〈オジサンの主張〜その4〉
●オジサンの主張〜その4
〈漁業者優先の禁漁をやめろ〉
(4.16/09)
北海道ではヤマメが春に禁漁になります。これはメスを降海させるためです。
ヤマメはサクラマスが川にいるときの呼び名で、北海道ではヤマベと呼びます。
本州でヤマベといえばそこらへんの川にいくらでもいる雑魚なので、道民になったとはいえ私はヤマメをヤマベとは決して呼びません。渓流の女王であるヤマメ(漢字で書くと山魚女)に対して失礼だと思うからです。
さて、このヤマメというかサクラマスというかは、本州ではほとんど降海しません。
したくてもダムがあったり川が汚かったりで降海できないでしょうし、氷河期に陸封されて以来、一生を川で生活するようになったのかもしれません。
ところが北海道のヤマメはたくさん降海します。
降海するのはほとんどメスです。オスはなぜかほとんどが川に残留します。
メスは海に降って大海原を回遊して豊富なエサをしこたま食べて50センチとか60センチくらいまで大きく育ちます。そして、生まれた川に戻ってくるのです。
対してオスは渓流で少ないエサを食べつつひっそりと暮らします。釣りの対象となるのはそうしたオスがほとんどです。
メスは生まれた川に戻ると、桜の花が咲くころに遡上を始めます。サクラマスの名前はそこから来ているようです(西日本にはサクラマスとそっくりなサツキマスという魚がいる。これの名前の由来は調べていないが、植物のサツキと何か関係がありそうである。アマゴはその河川残留型)。
しかし、秋サケ(シロザケ)と違って一気に遡上することはありません。数ヵ月もかけて上流まで遡るようです。
そして秋になるのを待って、川で暮らしていたチビのオスたちと交尾して産卵するのです。
ここまで書いて気付きました。サクラマスがメスだけ降海するその理由についてです。
降海して大きく育てばイクラも大きく育つでしょう。卵が大きいほどいいのかどうかはわかりませんが、小さいよりはいいのではないかと思います。対して精子は受精のためにそんなに大量に必要ではありません。川で暮らして大きくなれなかったオスの精子でも事足りるように思います。それでメスだけは降海し、オスは降海しないのかもしれません。
だとしてもオスも降海したほうが大きく育って精子も増えていいんじゃないの、と思う方もいるでしょう。それはおそらく、河川のほうが生き残りには適しているからと考えればいいのではないでしょうか。特にヤマメの生活圏は上流の渓流なので、敵があまりいません。その代わりエサも少ないのですが、生残率は高くなると思うのですが、いかがでしょうか。
海には魚食魚がたくさんいるので、たぶん生残率はかなり低いと思います。秋サケの孵化放流事業で回帰してくるサケは放流した稚魚数の3パーセントからせいぜい5パーセントですから、海に降ればサクラマスだってそのほとんどが死んでしまうのではないでしょうか(ただし秋サケは孵化して数ヵ月の体長数センチの段階で降海しはじめるが、ヤマメは15センチくらいまで大きくなってから降る。そのため降海を開始してからの生残率はヤマメのほうが高いだろうと思う)。
それでもメスが降海するのは、イクラを大きく育てたほうが繁殖には断然有利だからなのかもしれません。
昔、本州の渓流で産卵期を迎えたヤマメを釣ってしまったことがあります(本州ではこの時期にヤマメは禁漁なので釣ってはいけない。しかし当時の私はそれを知らずに釣ってしまったのである)。釣り上げたヤマメの腹から赤く小さなものがいくつかこぼれ落ちました。卵でした。しかし小さなビ−ズ玉程度の大きさで、どう見てもイクラとは思えないものでした。そんな小さい卵であれば、産まれる稚魚も小さいでしょうから、孵化直後の死亡率がえらく高くなるのではないかと思います。
そんなわけでメスだけ降海するのかもしれません……と書いていて、いや待てよ、そしたら秋サケだってメスだけ降海するはずだと思い至りました。
