないと思う。
 ピークフロー値の低いそのような患者さんは、まずメプチンエアーなどで気道を広げておき、そのうえで吸ステを吸うのが効果的だと私は考えている。シムビコートの画期的な吸入器(タービュヘラー)は気道の狭い人でもかなりうまく吸入できるらしいが、それでも300ではどうかなという疑問を抱く。300なら何とかなるかもしれないが200だったら確実に無駄だろうと思う。アドエアなら300では絶対に無理だと思う。
 だから、ピークフロー値の低い患者さんがシムビコートなどの合剤だけを使うことには疑問を持つ。
 毎日使っていればホルメテロールの血中濃度が上がって気道が常に広がるようになるだろうから、そうであれば合剤を使っても肺の奥まで吸い込めるようになるだろう。しかし、ホルメテロールの持続時間がやや短いと私は感じたので、例えば毎日朝と晩に吸入をする人の場合、朝に吸入して気道が広がっても、晩には狭まってしまう気がするので、であれば朝も晩も吸ステを満足に吸入できないことになる。それを防ぐには吸入の間隔を短くすればいいが、働いている人には難しいと思う。
 それよりは、毎回の吸入前にメプチンエアーをひと吸いしてからシムビコートなどを吸入したほうが間違いなく効果的だと思うので、そうしたほうがいいと思う。

 とはいっても、長時間持続型の気管支拡張薬は喘息患者のQOLを確かに大きく引き上げたことは事実で、その貢献度は高い。吸入ステロイド薬だけでは症状が頭打ちの患者さんなどにとっては救いの神的な存在にさえなっているケースもあるかもしれない。そういう点では、長時間持続型の気管支拡張薬の登場は、喘息治療と喘息患者の世界を大きく変えた。
 その長時間持続型の気管支拡張薬と吸入ステロイド薬を合剤にしたシムビコートやアドエアは、気管支拡張薬を吸って吸ステを吸ってという2つの作業を1つにしてくれるので、患者にとっては使い勝手が良く、無精な患者さんでも毎日の吸入をちゃんとするにはとても効果的だと思う。
 しかし、しつこく言うが、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬の合剤を吸入すればピークフロー値は上がって当たり前であり、そのことを決して忘れてはならない。どういう理由にしろピークフロー値が上がり呼吸が楽になるのならそれでいいじゃないかという考え方をする人もいるが、喘息の原因である気道粘膜の慢性炎症を着実に鎮めることを最優先に考えた治療をしていないと、いくら軽度の喘息でもいつ大発作が起こるかわからないので非常に危険である。

 喘息治療の究極的目標は「完治」である。しかし、喘息が完治することは稀だ。したがって目標は一段下げて、「最低限の薬で生活できるようになること」ということになる。
 そのために第一に必要なのは、気道粘膜の慢性炎症を鎮めつづけることだ。その役目は現代医学では吸入ステロイド薬にしかできない。だから吸ステを毎日十分な量、吸入しつづけることが最も大切で絶対に欠かせない
 それをしつつ、長時間持続型の気管支拡張薬を使うのなら何も問題がない。それで生活するのが楽になり人生を快適に過ごせるのならそのほうがいい。吸ステと長時間持続型の気管支拡張薬の合剤を使う場合でも同じことが言える。
 気管支拡張薬で気道が広がりピークフロー値が上がり動くのが楽になるのは、言わば上げ底の靴を履いて背が伸びたと感じるのに似ている。それで「本当に背が伸びた」と勘違いしては絶対にいけない。背丈(気道粘膜の慢性炎症)は変わっていないのだということを自分に言い聞かせ、吸ステの吸入だけが本当の治療なのだと常に意識しておきたいものだ。
 喘息患者であればこのことは絶対に忘れてはならない。具体的にピークフロー値で言えば、シムビコートを吸入後は1割から2割も上がるので、そのことをしっかり認識しておく必要がある。例えば500吹けたとしても、実際は450以下でしかないと思っていたほうがいい。400だったら350も吹けておらず、ひょっとすると300程度でしかないことも十分あり得ると思う。
 そういう認識がないと、「おおっ、500も吹けてる。それなら多少の無理をしても大丈夫だ!」と無理をしたり、治療の手を抜いたりしてしまいかねない。

 なお、この4ヵ月半の間に私はオルベスコも使ってみた。エアゾルなのに小さな吸入補助器を付けて簡単に吸入できる優れた吸入ステロイド薬だ。吸入が簡単な点はキュバールに似ている。
 しかし、キュバールと同様、オルベスコは「効いた」と私はあまり感じなかった。これは抗炎症作用が弱いせいだろうと思う。オルベスコの吸入効率(薬剤の肺への沈着率、到達率)は吸入ステロイド薬の中では最も高いもののひとつに入るが、それでもあまり効かなかったと私が感じたのは、その抗炎症作用がフルタイドなどと比べてかなり低いからではないかと思う。
 肺への沈着率は、キュバールが40から55%、オルベスコが52%、アズマネックスが40%、シムビコートが40%、パルミコートが30%、フルタイドエアーとアドエアエアーが29%、アドエアパウダーが15から17%、フルタイドパウダーが11から17%、と言われている。吸入効率はセレベントパウダーが最も低く、パルミコートやキュバールやオルベスコは非常に高いのだ。逆に抗炎症作用はフルタイドとアズマネックスが強いとされていて、そのほかのものは中程度と見られている。
 オルベスコの抗炎症作用については、私個人は「中」以下のように感じた。抗炎症作用が弱いと、いくら吸入効率が高くてもあまり効果的ではない。オルベスコでもよく効いたという方もいるので一概には言えないが、吸入ステロイド薬を選ぶときに重視するのは吸入効率だけではダメで、抗炎症作用がかなり大きなカギだと思われる。
 ただ、オルベスコでもよく効いたという人がいるように、人によって効果の感じ方や実際の効き目が違うようなので、何種類か試してみて、自分に最も合ったものを選択するのがいい。
 私の場合、今のところそれが「シムビコート+フルタイド」ということになる。もし機会があれば、吸入効率も抗炎症作用も高いアズマネックスも試してみたい。そうすれば「シムビコート+アズマネックス」が最良の選択肢になるかもしれない。
 いずれにしても、シムビコートは予想通りの高得点を叩き出してくれた。何と組み合わせるかはわからないが、今後もシムビコートは外せないなと今の私は思っている。

