〈心の病を持つ友への罪〉

●心の病を持つ友への罪 (10.15/09)

 友人の話をします。
 もっとも、彼女(名前をAさんとします)は私のことを友人とはもう思っていないと思いますが…。

 3年か4年前のことです。
 私は、そのAさんと共通の友人からメールをもらいました(この友人をBさんとします)
 そこには、Aさんがとても困っていると書かれていました。迷惑メールやいたずら電話でノイローゼのようになっているとのことでした。
 そのAさんのことを自分のことのように心配したBさんは、どうしたらAさんのためになるのか、どうしたらAさんの力になれるのか悩み抜きました。
 そして、何度か電話したり何通かのメールを彼女に打ち、それでも心配で、両人の共通の友人にもこの事態を知らせ、「みんなで励ましメールを打とう」ということになって、実際に打ったようです。

 それがAさんの凄まじい怒りを買ったのです。

 Aさんは「迷惑メールでノイローゼ寸前に陥っている友達にさらにメールを打つなんて信じられない」と思ったようです。
 ひとりだけからならともかく、数人から一度にメールが行ってしまったので、怒り心頭に発してしまったのです。
 「わたしがこんな境遇に陥っていることを人に知らせるなんて無神経だ!」とも思ったようです。
 そしてAさんはBさんを執拗に責めました。「本当の友達ならこんなことをするはずがない。絶対に許せない!」と。
 そのときAさんは就職活動をしていたのですが、それがBさんのせいでダメになったと言ってはさらにBさんを責め立てたようです。

 それで悩み困り果てたBさんが私にメールしてきたというわけでした。
 当時の私はまだウツを経験していなかったので、Aさんの気持ちを理解してあげることができませんでした。
 しかし、どうやらノイローゼのようになっているみたいだったので、何とかして力になりたいと思ったし、同時にBさんに対するAさんの怒りを少しでもなだめたいと思いました。
 私はBさんと相談のうえ、たまたま久しぶりでメールしたという感じでAさんにメールを打ちました。

 これにもAさんはキレたのです。

 まず、「もうメールはたくさんだ」と思っているのにメールを送ってきたことが彼女の怒りを買いました。これは私に対する怒りです。
 さらに、彼女は私からのメールを読んで、「これはBとAICHANが密謀したんだな」と気付き、Bさんにまた怒りを爆発させたのです。

 私が再びメールして謝ると、「もうメールしないでって言ったはずです! 頭おかしいんですか!!」みたいなことまで言われてしまいました。

 それからは、もう収拾がつかない状態になりました。

 当時の私はAさんがなぜそこまで怒るのか、真には理解できていませんでした。
 彼女が怒るのは無理もないとは思っていましたが、私に対してはともかく、Aさんのことを心から心配して何とかしなくちゃと必死で考えて行動したBさんのことをボロクソに言い、うまくいかないことをすべてBさんのせいにすることには、いくらノイローゼとはいえ許せないとまで考えました。

 しかし、2年前に私はウツになり、間もなく誰とも会いたくなくなり、誰かに励まされたりすると逆に落ち込み、励ましてくれた人を恨むようになりました。
 そして、ただひたすら自分の殻の内側にこもるようになったとき、「あっ」と突然にAさんのことを思い出し、「あのときのオレの行動と考えは間違っていたんだ」と初めて気付きました。

 しかし、そのときはもう遅かったのです。
 Aさんの受けたキズは大きすぎたのです。いや、私の与えてしまったキズは大きすぎたのです。

 Aさんはますますノイローゼに陥り、泥沼にはまっていく自分をどうすることもできなかったのではないかと思います。
 そんな状態の中でAさんは、私やBさんに怒りをぶちまけてしまったことにひそかに罪悪感を抱き、自分を責めたのではないかと思います。
 そのことがAさんを地獄に突き落としたのではないかということに私は気付き、心からおののいたのです。

 そう気付いたのは、当時の私がまさにそういう心境に悩まされていたからです。

 しかし、あのときのAさんの苦しみを本当に理解するのは、Bさんから助力を頼まれたころの私には無理だったろうと今では思います。
 当時の彼女がただのノイローゼではなくウツ等の精神疾患に蝕まれていたかどうかは私にはわかりませんが、あのときの彼女の反応を思い返してみると、ただのノイローゼでは済まない何かの疾患の世界に入り込んでいたように思えてなりません。
 そうだったとしたら、同じ精神疾患かそれに近い疾患を抱えているか経験したことのない人には、Aさんの苦しみを理解するのは不可能だったと思うのです。

 今、Aさんはどうしているのか。
 それは、ここ数年、私が毎日のように思ってきたことです。
 Bさんもあれ以来、毎日同じことを思い、Aさんのことを忘れたことはないみたいです。

 私もBさんも、いつかはAさんがわかってくれると信じていました。Bさんは今も信じているでしょう。
 しかし私は、その願いはもしかすると叶わないかもしれないと今では思っています。

 ウツを経験した私には、あのときのAさんのキズが生々しく想像でき、そのキズが癒えるのにいったいどれほどの年月がかかるだろうかと思ってしまうのです。

 どんな病気でも、その病気を真に理解するのは自分もその病気を経験しなくては無理です。

 そんな簡単な真実に、あのとき私は気付くことができなかった…。

 不可抗力だったと言いわけするのは簡単です。
 不可抗力だったのは確かですが、だからといってひとりの人間にキズを負わせて許されるはずがありません。

 私のこの罪は実に深いと思います。



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