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《近年の鳥人間コンテストの動向》 今後の展望 1.技術的側面 @ 飛行速度 飛行に必要なパワ−は、速度の3乗に比例する。人体エンジンの“パワ−と持続時間”の関係は、個人差によるばらつきが大きいが、概ね持続時間はパワ−の2〜4乗に反比例する。従って、無風時は出来るだけ低速飛行するのが良い。しかし、向かい風では、最長の飛行距離が得られる速度とパワ−の持続時間を最適化しておく必要が有る。 飛行速度の高速化は、人体エンジンの“パワ−と持続時間”の観点から十分な検討が必要である。 A 飛行経路と姿勢制御 滑空機も人力プロペラ機も同様、水平方向の飛行経路は風任せになる。コンテスト参加機は、多くの場合、エレベ−タ−とラダ−の2舵しか空力舵面を備えていない。エルロンの必要性、或いは少なくとも横方向の安定性の評価方法であるスパイラル・モ−ドについて検討しておく必要が有る。 B 新素材の活用 CFRP材は、非常に高い比強度を持っている。これは、場合によっては大きな変形量を生じ、あらゆる機体への使用が効果的か疑問な点も多い。かつて機体構造が木製構造のころは、日常経験的に大まかな強度や性質を把握することができた。比べてCFRP材は、高強度に加えて積層構成によって断面性能が全く変化する。その部材に作用する応力に応じて最適な積層構成を得ることが軽量化につながる。例えば、滑空機は人力プロペラ機に比べると、鋭い操舵レスポンスが要求される。一般に、レスポンスの良好な機体は、主翼の剛性が高く変形も少ない。機体の用途や飛行目的、操縦性に応じた構造と主要構造材の選定が重要になる。この場合は、姿勢変化に伴い刻々と変化す る捩じり応力に対応するために、新素材を利用すること等が有効である。 2.安全対策 2−1.主催者サイドの安全対策 過去21年間で、重大災害(療養日数4日以上)が数件発生した。主にパイロットの離陸失敗或いは墜落による骨折事故である。10(m)のプラットホ−ムから飛び立つのだから、僅かなミスが大事故につながっても不思議はない。 かつては、パイロットの回収方法等についてでさえ、主催者と選手の間でトラブルが有った。 近年はそれらがかなり改善された。フライト前後のパイロットのメディカル・チェックが
その一つである。プラットホ−ムは、番組の円滑な進行と機体の待機を考慮し、長さが延長された。先端には保安用のロ−プが張られた。レスキュ−隊や回収ボ−トも補強された。フライトに関する情報、例えば当日の天気予報や風に関する情報、プラットホ−ムの高さの情報等も細かく提供されるようになった。主催者の、コンテストの安全性に取組む姿勢が変化した。Figure 12.プラットホ−ムの概略図
2−2.参加者が自ら行う安全対策@ 滑空機部門 飛行を成功させるには、プラットホ−ム上で、自力又は2〜3人のサポ−タ−の協力で機体を離陸速度まで加速できる走行能力が必要である。速度に達しなければ、出発直後にダイブして不足速度を補わなければならない。 機体の設計は滑空中は勿論のこと、出発時の走行性にも注意を払わなければならない。機体設計の第一歩は、自らの走行速度の測定に始まる。これが安全対策の第一歩にもつながる。 A 人力プロペラ機部門 『自らの力で大空を自由に飛び回りたい』という人々の大昔からの夢は、最近では、自由に飛び回るには至らないものの、自らの力で何とか飛べるようになってきた。人力飛行が、“鳥人間コンテスト”の影響でかなり一般化された。反面、安全性において疑問を抱くチャレンジも多くなった。低出力飛行を狙うあまり、無謀な軽量化対策の取られている機体もまれに見られる。極端な例は、主翼が強度不足で中央から折れてしまう。パイロットの頭上でCFRPパイプが破壊し、凶器と化している現実は恐ろしい。 