う〜ん、わからなくなりました。メスだけ降海する理由についてはこのへんで考えるのをやめておきます…。
さてさて、産卵が終わると、サケ科サケ属のサクラマスは死にます。サケ属ではないニジマスやイワナ(アメマス)やイトウ等は一生のうちに何度も産卵しますが、サケ属(サクラマスのほかにはシロザケ、カラフトマス、キングサーモン等がサケ属である)の命ははかないのです。
哀しい話はこれくらいにして、本題に入ります。
北海道ではサクラマスのほとんどが降海するので、ダムや何かの妨害によって彼女たちが海に降れなくなると、サクラマスのメスたちはホントに困ってしまいます。
それが原因で、川に残ったオスとの繁殖が進まず、北海道の各地で天然もののヤマメがどんどん減っています。
メスが降海しないならオスと一緒に川に残って仲良く暮らして交尾すればいいのにと思うのですが、ことはそう簡単ではないようなのです。
私の素人的推測のひとつは、降海するメスは銀化(ぎんけ=スモルト)ヤマメになるので、海に降れないと死んでしまうせいではないかということです。当たっているかは自信がありませんが、あり得ないことではないと思います。
銀化ヤマメというのは、降海を前に海水に馴染めるような体になったヤマメのことです。ヤマメのメスは、銀化の作業が完了してはじめて海に入るのです。その魚体からはヤマメのトレードマークとも言える小判型のきれいなパーマーク(幼魚斑)が消え、ピカピカの銀色になります。
うちのアパートから徒歩3分の小川で釣れるヤマメは体長15から20センチくらいで、少し前まではパーマークがくっきりありましたが、最近釣れるものには銀ピカのものが増えました(下の右の写真。ちなみに左の水中写真はどこかの水族館か研究施設のHPで使われていたものを勝手に拝借しました。すみません)。銀化は体長15センチくらいになると始まるらしいので、メスたちの間で降海の準備が進んでいるのでしょう。
それはさておき、どういう理由にしろ、メスが降海できなくなると北海道のヤマメの天然繁殖が阻害されるらしく、そのような川の天然ヤマメは激減しています。

ヤマメにはきれいなパーマークがある(左)。しかし銀毛になるとパーマークが消えて全体が銀色になる(右)。
それを防ぐために北海道の行政が取っている手段が、ヤマメのメスたちが降海する時期に禁漁にすることです。
道南と道央では4月1日から5月31日まで、道東と道北では5月1日から6月30日まで禁漁になります。
本州ではヤマメのほとんどが降海しないので、この時期に禁漁はしません。確か秋から春まで禁漁にしているはずです。ヤマメの産卵時期が秋なので、その時期の親ヤマメを保護するのが目的でしょう。
しかし、北海道ではメスの降海をスムーズに行わせるために禁漁にしているのです。
その目的は、結果としては自然産卵させて天然繁殖させることになるので、本州と変わりませんが、考えた方と方法が違うわけです。
北海道のこの禁漁措置は、釣り人の楽しみを守る結果になります。
ところが、禁漁の究極の目的は別にあるのです。
それは漁業者の保護です。サクラマスを海で漁獲して生計を立てている漁業者がいるからです。
そういう漁業者のために、ヤマメのメスにはどうしてもたくさん降海してほしい。というわけで降海時期にヤマメは禁漁になるのです。
実は、今回の「オジサンの主張」では、この“禁漁”について訴えたいのです。
禁漁は多くの魚について行われています。
北海道で最も厳しく禁漁されているのは秋サケでしょう。
北海道のほとんどすべての河川とその河口付近では秋サケが禁漁です。
その理由は、秋サケは国民の税金と秋サケ定置網漁業者の出費による「採卵孵化放流事業」によって北海道に回帰してくるものがほとんどなので、それを秋サケ定置網漁業者以外の人間が獲ってはいけないということです。
しかし、この規則ってヘンだと思いませんか?