キュバール キュバール(吸入補助器付) パルミコート フルタイドエアー


 ついでに、喘息治療に関して常日頃考えていることを書いておく。
 強いアレルギー性や難治性などの喘息の場合は、吸ステでさえ効かないケースが多々ある。そういう方たちにとってはセレベントなどの長時間持続型の気管支拡張薬は不可欠の薬だと思う。しかし、それでも重度の方たちは社会復帰も難しい苦しい状態を余儀なくさせられている。
 そういう重度喘息の画期的な治療法が開発されないものかといつも思う。製薬会社は今、新しい吸入ステロイド薬の開発に力を入れているようだが、今後はそれだけでなく、別方向からのアプローチもしてもらいものだ。吸入ステロイド療法でさえ効果的でないこういう方々のために効果のある薬の開発だ。
 医師をはじめとする医療関係者も、重度喘息の新しい治療法を考えてほしい。せめて、入退院を繰り返すような患者さんが入院しなくて済むような方法を考えてもらいたい。仕事に就けないほどひどい患者さんが仕事に就けるような治療なり援助をしてほしい。
 重度といえば、「無音喘息」「サチュレーションの高い喘息」の存在を医療関係者全員に知ってもらいたい。軽度な喘息で受診したが喘息と診断されず治療しなかったため重度になった方はたくさんいる。軽度なあまり自分が喘息だと気付かず放っておき、重度になってしまった患者さんもいる。
 そういう方たちの中には、長年、息苦しいのを我慢することによって呼吸筋が鍛えられて、喘鳴があまり出なくなったり、狭い気道でも十分な呼吸ができるようになる人がいる。「無音喘息」「サチュレーションの高い喘息」になる理由はそこにある。
 これで『誤診』されるケースが非常に多い。『誤診』されるだけでなく、『虐待』されるケースも多い。
 苦しいことを訴えるが喘鳴が聴こえない、サチュレーションが高いということで、医師も看護婦さんも「この人は喘息ではない」と思い込む。なのに患者は「おれは苦しいんだ。何とかしてくれ!」と強く訴えてくる。そうなると、医師も看護婦さんもつい邪険に扱ってしまう。患者さんにとってはそれが『虐待』になる。それで病院を転々とし、手の施しようがないまでに喘息を悪化させてしまう。
 そういう悲劇は絶対になくさなければいけない。医師や看護婦さんの認識ひとつで、そういう悲劇はなくせるのだ。医師や看護婦さんは喘息についてもっと勉強して、喘鳴の聴き取りにくい喘息があることやサチュレーションの高い喘息があるのだという事実を認識し、聴き取りにくい喘鳴の聴き取り方を習うとか、サチュレーションだけに頼らない患者の状態の見分け方などを学んでもらいたい
 それと、これは医師や看護婦さんというよりは医師会や厚労省などの組織にお願いすべきだと思うが、重度の喘息患者さんたちのことだけでなく、軽度の喘息患者さんたちのことも考えてほしい。なぜなら、軽度の方たちの中には自分の喘息がたいしたことがないと思っている方が多く、中には喘息とさえ思っていない人がいるからだ。たけしを使ってCMで結核のことを宣伝しているように、「あんた、喘息かもしれないよ」とCMでたけしにそう言わせてほしい
 実は、そういう軽度の方たちが「喘息死」しているのだ。吸入ステロイド療法の普及によって喘息で苦しむ方も亡くなる方も急激に減ったが、まだ毎年2千人以上の方が喘息で亡くなっている(普及以前は6千人以上の方が毎年亡くなっていた)。難治性などの重度の患者さんばかりが亡くなっているのではなく、むしろ軽度で自分の症状を甘く見ている人が突然の大発作に対応できなくて亡くなるケースが多いようなのだ。
 喘息死する方は、例えば喘息に対する認識が不足していてまともな治療を受けていなかったり、通院していても医師の指示に従わなかったり、ひどくなってもなかなか受診しなかったり、という人が多い。「苦しくなったらメプチン」で凌いでいるような喘息患者が、突然の大発作に対応できなくて死亡してしまうのだ。適切な治療と管理をしていれば喘息で死ぬことはまずないのだが、現実は喘息を軽視し満足な治療をしていない患者さんが非常に多いと私は見ている。
 『Twitter』で「メプチン」と入力して検索すると、その現実を目の当たりにできる。「苦しいからメプチンしよう」「メプチンだけが頼り」「メプチンなう」「メプチンで凌いで明日も仕事頑張るぞ」といったツイートがズラーーーッと出てくる。メプチンエアーを一時的な発作止めとして使っているのならわかるが、中にはメプチンだけに頼って吸入ステロイド療法をしていない人がかなりいるようなのだ。
 そういう方たちに真実を知らせる必要がある。誰か、頼む。

メプチンエアー



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