軽量化の極限 ≠ 構造強度の極限 本来の軽量化の極限 = | ̄ 一連のフライトを想定し、パイロットの安全を保証出来る安全率を | 確保し、フライト目的にかなった無駄の無い合理的な設計に基づく |_ 構造や強度を検討した極限の重量 と考える。 B 機体の設計製作上の問題点 滑空機・人力プロペラ機を問わず、 ・主翼の曲げと捩じれ応力の検討不足 構造計算が苦手でも、スパ−ができた時点で、実物による曲げ試験や捩じり試験を行えば、概ね把握出来る。 ・出発方法を考慮した設計 (関連資料リンク) 狭いプラットホ−ムで機体を精一杯加速しなければならない。サポ−タ−が胴体を押したり、主翼を引っ張ったり、様々な対策が取られる。機体に作用する応力は、飛行中が上下方向、滑走加速 中は前後方向が最大になるのが一般的である。特に人力プロペラ機のように、主翼が長大化すると、離陸滑走中の主翼の前後方向の曲げ剛性の確保が難しく、スパ−に加えて後縁にサブ・スパ−が配 置されることが多い。これを省くと、かなり軽量化できるものの、飛行中に主翼が前後に振動し、 正常な安定確保ができなくなることもある。 同じく、軽量化にキングポストとランディング・ワイヤ−を省くと、停止時に主翼の両端が垂れ下がり、下反角が付く。出発時に少しでも横風を受けたり、或いは左右の主翼の加速のアンバランス等により有効迎角に非対称が生じると、機体は復元力のないまま横滑りしてしまう。出発時のような速度不足の場合、直ちにスパイラル降下に繋がり、回復不能な致命傷に陥る。主翼の剛性が低い場合は、ランディング・ワイヤ−で主翼を吊り上げ、たとえガル・ウイングのようになってでも、必要最低限の上反角を確保するべきである。キングポストを省いてまでの軽量化には不安が残る。 ※ 世界中で人力飛行による死亡者はまだいない。万が一にも重大事故が発生すれば、多くの“鳥人間コンテスト”ファンや支持者に大きなダメ−ジを与える。主催者や参加者を含め、多くの関係者が世界的にその姿勢や管理体制を追求、或いは疑問視されることになりかねない。重大事故の発生は、“鳥人間コンテスト”のみならず、人力飛行機研究家達にまで、法的な規制が懸けられてしまう可能性すら有る。 3.その他 3−1.パイロットとレスキュ− 人力プロペラ機部門は飛行時間が飛躍的に延びて来た。30分に達している場合もある。心拍数が180を越えるような長時間のペダリング運動後の着水は、十分注意が必要である。脚力が衰え、心肺機能も追いつかなくなって(酸素供給が不足して乳酸が蓄積され)、疲労困憊で着水すると(脳への酸素供給が不足して)、意識朦朧のすえ失神に至る可能性すらある。 ただでさえ暑い真夏、窮屈なコクピットに閉じ込められたフライトであるから、意識朦朧に陥ることは十分予想できる。コクピットからの脱出に手間取ったり、レスキュ−・ボ−トの方向を誤ったりするかもしれない。通常の判断能力が維持されていない状況を踏まえ、着水後のパイロットの安全回収について、専門家の意見を尊重した議論の必要な時期と考える。 3−2.女性パイロットは書類選考に合格し易い 最近は、女性パイロットも見事に飛行できるように成った。かつては、書類選考の合格のし易さを狙って、レディ−ス部門に応募するケ−スが多かった。これが女性記録低迷の大きな原因の一つである。レディ−ス部門の廃止原因になっていなければ良いが… 3−3.着水後の機体の扱い かつては、着水後の機体はかなり乱雑に扱われていた。VTR収録後の大道具扱いである。最近では少し改善されたように伺えるが、丁寧な扱いとは言い難い。この扱いを嫌って、参加を敬遠している人達も多い。参加者が1年近くかけた時間と費用に比べると、回収に費やすそれはほんの僅かで、比較にすら値しないものだと思う。主催者のコンテストに対する姿勢の一端が伺える。 |