なぜなら、秋サケの「採卵孵化放流事業」には国民、つまり私たちの血税も使われているからです。近年は水産庁がこの事業から撤退し、道内各地の採卵場や孵化育成場の多くは漁業関係者によって運営されるようになってきていますが、それらの運営には多額ではないにしても税金が投入されていると思います。
それなのに、私たち釣り人が河川でサケを釣ろうものなら、それがたとえ間違って釣れたにしても罪になるのです。数年前までは、「秋サケ密漁で逮捕」という新聞記事がシーズン中に何本か載るのが普通でした。
だから秋サケを釣りたい人は禁漁区域の外の海岸に竿を林立させてサケを狙います。それでもまあまあ釣れますが、私なんかのような川釣りメインの釣り人には秋サケと出逢う機会はまずありません。
数年前までは遡上するサケを河口で片っ端から捕獲してメスの腹を割いて卵を取り出し、オスの腹を搾って卵を受精させていましたが、今ではいくつかの河川でサケを捕獲しないで遡上させるようにしていて、自然産卵させるケースが増えています。
しかし、そういうサケでも川で釣るのはタブーなのです。つまり禁漁です。見付かったら罰せられます。
もちろん、網や毒や電気を使っての大量密漁は大犯罪になります。
つまり、秋サケにしてもサクラマスにしても、漁業者のために禁漁が行われているわけです。
漁業者のためを思えばそれも当然だとは思うものの、何か釈然としないものが私の頭の中では燻ります。
秋サケについて書くと、釣り人の中にはどうしても秋サケを川で釣りたいと望む人がいます。
そういう釣り人のために、道東の一部河川では入漁料を取って、遡上してくる秋サケを釣らせるようになりました。これには道外からもたくさんの釣り人が毎年押し寄せています。
これは素晴らしい試みだと思います。
けれど、私には「秋サケは漁業者だけのものではなく、国民みんなのものだ」という意識があり、それを自由に釣らせてもらえないのはヘンだと昔から思っています。
秋サケは産卵のために川を遡るのであり、それを釣るのは可哀想です。だから私は川で秋サケを釣りたいとは思っていません。
以前、秋も深まったころに道東の川でニジマスを狙っていたとき、産卵のために遡上していたデカいアメマスを釣ってしまったことがあります。釣り上げた途端、彼女の腹からは小さなイクラがポロポロとこぼれ落ちました。そんなひどいことを私はもうしたくありません。
私がヘン、つまり問題だと感じているのは、国民の税金を使って育てて放流した秋サケが戻ってくるのに、その秋サケを釣ってはいけないという厳しい規則です。その目的が「産卵する秋サケの保護」なら納得できますが、そうではなくて、「秋サケ定置網漁業者の保護」だからヘンだと思うのです。
サクラマスの場合は漁業者が金を出して保護しているかどうかわかりませんが、どちらにしても、何でもかんでも漁業者を優先するという行政の態度は今の時代に合わないと私は感じます。
行政は釣りのことを“遊漁”と呼びます。まさしく遊びなのでそう呼んで何も問題はないと思いますが、どうも行政は“漁業”を高く見ているのに対して“遊漁”を不当に低く見ている気がしてなりません。
それでヘンだヘンだと何度も書いたのです。
遊びで魚を釣ることは、私個人の意見ですが、子供にはもちろん、大人にもとても重要なことですよ。
子供には命の大切さ、命の清らかさ、命の厳粛さ等を教えてくれます。大人はルールを守って遊ぶことを自然に身に付けていき、自然破壊が魚たちにどういう影響を与え、その影響が人間にまで及ぶこと等を考えさせられたりします。
もちろん、釣り針を捨てたりゴミを捨てたりするマナーの悪い釣り人は今でもたくさんいます。それは大問題です。そんな連中は一生釣りができないように罰するべきです。
でも、ほんのわずかなひとときを魚たちと遊ぶ多くの釣り人の対象魚を、「すべて漁業者のものなのだから釣るな」というような禁漁措置はやめてほしい。
禁漁そのものは魚のために絶対に必要だと思いますが、それを漁業者のためだと当たり前のように言うのはどうかと思うのです。
皆さんはどう思いますか? ヘンだとは思いませんか?
私の住むアパートから徒歩3分の小川でもヤマメが釣れます。
私は5月になっても時間があればその小川でヤマメを釣ろうと思っています。
明らかに違反ですが、禁漁にする理由に納得がいかないので禁漁期間を無視して釣ってやろうと思います。
もちろんすべてリリースします。私はただ、ひとときの“遊び”を楽しみたいだけなのです。

アパートから徒歩3分の小川でワンコとヤマメを釣る。
周囲に住宅が見えて風情はないが結構楽しめる。
メニュー | 喘息VOICE | 喘息TOPICS| 喘息のバカやろう | 喘息でも元気だ | 喘息の吐息 | 早わかり"喘息" | リンクページ